朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」(5月)
朝日カルチャーセンター新宿の「カフェきごさい」句会。5月の兼題はサイトより季語「ほととぎす」料理「ホワイトアスパラガス」花「卯の花」です。
【特選】
片かげり人集まりて葬を待つ 守彦
人が多く亡くなるのは極寒の季節か炎暑のころ。残念ながら厳しい季節を乗り越えられなかった。掲句は炎天下、葬儀が始まるのを待つ人々。夏は生命力の雄雄しさを感じる季節であると同時に、その反対の死を強烈に意識する。特に日本の蒸し暑い夏は古来疫病を恐れてきた歴史がある。そして現代、戦争、原爆という夥しい死の影が焼き付く季節でもある。善良な人々は死神の手を恐れて片陰に集まるしかない。原句は「片陰に人集まりて葬儀待つ」。
【入選】
城跡は木々に抱かれ不如帰 勇美
緑に覆われて静かに眠る城の面影。不如帰の声が夏を伝える。
山うつぎ武蔵相模の国境 涼子
富士の山が見える峠かもしれない。シンプルな作りで成功。
ほととぎす三度鳴いたり百花園 守彦
東京の下町向島。百花園の回りは現在は住宅街であるが、そのむかしは江戸近郊の景勝地だった。時鳥の声に江戸のころにタイムスリップしたかのような一句。
天窓に流るる雲や桐の花 勇美
夏の雲が流れる天窓に揺れるむらさきの桐の花。
涼しさや白木に打つて墨の糸 隆子
最近は材料を運び込むとあれよあれよという間に組み立てられて家が建てられることが多いが、少し前までは大工さんが木材に鋸や鉋を入れる様子がよく見られた。炭壺から糸をぴんと弾いて材木に印をつける。そこに涼しさを見出した。
炎天や帽子をとれば日の匂ひ 守彦
汗と夏の日差しが存分に沁み込んだ夏帽子。原句は「炎天に帽子をとれば日の匂ふ」。
卯の花や海はるかなる鯨塚 隆子
遠い海に思いをはせる鯨塚。季語の「卯の花」を一考したい。
アスパラガスりぼんで括り朝の市 光枝