カフェきごさいネット投句(七月)飛岡光枝選
酒に泥鰌を入れるのは泥鰌鍋の調理法だが、酔わせるという表現でそれだけに止まらないおかしみと非情さが生まれた。原句は「泥鰌鍋どぜう酔わせて鍋へかな」。
向日葵の傾いてゐる学生寮 勇美
夏休みだろうか、人気の無い寮に向日葵だけが盛ん。「傾いてゐる」の存在感。
涼しさの橋こえてゆく君の家 隆子
「涼しさの橋」で、「君」の人柄にまで思いがゆく一句。「橋を渡つて」がより自然か。
【入選】
走りゆく子を追ひかけて茅の輪かな 弘道
大祓の作法など関係なく元気に茅の輪を潜り抜けていく子供。ちまちました思いが吹き飛ぶ子供の力。原句は「走りゆく子を追いかける茅の輪かな」。
水無月の一片ガラス皿にかな 弘道
原句は「水無月をガラスの皿に盛ろうかな」。よく詠まれる情景だけに、ことばの選び方に新しい発見が必要。
仏桑花強き陽射しを飲み尽くし 和子
「飲み尽くし」まで言うと、この花の風情からすると少々強すぎるが、新しい一面を見せてくれる句。原句は「仏桑花強き陽射しも飲み尽くし」。
雛罌粟や秩父の山に緋のヴェール 和子
雛罌粟の薄い花びらの感じが出た。原句は「雛罌粟や秩父山里緋のヴェール」。
【投句より】
「切札を秘する横顔晩夏光」
謎めいた(ほめことばではありません)上五中七に「晩夏光」を付けたのではますますわからない句になってしまいます。より具体的な季語で、上五中七を納得させるように。
「麦わらで作りし籠に蛍の灯」
形はしっかりできていますが、蛍籠の説明になってしまいました。これを踏まえて、一歩先に踏み込んだ句を目指したい。
「スカイツリー降りなばこの世泥鰌鍋」
スカイツリーを下りて泥鰌鍋を食べただけにしては大げさになりすぎました。
「胡瓜の葉大きく浮かせ風涼し」
「大きく浮かせ」がわかりにくい。大きく浮かびあがったことを詠んでいるのだと思いますが、句の言葉運びからすると葉が大きいのかとも。曖昧さは句を弱くするのでご注意を。
「雪渓や花金色の裾模様」
雪渓と中七下五の関係性が不明。何が詠みたいかを明確にして、よりシンプルに詠みたい。