今月の花(三月) 黄梅
紅梅や白梅はよく知っているけれど、さて黄梅はと聞かれると、はて?という方もおいでかもしれません。黄梅はモクセイ科のそけい属で、梅という字はついていますが梅はバラ科に属すので黄梅とは近縁とはいえません。
春に先駆け黄色い花を咲かせる蝋梅、山茱萸、万作、そしてれんぎょうなどの花木の列にこの黄梅も加わります。花は字のごとく黄色で 前述の花木の花たちの中では一番鮮やかで明るい黄色ではないでしょうか。蕾の先が六つに分かれて平たく咲く2センチすこしの花は、四つの稜のある緑色の枝の上に咲きます。高さはせいぜい1メートルくらいにしかなりませんが枝は緩やかな曲線を描いて垂れさがります。落葉樹である黄梅は中国では旧正月近くに咲くので迎春花と呼ばれ、日本には江戸時代に入ってきて庭木として栽培されています。
黄梅の英名は冬のジャスミンをさすwinter jasmine(ウインタージャスミン)ですが、黄色い花にジャスミンのような香りはありません。夏に咲くジャスミンのように愛らしい小さな冬の花という意味を含むのでしょうか。
黄梅は、もう少し季節が進むと黄色い小さな花をさかせる「そけい」と同じ属です。いけばなでは、この「そけい」をよく使います。花材としては緑の葉をたっぷりつけた中に咲く下向きかげんの小さな黄色い花は初夏の花といってもいいでしょう。
黄梅の名がある、「雲南黄梅」という名の蔓そけいは「黄梅もどき」ともいわれ、長い緑の蔓が美しく、いけばなの展覧会で見かけることがあります。
ある時、花のついた蔓そけいだけを使い、大き目の鉢に水をたっぷりと張っていけ、美しい緑の線を自由自在に空間に遊ばせていた作品がありました。ほかには何の花材ももちいていない潔さが蔓そけいだけの持つ美しさを際立たせていて、きれいだなとみとれました。
黄梅が咲いているのを見ると、いよいよ冬に別れを告げ、その先にある春の様々な花たちの光景をやっと思い描くことがでるようになったと実感する頃なのです。(光加)