カフェきごさいネット投句(11月)飛岡光枝選
枯蓮の水辺がこの世の果てと言っているのではない、荒涼とした枯蓮を見ているうちにこの世の果てに心が至ったのだ。
落ち葉踏む音やはらかく峠越ゆ 和子
山中の落葉がみな集まったかと思うほど落葉が積もった峠道。音がやわらかく感じるのは作者の心の充足感によるものだろう。人生の峠道でもあるかもしれない。原句は「落ち葉踏む音やわらかく峠越え」。
雪の槍群青の空貫けり 和子
「槍」は「槍ヶ岳」。一気に描いた絵のような勢いがある一句。原句は「雪の槍群青の空貫きて」。
【入選】
分け合うて石焼き芋の黄金色 勇美
黄金色を分け合うというのがよい。原句は「分け合ひて石焼芋の黄金色」。
鳥たちの影まどかなり冬隣 隆子
「冬隣」という季語は一見何にでも付くが、何でもない句になる可能性も高い。掲句は鳥たちの影の繊細な描写で季語が生きた。
秋暮るる踏切を待つバスの中 弘道
踏切を待っている束の間にも暮れていく秋。秋の暮をよく捉えている。原句は「踏切を待つバスの中秋暮るる」。原句は頭から最後まで述べてしまい、散文。
雪起こし轟く海の闇深し 和子
漆黒の冬の海に轟く雷。原句は「雪起こし轟く海ぞ闇かりき」。
【投句より】
(雪吊や眠れるごとく瓶の藍)
すっきりと出来ているのですが、残念ながら季語の「雪吊」があまり生きていません。また、藍が甕のなかで眠っているというのは新鮮な感覚というわけではないので、表現としてもう一歩先へいく必要があります。「ごとく」はこの句では取りたい。「藍瓶の眠り深々雪催ひ」など。
(秋雨や一人住まいの姉老し)
はらからを思う心やさしい一句ですが、「秋雨」がよくありません。中七下五のさびしさにまたさびしい季語をもってきては俳句が陰々滅々になるばかり。「菊日和一人住まひの姉も老い」など。
(落ちさうで落ちぬ芸かや芋の露)
「落ちさうで落ちぬ」という面白いところに目がいきましたが、「芸」では世界が広がりません。より心を自由に遊ばせて。「落ちさうで落ちぬ地獄か芋の露」など。