à la carte_グロリオーサ(ユリ科)
グロリオーサの花はさまざまな色があります。濃いオレンジやピンクの強い赤に、黄色のふちのあるものや、またレモンイエロー、白にすこしだけピンク色が混じっているものもあります。
華やかな雰囲気を醸し出しているのは、色のほかにその特徴ある形によります。花はくるりと反り返った状態からだんだんと花びらが下がって開いていきますが、波打った花びらは折れやすく、取り扱いは要注意。茎もまたしかり。葉は先が丸まっているので他のものに容易に巻き付きます。いけるときにグロリオーサだけ数本まとめて手に持っただけで、もう大変。お互いに絡みつき離すのに余分な手間がかかります。
花が開けば開いたで、中からつきだしている数本の雄蕊の先についている花粉も厄介で、衣類に着くと扱いを誤ると落ちません。そのときは、表面に粘着性のあるテープを手に巻き取り、深く繊維の中に入り込む前に,表面をサッと払うように取るとテープについて落ちます。
「今度の展覧会に、ヨーロッパではあまり見かけない長い茎のグロリオーサをいけるのが私の夢だったのです!」ヨーロッパで数十年暮らしてきて帰国し、日本ではじめて展覧会に出品する私のクラスのYさんが、花の先まで70センチほどのこの花をお稽古のときに手にして言いました。
その特徴のため、お互いに引っかかってしまい、売るときに手間がかかるからでしょうか。花のついている先の部分だけを25cmほど切り取り、膨らませた透明な袋に一本づつ入れて売っているのを私が見かけたのも、どこかヨーロッパの国だったと記憶しています。
ある時日本でのデモンストレーションで、2mに達するようなグロリオーサが舞台に登場すると観客の中からざわめきがおこりました。そんな長いものを見るのは私も初めてでした。グロリオーサは、大きな花器に加えられるごとに撓んだ線を描き、いけられてみれば長い茎の上で、花はあたかも黄色の蝶が舞っているような光景でした。
この花を生産した人は、真っ直ぐ長い茎を持つ花を珍しさから作ろうと思っただけでなく、花の重さで作り出される線の撓みも計算していたのでしょう。この光景は、Yさんのいっていた外国の短いグロリオーサでは確かに出現し得なかったと思いました。
グロリオーサの原産地はアフリカ、または熱帯アジアといわれています。たとえ日本のハウスで栽培されたとしても、いける人の感性の奥底に流れるものまで思いをはせ、花を生産する人たちがいる限り、まだまだ花をいける楽しみは尽きないと思ったのです。(光加)