朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」(6月)
6月の「カフェきごさい句会」。兼題はサイトより、季語「涼と冷」料理「バナナトースト」花「藻の花」です。
【特選】
雲海を破りて聳ゆ黒き嶺 和子
「雲海」を身近に眺められるのは山に登った人の特権。山岳俳句によく登場する「雲海」は「海」に着想を得たものが多いなか、この句はそこにそびえる嶺に着目して新鮮。「破りて」の力強い表現が夏山にふさわしく「黒き嶺」も的確。
月光をあつめて白き朴の花 勇美
山中で目にすることが多い朴は20メートルもの大木になり、初夏、遥か天上に香しい花を開く。夜は花の香りに誘われ月が通う。句は月の光に染まった花を詠む。「あつめて白き」の中七が生きている。大きな盃のような朴の花に夜な夜な月の光が満ちるかのようだ。
藻の花のながれに掛けんうなぎ筒 隆子
ことばが過不足なく使われた気持ちのよい句。上五から下五まで豊かな水の流れのよう。このうなぎは美味しいに違いない。
【入選】
女文字のごとく花藻をゆらし行き 光加
花藻のゆらぎが女文字のようだというのは涼し気で上々のみたてだが、原句のままでは主体があいまい。「女文字のごとく花藻のながれかな」など。
落ち水やくるりと回る瓜二つ 弘道
水に遊ぶ瓜の様子をきちんと描けているが、きちんとしすぎて涼しさに今一歩。「落ち水やくるりくるりと瓜二つ」など。
草原に湖の記憶やあまの花 隆子
青い亜麻の花が一面にそよぐ草原。亜麻の花が水の化身のよう。ただ草原に湖ではあまり面白くはない。「草原に海の記憶や亜麻の花」。
独居やスイカ大きし冷蔵庫 光加
冷蔵庫を占拠している西瓜が見えておかしい。「独居にスイカ大きく冷蔵庫」。
焼酎やミント浮べて粧へり 勇美
「粧へり」が言わすもがな。より句の内容、言いたいことが生きることばを探したい。
梅雨晴間湖面をすべる漁り舟 弘道
同じ作者の「瓜二つ」の句同様、しっかり描けているのだがより広がりが出るといい。この句の場合「漁り舟」では茫洋としてしまう。より具体的に。
青空や藻の花ふぶく水の中 光枝