今月の花(七月)水無月
花びらを平たく広げた白い小さな花。その花をたくさん集めて円錐形に咲いている水無月を見かける季節になりました。アジサイの一種で、その姿からピラミッドアジサイという名前もあります。
白い花の大きなかたまりは、薄い緑の葉をつけて咲いています。あたかもその葉の色が花に反射したような少し緑色を含んだ白が涼し気です。近づいて見てみると小さな花弁の白にかすかに淡紅色がさしたものもあります。
水無月の花を少しでも長く楽しむには茎の元を水の中で切り、ミョウバンをつけます。私はその美しさをさらに残しておきたくて葉をすっかりとって逆さにつるし、ドライフラワーとして使おうとしてみましたが、一時かさかさになったものの小さな花が一輪また一輪と落ちていき、そのうち茶色になってきてあきらめました。
この季節から秋をそろそろ感じ始めるころまで咲く水無月は、日本原産のノリウツギの園芸品種です。ノリウツギは糊空木と書き、紙を作るのに用いられる糊をその樹皮から採ったためといわれます。ノリウツギはひとつの花の装飾花の数は少なく、かわりに両性花と呼ばれる雄蕊と雌蕊がひとつの花についているものが花の中央に密集します。装飾花が周りについたガクアジサイを思い出していただけばおよそのノリウツギの花の姿が想像できるでしょうか。
もともとは水無月は旧暦の六月、今の太陽暦では七月をさします。暑くて水が蒸発しそうな月、という意味があるそうです。三十日には一年の折り返しに厄を払い、あとの半年を元気でいるように願う名越の祓があります。
この名越の前後に和菓子屋さんにならぶ水無月と呼ばれるお菓子は外郎に小豆がのせられています。三角に切られた白の外郎は氷室から出された氷をかたどったものだそうで、口の中での冷やりとした食感はこの蒸し暑い季節を瞬間追い払います。氷室の氷など庶民は口にできなかった時代の知恵も働いていたのでしょうか。
たっぷりと花をつけて重たげに揺れている水無月の花。甘さをおさえたもっちりとした食感の水無月。視覚も味覚もこの水無月の季節ならではの楽しみがあります。(光加)