朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」三月
朝日カルチャーセンター新宿「カフェきごさい句会」。兼題はサイトより、三月の季語「水温む」、花「花蘇芳」、浪速の味「草餅」です。
【特選】
藤浪に溺れゆきたる羽音かな 勇美
ゆれる藤房、そこから溢れる甘い香りに誘われて虫たちが集まる。よく詠まれる情景ではあるが、「溺れゆきたる」に春のゆったりとした時間の経過が表現され、虫の存在を「羽音」とした言葉の用い方が巧み。
静けさに小舟漂ふ花の雨 勇美
永遠の静けさに包まれた春の一句。
砂浜でありしあの頃春日傘 涼子
砂の感触、波音の面影を追う春日傘。「春日傘」にあるなつかしさが活きている。
伊勢は名も神代餅や草の餅 隆子
草餅らしく勢いのある一句。
【入選】
蘇芳咲いてのどかに古りし宇陀郡 隆子
調べがいい。「蘇芳」が動くか。
花の雨回転木馬けぶらせて 勇美
春の雨に濡れる回転木馬が目に浮かぶ。
コロナ禍の覆ふ国土水温む 和子
様々な季語が考えられるが「水温む」は上々。
蒼き空花の溶けゆく夕べかな 和子
春の夕の空気感が伝わる一句。
草餅やとよはた雲を仰ぎつつ 隆子
草餅を、春を寿ぐ心持。
よそゆきのリボン古びぬ花蘇芳 勇美
華やかだがなつかしさを感じる蘇芳色。「よそゆき」という言葉もなつかしい。
咲きそろふ水仙の里黄金郷 涼子
一斉に開く水仙を黄金郷と讃える。「咲きそろふ水仙ゆるる黄金郷」など。
ほつほつと雨粒開く花蘇芳 光枝