a la carte 蜜柑山
蜜柑のおいしい季節になりました。炬燵に入って、蜜柑を食べるのは冬の楽しみの一つです。蜜柑の色は、温かい団欒の象徴のように感じます。
先日、句会で和歌山に行きました。当日は大雨で、散策というのも難しく、句友二人と句会の時間まで、タクシーで回ることにしました。
和歌山の名産の一つに、蜜柑があります。句会の兼題にも「蜜柑」が出ていたので、運転手さんに蜜柑山を見たいとお願いして、連れていってもらいました。なんと、若い運転手さんの家も、代々蜜柑を作っているとのことで、おすすめの場所に案内してもらいました。
タクシーに乗って、海岸線を進むと漁師町があり、その裏手には山が迫っています。山に入ってゆくと、蜜柑の段々畑が見えてきました。段々畑は、潮風の当らない山の斜面にあります。畑には、収穫前のおいしそうに色づいた蜜柑が鈴生りです。
平地の蜜柑畑に比べ、段々畑での作業はきつくないですか、と運転手さんにお聞きしたところ、意外にも、平地より山での作業の方が楽とのことでした。山では、蜜柑を収穫した籠は、斜面を滑らせて移動できますが、平地だと収穫した籠を地面から持ち上げないといけないので大変とのことです。
将来は父親の跡を継いで、段々畑で蜜柑を作りたいと、運転手さんは話されました。蜜柑を食べると、蜜柑山と親切な運転手さんを思い出します。(洋子)
頼もしき跡継ぎのゐて蜜柑山 洋子