春の声とともに漁が始まる白子は主に鰯の稚魚で、太平洋沿岸で多く水揚げされます。関東では相模湾が主な漁場です。
相模湾に浮かぶ神奈川県藤沢市の江の島は、岩屋と呼ばれる海蝕崖の洞が古来より修行の場となっており、空海、一遍などが参篭したと伝えられています。その後、頼朝の祈願により弁財天が祀られ、江戸時代には参詣地として多くの人が江の島詣に出かけるようになりました。
現代でも修学旅行をはじめ多くの観光客が訪れる江の島、その名物が「白子丼」です。江の島の参道はもちろんですが、江ノ電「江ノ島駅」から江の島へ向かう道の両側にも白子丼を出す店が並んでいます。
白子は水揚げ後数時間で色が変わってしまいます。その上、海が荒れると漁ができないため、生の白子は貴重で、白子漁があった日には「生白子(生白子丼)あります」という札が、得意げに店先に掲げられます。
相模湾の白子漁は1月から3月10日頃までが禁漁で、今年(2024年)も3月11日が解禁日でした。水揚げしてすぐ茹でたものが「釜揚げ白子」、それを天日に干した「白子干」は春の季語となっています。
写真は(生白子)(釜揚げ白子)(生白子の漬け)が乗った贅沢な丼。江の島の弁天様は様々なご利益があり、芸能もそのひとつ。俳句の上達を祈りつつ、白子丼をいただきましょう。
富士の峰雪かがやくや白子舟 光枝