今月の花(6月)ミント
ドイツのフランクフルト郊外の貸農園はライラック、八重桜、藤、チューリップ、ジャーマンアイリスなどが競って咲いていました。農園は150区画ほどありました。その一画を借りているSさんは彼女のいけばなの師T先生から私が日本から来ると聞き、デモンストレーションの花材に使える植物があれば自分の庭からどうぞ、と申し出てくださったのです。
庭の中央にある道具小屋には小さなキッチンと小型の冷蔵庫もあり、心地よい陽ざしのなか木を組んだベランダにいると、お茶が運ばれてきました。一瞬、遠来の私に日本茶をいれでくださったのかと思ったのは、白いカップの中に色鮮やかな緑を見たからです。でもその思いはすぐに独特のさわやかな香りに打ち消されました。ミントテイ―でした。まろやかな、すっきりした口当たりでした。
前の持ち主から庭を譲られた時、これは特別なミントだと説明されたそうです。甘露という言葉がぴったりな味に、ハチミツなどを足したのかしらと聞けば、何も!さっき摘んで熱湯に入れただけ、と肌が透き通るように白いS夫人の答えでした。後に日本で写真を見てもらうとアップルミントの一種ではということ。ミントには薄紫の小さな花も咲きます。
少し湿った土を好むシソ科の和種薄荷は日本でも昔から薬用に使用されてきました。欧州のミント類ではウオーターミント(水薄荷)とスペアミント(オランダ薄荷)の交配種のペパーミントやバナナ、パイナップル、グレープフルーツ、オレンジなどフルーツの香りがするミントやクールミント、ハーブキャンディに用いられるスイスリコラミントなど数百種類もあるそうです。使い方は多様で、メントールを含む精油や入浴剤、歯磨き、ガムやお菓子、お茶、またアイスクリームの上には葉がアクセントとして飾られ、お酒ではカクテルのモヒートに使うとおっしゃる方もあります。
フランクフルト近くでは二週間前は雪も降ったそうです。そんな天気の変化にもかかわらず季節は春から初夏に移っていくのを我慢しきれず勢いよく伸び、萌えたつような緑の葉をつけたミント。
この頃日本では新茶が出回りはじめます。今年一番に私が新茶を味わったのは5月のドイツでのミントテイ―、ともいえるでしょうか。(光加)