アネモネ
その名がラテン語の「風」から来ているといわれるアネモネは、英名もWind Flower (風の花)でキンポウゲ科に属し地中海の原産です。
春も進むと淡い色の花々の中に、だんだんとくっきりとした色調の花が混じってきますがアネモネもそのひとつです。
アネモネコロナリアという、王冠のアネモネという意味の名を持つアネモネは一般に見かけられる園芸種で、茎に一輪花が咲きます。花の色は白、ピンク、紫、藍 濃いピンク、赤、また、元の部分が少しだけ白いものもあります。花びらのように見えるのは萼です。園芸種は八重咲きや、半分八重のようなものもあります。
春の光に蕾が開き始めると、目覚めた花が精一杯伸びをしているようにそりかえらんばかりに花が開いていくので、すぐに散ってしまうのではと心配になります。
花の真ん中の濃い紫色の雄蕊が、まるで花の眼のようでこちらが気がつくのを待っているような視線を感じるのです。ひょろりとした茎からは切れ目の深い葉が周りを囲むようについています。
ギリシャ神話のなかでは、アネモネに関する話の一つに美の神アフロディーテの愛したアドニスの物語が知られています。狩猟好きの美少年アドニスは追いかけたイノシシの牙に刺され命を落としますが、アドニスの流した血が赤いアネモネになったという話です。
実際のアネモネには茎にプロトアネモニンという毒があり、茎を切ったときににじみ出てくる液体は手につくと肌の弱い方は皮膚炎などのトラブルを起こしかねないので気を付けなければならないようです。それはもしかしたら、私に近づくな!というアドニスのメッセージなのかもしれません。美しいアドニスはアフロディーテだけでなく、彼を育てた女神のぺルセポネまで夢中にさせてしまったのですから。
多々ある花のなかでもこんなにも長い間愛されてきたアネモネ。この花がやはりあの物語のアドニスの化身かと思えるのは、春の花いっぱいの店先で、この花をみつけた女性たちの「可愛い!」という声が何度となく聞こえてくる時です。
いずれにしても、古今東西を問わずイケメンは得ということなのでしょうか。(光加)