カルミア
新しい植物が発見された時、改良種が作られたとき、その植物に人の名がつけられることがあります。たとえば新種のバラに王女や女優さんの名前、生産者によって新しく開発されたトマトに愛妻の名前をつけた方もいました。
「カルミア」(別名はアメリカしゃくなげ)は18世紀のスエーデンの植物学者で、北アメリカでこの木を発見した「ペール カルム博士」にちなんでつけられました。 生まれはフィンランドですが、のちにスエーデンに移り住んだカルムさんはそのためフィンランドの切手にも肖像画となって残っています。長めのウエーブの髪、二重あごで眦を決した表情なのはまだ旅行が困難であった1700年代にアメリカやカナダ、ロシアやイギリスに植物調査に渡ったからでしょうか。植物学者として高名な、やはりスエーデンのカール フォン リンネ博士の高弟でもあります。
「カルミア ラティフォリア」は日本には20世紀になって渡ってきたものです。枝先にたくさん集まって咲く淡紅色やピンクや白の花の形は独特で、蕾は植物図鑑のどれにも「金平糖のよう」と記されています。胴まわりの同じ位置からつんつんと角のように突きだしている蕾を見れば、広げかけた傘のようで、「はながさしゃくなげ」という日本名も納得できます。
やがて花先は5つに割れてカップ状に開くと、内側には10本の雄蕊と1本の雌蕊があり、濃い赤や紫の斑点が円を描くように跳んでいます。濃いピンクの蕾が開くと中が薄いピンクという変化は枝先を一層にぎやかにさせます。園芸種では大輪のものや、ふちどりのあるもの、そこに紫色の線が入るものもあるのだそうです。まるで極小のしゃれたお椀か小鉢が集まっているよう、とうっとり見ているとなにやら手にべたべたつくものがあります。これは蒴果の毛についている液で花やさんに切り花で売っていないのはこのせいでしょうか。
女の子たちが思わず「かっわいい!」と声をあげそうなカルミアの花。あの世でカルムさんも自分の名前を付けられたことに少しくすぐったい思いをしながらも、まんざらでもないのではないでしょうか。(光加)