浪速の味 江戸の味(六月) 笹巻けぬきすし【江戸】

江戸時代、江戸前の魚介をつかい庶民の間で人気を博した江戸前寿司。特に名物と謳われたのが「毛抜鮓」「与兵衛寿司」「松が鮨」の江戸三鮓です。
その中でも歴史が古い「毛抜鮓」は、赤穂浪士の討ち入りと同年の元禄十五年(1702年)の創業で、押し鮨を笹の葉で巻いた笹巻鮓が名物です。飯を強めの酢で締め、寿司だねの魚は先ず塩漬けし、それを酢で二度締めるというたいへん手のかかる高級品でした。そのたねを酢飯に乗せ殺菌作用のある笹で圧して巻き、保存性をより高めました。
当時の絵草紙には「御殿勤めの面々が宿下りの折りに家づとして笹巻毛抜鮓を持ち帰る」とあったとのことです。
「毛抜鮓」の屋号の由来は、「色気抜きで食欲をそそるから」「物をくわえてつかむ毛抜きのように人々がよく食うから」など諸説あるようですが、「魚の骨を毛抜きで丁寧に抜いていたから」との説が一般的です。
この店は現在でも「笹巻けぬきすし総本店」として、神田小川町で営業を続けています。冷蔵庫の普及や嗜好の変化で、今では塩も酢も控えめになっていますが、醤油なしでいただける味加減が絶妙です。
今やオフィスビルが建ち並ぶこの界隈ですが、神田囃子が聞こえてくる夏祭りの季節には、ひょいと暖簾をくぐり笹巻鮓の折詰を家づとにとしゃれてみたいものです。
笹の葉のあをく涼しく毛抜鮓 光枝
