à la carte 胡蝶蘭
選挙の折、候補者が当選したとたん次々とお祝いの花の注文が花店に舞い込みます。こんな時、議員事務所に運び込まれる花鉢は、何輪もの花が豪華にたれさがる胡蝶蘭が多いのです。
この花は属名「phalaenopsis」をそのままをあてはめ、「ファレノプシス」とも呼ばれます。花びらの色は白やピンク、また、小ぶりのものではそのほかにも黄色や緑がかったものなどの園芸種も見かけるようになりました。リップといわれる中心にある唇弁は3つにさけ、白の元に黄色が入ったもの、ピンク色や赤に近いピンクもあります。
この英名はMoth orchid「モス オーキッド」、直訳すれば「蛾の蘭」です。
多数ある蘭の中でも花びらが平たく開くのでこの名前がついたようで、蛾では日本人には違和感があるのか和名は胡蝶蘭となっています。花のつき具合、大きさにもよりますが、東京の花店で見かけるものは一本が八千円から一万円で、鉢に3本立ち、5本立ち、となれば、この鉢は、大体このくらいの値段とわかり、自分では決して買わない花です。
南半球の国から国賓として来日の大統領か首相のご夫人だったでしょうか。随行団の中には報道の方たちもおいででした。お迎えした部屋で私が数作いけた後、竹を土台とした背丈ほどあるフィナーレの作品に「この作品を仕上げていただけませんか?どこに入れましょう」と純白の大輪の胡蝶蘭をお持ちしました。じっと見ておられたスーツ姿の夫人はさっと立ちあがり、中央のくりぬかれた竹の中に「ここかしら?」と入れられたのです。カシャカシャカとプレスたちのカメラのシャッターを切る音が響き、声がかかりました。「マダム、そのまま花の近くで、もう一度お願いします。」垂れかかる胡蝶蘭に手をそえてカメラに微笑む夫人の濃いめの色の肌に、白い胡蝶蘭がなんと映えたことでしょう。
白い花の花びらは奥に向かって透き通っていくような白さを持つものと、同じ白でも光を集めて強く跳ね返して輝くものがあります。胡蝶蘭はその後者にあたると、この時強く実感しました。夫人の美しさをより際立たせ、胡蝶蘭自身も光を放っているように見えたのです。花と花との取り合わせはよく言われますが、それは花と人とにもある、この蘭を選んでよかったと、私は夫人と並んでカメラに収まったのです。(光加)