カフェきごさい ネット投句(9月) 飛岡光枝選
言葉の運びが適切で燃えるような唐辛子が目に浮かぶ。原句は「束に吊り火伏のごとし唐辛子」。
落葉松の林の奥より秋の声 弘道
ひんやりとした空気感まで感じられる静かな一句。原句は「落葉松の林の奥より秋気配」。
【入選】
おくるみに赤子の寝息虫鬼灯 涼子
虫に食べられて中が透けてみえている鬼灯とおくるみの赤ん坊。原句は「おくるみに包まる赤子虫鬼灯」。手触り、臨場感がより出るように推敲を。
蒸し茄子熱きを割いて今日の秋 涼子
原句は「蒸し茄子の熱さを割ひてサラダかな」。原句は材料、ここからが本番。
この道に日の暮れ近し烏瓜 勇実
薄暗くなりつつある空間に烏瓜が鮮やか。原句は「裏道に日の暮れ近し烏瓜」。「裏道」は句を細くする場合が多いので注意。もちろん使えないわけではありません。
金網を猫の抜けゆく葛の花 勇実
金網に絡まって広がる葛の花。原句は「金網を猫は抜けゆく葛の花」。
酒すこし温めん茄子の辛子漬 隆子
「温酒」の秋の句。秋の心持が出ている。
うまかりし雨風の疵も秋茄子 隆子
原句は「売ればよし風雨の疵も秋茄子」。原句をよりいかす形だと「売ればよし風雨の疵の秋茄子」「買うてきし風雨の疵の秋茄子」。
糸つけて飛ばしたことも鬼やんま 弘道
原句は「糸つけて飛ばしことあり鬼やんま」。より自然なことばの流れを見つけたい。
朝採りし秋の野菜と農夫来る 弘道
原句は「朝採れの秋野菜持ち農夫来る」。「秋の茄子」などより具体的でもいい。