à la carte_韓国東国寺にて
秋の一日を韓国群山に遊んだ。ソウル俳句会の吟行句会への飛び入り参加である。
群山は西海にある港町である。その特色は、日本植民地時代に多くの日本人が居住していたこと。豊かな穀倉地帯であったこの地から日本へ米を運んだという。
東国寺は、この地に現存する唯一の日本風の寺である。色鮮やかな韓国の寺を見慣れた目には、むしろ簡素で清々しい印象を受ける。しかし、何故、日本にとっては歴史の汚点ともいうべき、韓国にとっては痛みを伴う傷ともいうべきこの寺を残したのか。境内に足を踏み入れると、正面に石版がある。日本側からの過去の過ちに対する謝罪文が、日韓両方の言葉で刻まれている。決して広くはない境内には、秋の草花が咲いている。紅葉の始まった蔦紅葉が、銀木犀が、薔薇が、コスモスが……。 この寺には罪がない。秋の日差しを受けて鮮やかに咲く花々に何の罪があろう。
秋薔薇一輪あやまち赦されよ
諍ひの歴史解かれよ蔦紅葉
ふと、この寺は日韓両国のしこりを溶かすための記憶遺産として残されたものなのかもしれないと思った。(趙栄順)