カフェネット投句(1月) 飛岡光枝選
一休の腰に挿したる餅の花 周作
一休にこのような逸話が残っているのかは知らないが、さもありなんという風情。「めでたや めでたや」と里を歩き回る姿が目に浮かぶ。
初夢や花びらもちに包まれて 弘道
花びら餅の白妙の布団にくるまれて見る夢はどんな夢だろう。「初夢」「花びら餅」と季語がふたつあるので「夢をみる花びらもちに包まれて」とすることも考えられるが、この句の「初夢」は動かしがたい。平仮名を多用したことも柔らかな句の内容と合っている。
【入選】
新しき大地のごとく鏡餅 今日子
鏡餅を大きく捉えた新年らしい一句。ただ、大地はもっと広々したものなので一考を。
炉語りは疎開のはなし餅の花 涼子
しみじみと昔の話を聞くのも正月ならでは。「炉語り」が「はなし」とダブる。「婆に聞く疎開のはなし餅の花」など。
初富士へ転舵する船大飛沫 涼子
初富士らしい大景。「転舵」「船」もダブり。「初富士や面舵いつぱい大飛沫」など。
うれしさの弾けしだれて餅の花 隆子
新年の喜びを餅花に託して。
華やげる餅花くぐり客席へ 弘道
「客席へ」がいかにも説明。「華やげる餅花くぐり三番叟」など。
天井の餅花影を散らしけり 周作
位置関係が曖昧。「天井に」。
【投句より】
・「太箸を子供二人がもてあまし」
「二人」がこの句では必要かを考え、この字数を言いたいことに近づくように使いたい。
・「初湯浴み肉やはらかく放たれし」
「放たれし」がわかりにくい。解放感を言いたいことはわかるがより具体的に。「湯浴み」がもったいぶった印象になり、「初」が効いてこない。「初風呂」「初湯」で十分。
・「凍み餅はくだけて霜の花のごと」
「霜の花」は霜のこと。「凍み餅」がなんでそんなに粉々になるのか映像が結ばない。
・「餅花の影軽やかに揺らぎけり」
「軽やか」に「揺らぎ」は合わない。「軽やかに揺れにけり・揺れてをり」。辞書では「揺らぎ」は「ゆれる、ゆれ動くこと」と出ているが、「揺らぎ」と「揺れる」の言葉の風合いの差を感じて使い分けることが大切。