クリスマスブッシュ
クリスマスカードが届きはじめるころ、暖かいハワイや南半球のニュージーランドやオーストラリアをはじめとする国々からのものの中には、なかなか個性的なカードがあります。
サンタクロースがサーフィンボードに乗ってくるものや、カンガルーがサンタの格好をしていたりします。
クリスマスを祝う風習は世界中に広まり、フィンランドのサンタクロース村に行けばサンタクロースの家までみられ、真っ白な雪、クリスマスツリー、サンタがプレゼントを届けるための橇や、それを引くトナカイなど、次々とクリスマスのイメージがわきます。
しかし地球の向こうの南半球はクリスマスのある12月は夏です。この季節を祝うのにはどんな植物があるのでしょうか。
思いつくのはクリスマスブッシュです。クノニア科で、正式の名前はケラトベタルム クンミフェルムでオーストラリアのニューサウスウエルスの初夏に咲き、New South Wales Christmas bushと呼ぶのが正しいそうです。
はじめは小さな花が開きますがその時は目立たず、花が終わりに近づくとそれを囲んでいる5つの萼の部分が紅色に色づき、それがきわ立った時に花としての印象が強くなります。常緑樹でつやのある緑の小さな葉が花を引き立てます。
ブッシュという言葉は低木を意味しますが、この木は5m以上のものもあり、たくさんの花が枝につくときにはそれは見事だそうです。でもオーストラリア人の男性の知人に聞いたところ、この時期はほかにも花はたくさん咲いているので、例えばポインセチアのように特別にクリスマスの花という認識はない、といっていました。
日本の気候の中で鉢物や庭に植えられているクリスマスブッシュが開花するのは春から夏にむかう時です。季節感を大事にする日本人にはクリスマスブッシュというこの名前が、花の咲く季節とずれていてしっくりこないのでしょうか、初夏に切り花や鉢でも花店であまり見かけることはありません。
花屋さんで初冬にこの花がふんわりとした赤い塊を作っているのを見かけたら、それはオーストラリアからの輸入ものです。やがて鮮やかな赤を誇る様々な花がクリスマスブッシュをかき消すように店頭を飾り、師走の気ぜわしさが増す時期になっていきます。(光加)