Author Archives: youko

a la carte 枝垂桜

三月下旬に愛知県犬山市の圓明寺(えんみょうじ)の境内で、樹齢300年の枝垂桜をみました。今年の開花は例年より少し遅いようです。その時はまだ五分咲きほどでしたが、淡いピンクの可憐な花が天から降りそそいでくるようでした。

古木の太い幹には草が生えています。その枝垂桜を撮影している男性がいました。私も写真を撮ったのですが、「こちらから撮るといいですよ。」と声をかけてくださいました。聞くと毎年この枝垂桜を撮りに通っておられるとのこと。今年も満開になるまで毎日通われるそうです。

「今年も元気でこの枝垂桜の開花を見ることができたというのが、私の生きている証なんです。」と言われたのが心に残りました。人それぞれ、心を通わす桜の木があるように思います。根を下ろした場所で300回も花を咲かせてきた枝垂桜が、来年も可憐な花を咲かせていること、そしてまたあの男性が元気に枝垂桜に会いに来られることを祈ります。(洋子)

再会を約す一本桜かな     洋子

a la carte 運動会

undoukai先日、近くの小学校区の13の自治会が集まって市民体育祭が開催されました。参加者は幼児から父母世代、祖父母世代と幅広いです。

美しい秋空の下、小学校の校庭で全員参加のラジオ体操から始まりました。競技内容は、小学生の50m走、中学生の100m走、グランドゴルフ(60歳以上)、障害物リレー、紅白玉入れ、大縄跳び、綱引き、パン食い競争など盛りだくさんです。

パン食い競争は、私の子どもの頃は餡パンと決まっていましたが、今はコロッケパン等バラエティーに富んでいます。目指すパンに向かってダッシュです。

一番盛り上がる種目は、自治会対抗リレーです。午前中に予選があり、上位6チームだけが午後の決勝に出場できます。小学生、中学生、高校生、大人とバトンを繋いでいきます。オリンピックならずとも、自治会のチーム優勝を目指して、真剣勝負です。お父さん、お母さんが少年、少女にもどって必死に走ります。そんな両親を子ども達が大きな声で応援しています。

私は今年、自治会の役員をしていて、前日のテント設営などの準備からお手伝いをしました。近隣の人々の交流の場として、運動会はいいものだと改めて思った楽しい一日でした。(洋子)

兄ちやんが二人抜いたぞ運動会    洋子

a la carte 燕の子

001最寄り駅の券売機の右上の壁に、燕が巣を作り子育て中です。ここなら、いつも人がいて鴉が襲ってくる心配もありません。

燕が巣を作り上げてしばらく経つと、雛がぴいぴいと鳴きながら顔を覗かせるようになりました。最初二羽かと思っていたら、だんだん増えて六羽いるようです。

親燕が餌を探しに行ってしまうと、子燕はおとなしく口を閉じて親の帰りを待っています。頭の毛が立っていてなんとも愛らしいです。親燕が餌を運んで来ると、顔より大きく口を開けて、必死で餌をねだります。人間同様、親燕は子育てに奮闘しています。

改札を通る人の頭上に糞が落ちないよう、駅員さんが巣の下に段ボールで作った「糞受け」を取り付けました。そして、「しばらくの間、あたたかく見守ってください」と書いた、子燕のイラスト入りポスターが貼られました。

乗降客は足をとめ、「大きくなったね。」と笑顔で成長を見守っています。私も、燕の子に元気をもらっています。巣立ちの日がくるのが、うれしいような寂しいような気分です。(洋子)

いつだつて腹をすかせて燕の子    洋子

蜆取

sijimitori伊勢参りと言えば、清流の五十鈴川を思い起される方も多いのではないでしょうか。内宮に参拝する前に、五十鈴川の御手洗(みたらし)場で、手を清めます。川に手を浸すと、心まで洗われたような清々しい気分になります。

五十鈴川は市中を流れ、やがて伊勢湾に入ってゆきます。その河口付近で大和蜆がとれると聞いていましたが、先日、実際に蜆を取っているところを見ることができました。

伊勢市二見町の御塩殿神社に御参りした折のことです。神事に用いられる御塩(みしお)を作るための御塩浜(塩田)が、五十鈴川の河口付近にあると知りました。行ってみると、小さな鳥居と、柵で四方を囲んだ御塩浜が見えました。

7月下旬から8月にかけての土用のころ水門を開き、御塩浜を五十鈴川から引いた汽水で満たします。天日で水を蒸発させ、鹹水(かんすい)を作ります。その鹹水を御塩殿神社内の施設で粗塩にし、年2回、3月と10月に焼き固め、堅塩にするそうです。

御塩浜を眺めながら御塩作りに思いを馳せていたのですが、道をはさんだ五十鈴川に目を移すと、小舟のそばで膝まで浸かりながら、何か取っている人が見えました。地元の方にお聞きすると、蜆を取っているとのこと。蛤、浅蜊とともに蜆もこの地の名産で春のごちそうです。

河口付近の五十鈴川は、まさに人の暮し、日々の食卓に密接に関わっています。上流の御手洗場の清らかな雰囲気とはまた違う親しさを感じました。(洋子)

蜆取る人も光や五十鈴川   洋子

a la carte 雪紅梅

!cid_image003_jpg@01D15C1E先日、季語と歳時記の会主催の「第五回きごさい講座+句会」に参加しました。

講師は、虎屋文庫の中山圭子さん。「梅の菓子の魅力」について講演されました。講演の後は質問の時間があり、すてきな笑顔でわかりやすく答えてくださいました。和菓子の世界に遊んだようで、実に和やかで楽しい講座でした。

古くは木の実や甘葛(蔦の樹液を煮詰めたもの)の甘味を楽しみ、餅や団子が唐菓子、点心、南蛮菓子などの外来食物の影響を受けて発展してきたという和菓子の歴史、砂糖が広く使われるようになった江戸時代に和菓子が大成したというお話を興味深く聞きました。

江戸時代の京菓子司の梅花餅、うす雪餅、山吹餅、などの菓銘は四季や古典文学の情趣を連想させ、琳派の作品の影響を受けた洗練された美しい色形は、今の上菓子に受け継がれています。

梅は花の魁で、雪や霜の中でも凛として咲いています。可憐な梅は馥郁とした香りが魅力です。また、慶事のイメージもあります。寒紅梅、霜紅梅、雪中の梅、夜の梅、梅が香などの菓銘を聞くだけでどんな菓子だろうと想像力がかきたてられます。

和菓子の意匠にも、絵画のように「具象」と「抽象」があり、「具象」の方が人気があるというお話もおもしろかったです。

楽しいお話を聞いた後、梅の菓子を食べたくなり早速買いに行きました。写真の菓子は湿粉製棹物を切り分けたものです。菓銘は、「雪紅梅(ゆきこうばい)」です。【「雪紅梅」は、冬の「かさねの色」(平安貴族の衣装の色合せで、季節ごとに植物などの名称がつけられている)にちなんでおり、紅梅に雪がうっすらとかかったさまを表しています。】との説明がついていました。

上下が、そぼろ状で真中が練り羊羹になっています。昔の人々の春待つ心に想いを馳せながら、春のさきがけの梅の菓子をおいしくいただきました。

春をよぶ雪紅梅のかさねかな   洋子

a la carte   踊

odori京都の伝統行事である五山の送り火は、八月十六日の午後八時から点火されてゆきます。その送り火の一つに、松ケ崎の「妙法」があります。松ケ崎にある涌泉寺(日蓮宗の寺院)では、八月十五日と十六日の夜、「題目踊」と「さし踊」が行われます。

盆踊というと賑やかなイメージがあったのですが、「題目踊」は、古式ゆかしく静かな踊です。男衆と女衆が向き合って「南無妙法蓮華経」と呼応しながら、しみじみ唄う中、檀家の人々が、揃いの浴衣を着て、前傾姿勢で扇子を膝のあたりで表裏表裏と返しながら、時計回りと反対方向にひたすら進みます。

「さし踊」は楽しそうな唄で振付もあります。飛び入りもOKなので、外国の方も手振りを真似て踊ります。「さし踊」は、時計回りに進みます。

十五日と十六日は、同じ踊でも雰囲気が少し違うように感じました。十五日は午後八時から踊り始めます。踊の輪の中に入り、心地よく精霊も踊っておられるように感じました。

十六日は、送り火が終わった後、午後九時ごろから踊り始めます。唄の哀感が印象に残り、彼の世に帰る精霊との別れを惜しんでいるようでした。

お盆も終わり、朝夕は秋の気配です。(洋子)

踊りつつ精霊帰る虚空かな    洋子

a la carte 盆用意

bonyoui今年もお盆が近づいてきた。お盆を迎える準備といっても、我が家の仏壇は家具調の小さなものなので、いたってシンプルな飾りつけである。

蓮の葉の上に季節の野菜を盛り、果物、盆のお菓子をお供えする。亡き父母はじめご先祖様たちの、彼の世から此の世への旅を労い、好物でくつろいでいただこうと思う。

お父さんは茄子が好きで、お母さんは南瓜が好きだったなとか、飾りながら思い出すこともある。先祖をずっと遡ってゆくと、皆どこかで繋がっていると毎年お盆の時に思う。

近年、両親だけでなくお世話になった先輩方が亡くなられ、生死について考える機会が増えた。お盆の間は、とにかく暑い。これは、亡き人々を迎え人口密度が倍以上になったからではないかと思う。この生者死者の交流できる貴重な期間を大切にしたい。そして、しっかり生きようと思う。(洋子)

朝採りの茄子に胡瓜や盆用意   洋子

a la carte 伊勢参

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先日、二十年ぶりに伊勢参りに行ってきました。

江戸時代、伊勢講などの団体を作り、積み立てた費用で伊勢参りをするのが盛んになりました。一生に一度は伊勢参りをしたいというのが庶民の願いでした。

伊勢参りといえば上方落語に、【伊勢参宮神の賑】があります。道中記としていくつもの話が続くのですが、「東の旅」(発端)では、「お伊勢はんという神さんが、えらい陽気好きでござりまして・・・旅は秋春とよう申しますが、どうしても春先の方が、工合がよろしいようで・・・暑うなし寒うなし、菜種や蓮華草が咲いていようか、空には雲雀がチュンチュンさえずっていようか・・・」というような陽気に誘われ、二人のずぼらな男が伊勢参りに出かけてゆくという、にぎやかな前座ばなしになっています。

次の日の句会にそなえ、この度の参宮では、よい句が授かりますようにとお願いをしました。神だのみするより自分でがんばりなはれと言われそうですが。天気にも恵まれ、遷宮を終えた美しい神宮に参る喜びはひとしおでした。

お参りの後は、てこね鮓、伊勢うどん、赤福と伊勢茶など名物をお腹いっぱい食べました。「神より団子」といわれそうではございますが。(洋子)

落語「東の旅」の

清やん喜ィ公と一緒や伊勢参   洋子

à la carte  聖菓

image00112月25日は、キリストの降誕を祝う日です。ひと月も前から、人の集まるところにクリスマスツリーが飾られ、師走の街が華やぎます。

教会の前を通ると、遠い日のクリスマスの記憶が甦ってきます。プロテスタントの幼稚園に通っていたので、降誕祭の劇を園児たちで演じていました。私は、天使三人のうちの一人で、せりふは一言だけでした。それでも、ドキドキして舞台に立っていました。

無事に劇を終えたクリスマスの夜は、母が作ったばらずしと、近くのケーキ屋さんで買ったクリスマスケーキが待っていました。丸いバタークリームのクリスマスケーキにはかわいい飾りがいろいろ付いていて、わくわくしたものです。妹より先にお目当ての一切れをとれるかどうか必死でした。

今は生クリームとフルーツのおしゃれなケーキが人気ですが、あの日のバタークリームのケーキをもう一度食べてみたいと思います。(洋子)

聖菓切る母の手元を見つめをり   洋子

a la carte 蜜柑山

mikanyama蜜柑のおいしい季節になりました。炬燵に入って、蜜柑を食べるのは冬の楽しみの一つです。蜜柑の色は、温かい団欒の象徴のように感じます。

先日、句会で和歌山に行きました。当日は大雨で、散策というのも難しく、句友二人と句会の時間まで、タクシーで回ることにしました。

和歌山の名産の一つに、蜜柑があります。句会の兼題にも「蜜柑」が出ていたので、運転手さんに蜜柑山を見たいとお願いして、連れていってもらいました。なんと、若い運転手さんの家も、代々蜜柑を作っているとのことで、おすすめの場所に案内してもらいました。

タクシーに乗って、海岸線を進むと漁師町があり、その裏手には山が迫っています。山に入ってゆくと、蜜柑の段々畑が見えてきました。段々畑は、潮風の当らない山の斜面にあります。畑には、収穫前のおいしそうに色づいた蜜柑が鈴生りです。

平地の蜜柑畑に比べ、段々畑での作業はきつくないですか、と運転手さんにお聞きしたところ、意外にも、平地より山での作業の方が楽とのことでした。山では、蜜柑を収穫した籠は、斜面を滑らせて移動できますが、平地だと収穫した籠を地面から持ち上げないといけないので大変とのことです。

将来は父親の跡を継いで、段々畑で蜜柑を作りたいと、運転手さんは話されました。蜜柑を食べると、蜜柑山と親切な運転手さんを思い出します。(洋子)

頼もしき跡継ぎのゐて蜜柑山   洋子