朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」三月
今月の兼題はサイトより、季語「春のむずむずする季語」料理「粉吹き芋」花「小手毬」です。
【特選】
小手毬の花をゆらして猫の恋 隆子
猫の姿は見えていないのだ。揺れる花で猫の恋を言いとめた。恋に夢中の猫がまるで手毬にじゃれているようでもある。この句は「猫の恋」の句になっているが安易な季重りには注意したい。
【入選】
ブランコに倦きて縄飛び風光る 周作
「倦きて」が春の心持を感じさせる。「ブランコ」「風光る」ともに春の季語。
春の灯や誰彼皆が顔揃へ 守彦
「誰彼」と言ったことで、春の灯に照らされた様々な顔が思い浮かぶ。
小手毬の道を清めて修道女 涼子
道を掃くたびに揺れる小手毬。
花菜雛野辺のひかりをまとひけり 隆子
菜の花のお雛様の佇まい。「野辺」「まとう」の少々まどろっこしい言い回しのため、句意が今一つ伝わりにくい。
競走馬運ばれてゆく春の宵 今日子
春の宵のとりとめのない心持ち。
街道に酒旗はためき夏来る 守彦
「街道」「酒旗」に大陸のシルクロードを思った。「街道に酒旗はためく夏来る」。
犬ふぐり青き地球の片隅に 涼子
「片隅に」では小さい犬ふぐりが片隅に咲いているという理屈に。
春遅しいぶりがつこと茶碗酒 弘道
北国の春。「春遅し」がいい。
玉砂利の光りてすがし春時雨 いさみ
春時雨が去った後の玉砂利に焦点をあてた。
荷車の真鱈の腹に積る雪 周作
腹まで言って成功。「荷車の真鱈の腹に雪積る」。
旅立ちや姉手作りの桜餅 弘道
桜餅がやさしい。
小手毬の散ればたちまち苅られたる 今日子
小さな白い花びらが散り敷いた様子が目に浮かぶ。ただこの形の類句は数多あり、「小手毬」が最善の季語かは考えること。「小手毬の散ればたちまち刈られけり」。
はや空の巣穴がひとつ山笑ふ 光枝