Author Archives: youko

a la carte 太刀魚

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兵庫県の明石の魚の棚(うおんたな)には、午前11時30分から始まる昼市(昼網)で仕入れたばかりの魚が並びます。新鮮そのものというか、生きたまま売られている魚も多いです。その新鮮な魚をもとめる客で、大賑わいです。

魚の棚からすぐ南の、明石港の端で開かれる昼市では、 水揚げしたばかりの魚をトロ箱に入れ、せりにかけます。ここでは、小売店が直接せりに参加しています。

せりが始まると、指で値段を示して、一番高い値段をつけた人が落札します。同額の場合は、じゃんけんで決めます。鯛、黒鯛、蛸、烏賊、がしら、蝦などが、次々と落札した人に引き取られてゆきます。

その中で、特に目を引いたのが太刀魚です。その名の通り、太刀のように扁平で長く銀色で、トロ箱から尾が、たらりとはみでています。自然界のものは、なんと美しい色、形であろうかと思うことがありますが、せりで見た太刀魚も、まさにそうでした。 海のかがやく銀色の波が太刀魚になったようです。

刺身、塩焼き、ムニエルなどにして食べます。上品な味で旨いです。(洋子)

太刀魚のまぶしき銀をせり落す   洋子

a la carte 大船鉾

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祇園祭の後祭山鉾巡行を見ました。7月24日午前9時30分に烏丸御池を出発し四条烏丸まで、十基が17日の前祭とは逆コースで進みます。

橋弁慶山にはじまり、最後尾は150年ぶりに復帰した大船鉾(おおふねほこ)。49年ぶりの後祭の巡行を見に大勢の人がやって来ました。

大船鉾は応仁の乱以前に成立し、幕末まで後祭のしんがりを巡行した由緒ある鉾です。元治元年(1864年)7月の蛤御門の変により焼失して以降、復興はならず休み鉾となっていました。

焼失を免れて受け継がれた御神体神功皇后御神面や装飾品を大切に保存し、祇園祭期間中に四条町内でお飾りする居祭(いまつり)を行ったり、宵山の祇園囃子を復活したり、唐櫃で巡行に参加したりと、大船鉾の巡行復帰に向けて準備をすすめてこられました。

白木の木組みの清々しさと銅板葺の屋根の美しさ。胴懸などはこれからなのでしょうが、すばらしい船出を果たした大船鉾に、沿道の人々から拍手が送られました。

四条町大船鉾保存会の皆さんの尽力、山鉾町の方々の協力、応援する人々の思いが一つになって、今回の巡行復帰が実現しました。150年間も、大船鉾復興を願い続けてきた人々のことを思うと感慨深いです。こうして復帰した大船鉾の巡行を見ることができ、とてもうれしいです。(洋子)

ふたたびの大船鉾を漕ぎ出す   洋子

a la carte 祇園祭

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京都の祇園祭は、7月1日の吉符入り(神事始め)に始まり1カ月続きます。中でも、山鉾巡行は威風堂々たる華やかさで、大いに盛り上がります。

貞観11年(869年)に悪疫退散を願って行われた「祇園御霊会」が始まりという祇園祭。山鉾は、疫病をもたらす悪霊を鎮め、安寧を祈り、大路を巡行します。

統合され17日に全ての山鉾が巡行していましたが、今年は49年ぶりに、17日の前祭(さきまつり)山鉾巡行と、24日の後祭(あとまつり)山鉾巡行に分かれて行われます。祭本来の姿に戻し、後世に伝えるための復活とのことです。

前祭の山鉾巡行を見てきました。見物客がつめかけ、例年通りの賑わいでした。前祭では、23基の山鉾が巡行しました。写真は、月鉾の巡行の様子です。

前日の宵山にも出かけました。通りには露店がずらりと並び、繰り出した大勢の人々で、身動きもできぬほど。熱気に酔いそうでした。

日が暮れると、山鉾の駒形提灯に灯がともります。月鉾の提灯の明かりの涼しげなこと。宵山の提灯の明かりには、遠い記憶が呼び覚まされるような懐かしさを感じます。

さて後祭は、どのような風情になるのでしょうか。150年ぶりに復活する大船鉾を含め10基の山鉾が巡行します。(洋子)

鱧茶づけ駒形提灯ともるころ   洋子

a la carte 玉解く芭蕉

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芭蕉生誕の地である伊賀上野で句会がありました。句会の前に、芭蕉生家を訪ねました。芭蕉が生まれて三百七十年。当時の屋敷からは改変を余儀なくされていますが、芭蕉在りし頃の佇まいが今も残っています。土間にある井戸(水は止めてあります)は、当時のままだそうです。おくどさんの近くに井戸があるので、台所仕事もはかどったことでしょう。

生家の裏には、芭蕉が処女著作『貝おほひ』(内題「三十番俳諧合」)を執筆した釣月軒があります。宗房という号で、序文によると寛文十二年一月二十五日に上野天満宮に奉納しています。二十九歳のときでした。

庭には、枇杷、南天、柿、栗などと共に芭蕉が植えられています。芭蕉は大形多年草です。初めて見た時は、その大きさに驚きました。巻いていた葉が解けると大きいものでは二メートルにもなります。今は、玉解く芭蕉、青芭蕉の季節。瑞々しい緑の葉が風を招いているようです。(洋子)

よき風に玉解く芭蕉となりにけり   洋子

a la carte_花吹雪

yosino4月13日、14日と吉野山で恒例の花の句会がありました。私は、十年余り通い続けていますが、今年はまさに満開の花を見ることができました。

これまで、咲き始めたばかり、逆にほとんど散っていたり、雨だったりと、さまざまなその年の花を見てきました。今年は、下千本、中千本が満開。上千本もほぼ満開で、奥千本は咲きはじめという花見のベストタイミングでした。14日朝は快晴で、句会は満開の花の吉野山を一望できる大広間で行われました。

吹き上げて谷の花くる吉野建  飴山 實

まさにこの句の通りです。心奪われたのは、花吹雪のショータイムと呼びたい光景でした。前触れの一陣の風が大きな玻璃戸を鳴らします。一呼吸おいて、谷からたくさんの花びらが勢いよく吹き上がってきます。天上に飛んでいくのかと思うほどです。風に乗って花びらはくるくる舞いながら、上下左右に飛びまわり、山手にさっとはけてしまいます。再び風が吹くと、次の花吹雪がやってきて存分に舞ってくれます。今年の美しい花の句会を、生涯忘れないと思います。(洋子)

朝の句座のぞきにくるよ花吹雪  洋子

a la carte 灌仏会

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4月8日は釈迦の誕生日とされ、その降誕を祝して行う法会が灌仏会です。仏生会、降誕会、花祭などとも言います。花で飾った小さな堂(花御堂)を作り、中に甘茶を湛えた水盤を置き、誕生仏を安置し、甘茶を灌ぎます。

釈迦は生まれた時、天地を指して七歩進み「天上天下唯我独尊」(宇宙間に自分より尊いものはない)と唱えたと言います。その時龍王が甘露の雨を降らせたという言い伝えにより、水盤の甘茶を柄杓で掬い、右手で天を指す小さな誕生仏に灌ぎます。

今日、四天王寺の灌仏会に行き、誕生仏に甘茶を灌いできました。お参りする人々にひっきりなしに甘茶を灌がれ、湯気が立ちそうなつやつやの誕生仏でした。甘茶の接待も受けました。ほのかな甘みがありおいしかったです。

灌仏の日に生れあふ鹿の子かな  芭蕉

灌仏会と言えば、晴れやかなこの句が真っ先に浮かびます。今日は暖かく、池の亀はのんびり泳いだり甲羅干しをしていました。鹿の子だけでなく、灌仏の日に誕生した亀の子もいたことでしょう。灌仏の日に生まれた全ての生き物に誕生おめでとうと言いたいです。(洋子)

灌仏会天地の間に生まれけり  洋子

『大人も読みたい こども歳時記』のすすめ

0308先日、小学館から刊行された『大人も読みたい こども歳時記』(長谷川櫂監修、季語と歳時記の会編著、1600円+税)を早速使っています。使いやすく、タイトル通り子どもも大人も読みたくなる内容です。

春・夏・秋・冬・新年の季語群のインデックスが5色に分けてあるので、とても引きやすいです。1ページに季語が2つずつ。本格的でわかりやすい季語解説。例句は子どもと大人の名句が3句。漢字にはルビがふってあります。そして全ての季語に、いきいきとしたカラー写真がついています。子どもの笑顔が印象的で見ているだけで幸せな気分になります。子どもたちが季語に親しみ、俳句をいっぱい作ってくれるといいなと思います。

「俳句の作り方のポイント」や「にゃーたが教える句会のやり方」は、俳句作りや句会の実践に役立ちます。にゃーたというのはイラストに登場する俳句の好きなかわいい猫の名前です。初めて俳句を作る子どもたちはもちろん、指導される先生方の心強い味方になることでしょう。

また、家庭でもこの歳時記をガイドブックに俳句を作ってみてはいかがですか。例えば、1つの季語を選んで家族が1句ずつ詠むと個性の違いが出て楽しいのではないでしょうか。

大人にとっては、例句に載っている子どもたちの俳句がよい刺激を与えてくれると思います。「はっきりとわかりやすく」「言われてみるとハッとする新鮮な俳句」を詠みたいと思っているのですが、「説明」「理屈」「意味不明」などに陥ることがあります。そんな時、子どもたちの俳句に触れると喚起されるものがあります。例句の中から子どもたちの俳句をいくつか紹介します。

ひな祭り結婚するなと父が言う  萌(小5)

カランコロン氷の音して夏が来た  栞(小4)

えだまめとぐりんぴいすはいとこかな  歩夢(小1)

着膨れやチャック開けるとまたチャック  愛子(小5)

福寿草飾りのごとく生えてをり  裕隆(小4)

いいな、おもしろいなと感じたことを素直に詠んでいます。言われてみるとハッとする俳句です。作者の思いが読者にきちんと伝わり、新鮮な感動が生まれます。監修の長谷川櫂さんが、この歳時記の冒頭「子どもの俳句、大人の俳句」の中で述べているように大人は子どもの俳句にこそ大いに学ぶところがあると思います。(木下洋子)

 

a la carte_年の市

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今年も残りわずかとなり、迎春準備でなにかと気ぜわしくなってきました。

おせち料理に使う食材を、「京の台所」として親しまれている錦市場に買いに出かけました。

「年の市」として賑わう錦市場は、400年の歴史があります。狭い通りの両側に、蝦芋、聖護院大根などの京野菜、琵琶湖の魚の佃煮、漬物、菓子、花、小物などの老舗がずらりと並んでいます。

鮮魚店では、「正月用睨み鯛」の予約を早くから受け付けています。縁起物の鯛の姿焼に、正月三が日、睨みをきかせてもらうのですが、我が家では、元日にいただいてしまうので、睨みは一瞬です。

海産物店では、写真のように70cm~1mほどの棒鱈が吊されています。「叫んでいる流木」と名付けたい迫力があります。干鱈なので、水でもどして、甘辛く炊き、おせち料理の一品となります。あれこれ店をのぞき、品物を選ぶのは、楽しくあっという間に時間がたってしまいます。

皆様、よい年をお迎えください。(洋子)

大いなる鯛に睨まれ年の市   洋子

a la carte_日向ぼこ

1119大阪の難波駅から道頓堀に出て、法善寺横丁を抜けて、法善寺へ。法善寺横丁には、関東煮や鳥料理等のおいしそうな店が並んでいる。

法善寺の境内は狭いが、水掛不動で知られ、お参りの人が絶えない。不動に掛ける水は、ポンプで汲み上げる井戸水である。きいきいとポンプを鳴らして、バケツに水を汲む。苔むした不動に水を掛け、手を合わせる。大通りの喧騒が遠のき、昔の大阪の風情を感じる。

井戸の蓋の上で、猫が日向ぼこをして、うつらうつらしていた。水を汲む人を時折、ちらと見るが、まったく動じない。めっきり寒くなってきたので、至福の時間なのであろう。見ているこちらも、幸せな気分になる。

境内のすぐ横に、「夫婦善哉」の店がある。法善寺に参った後は、善哉を食べるのが楽しみだ。大阪では、粒餡で作った汁ものを善哉と呼ぶ。「夫婦善哉」は、二椀で一人前である。中に、白玉団子が一つずつ入っている。

織田作之助が、昭和十五年に発表した小説『夫婦善哉』にも、登場する。「ここの善哉はなんで、二杯ずつ持って来よるか知ってるか」と聞く柳吉に、「一人より女夫(めおと)の方がええいうことでっしゃろ」と、蝶子が答える場面が印象的だ。店先には、先ごろ放映されたドラマ「夫婦善哉」のポスターが貼ってあった。(洋子)

織田作の浪花の夢や日向ぼこ   洋子