朝日カルチャーセンター〈カフェきごさい句会〉7月
7月のカフェきごさい句会の兼題は、6月のカフェきごさいサイトより、季語「麦秋」、料理「苺ジャム」、花「スズラン」です。
【特選】
少年の甘露と叫ぶ麦茶かな 周作
実際に少年が発したことばは「うまい!」だろう。暑い盛り、運動した後や遊んでかえっての麦茶はまさに「甘露」。真夏の飲物の麦茶をいきいきと描いた。
雲ぬけていま麦秋へ着陸す 隆子
黄金色の麦畑に囲まれてある飛行場。そこへ下りていく様子を「麦秋」へ着陸するとしたことで俳句になった。「雲ぬけて」という上五の入り方もいい。
栄転といはれて赴くや麦の秋 光加
古代中国の時代から、栄転と言われての左遷はままあること。赴任先はまさに麦秋の時期。鬱々とした複雑な心境が「麦の秋」とよく合っている。
【入選】
かすかなる甘味ころがす麦茶かな 周作
麦茶の自然な甘みを喜んでいる。
誰がために鈴蘭鳴らしゆく風よ 隆子
甘い内容に「誰がために」などと置くとよけいにぼんやりした句になる。「吾がために」など一考を。
妻三日留守して庭の夏落葉 澄江
妻の存在感。「夏落葉」がいい。
星屑の苺の蔕が散らばつて 隆子
苺の蔕が「星屑」のようだというのではつまらない。「星空や苺の蔕が散らばつて」など。
五月闇腕立て伏せの五百回 周作
夏の生命力が凝縮された暗闇と人間の生命力との呼応。
今朝の庭一千本の梅雨茸 稲
朝、雨戸を開けると庭一面に茸が生えていたような恐ろしさ。梅雨茸の生命力を感じさせる句。
麦秋や十万の歓声競馬場 稲
「麦秋」「歓声」「競馬場」を並べたシンプルな作りだがしっかりと情景が描けた。
ふつふつと幸せも沸きいちごジャム 光加
「ふつふつと」がいい。いちごジャムの赤い色が目に浮かぶ。
8月の兼題は「カフェきごさい」サイトより7月の季語「夏の野の花」、料理「梅ご飯」、花「紅花」。8月の句会が終わるとそろそろ秋です。夏の俳句をぜひたくさん詠んでください。(光枝)
戦争のかくれてゐたる麦を刈る 光枝