朝日カルチャーセンター カフェきごさい句会(五月)
新宿朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」。今月の兼題はサイトより、今月の季語「新茶」、花「牡丹」、浪速の味・江戸の味「くず餅」です。
【特選】
浜木綿のかをり遥かに紀伊水道 勇美
紀伊水道の地名がよく効いている。「浜木綿のかをり遥かや紀伊水道」もある。
つくばひに日差し揺らめく葛桜 勇美
夏の日差しの描写とひんやりした葛桜の対比が鮮やか。
余花の雨これより北に人家なし 勇美
さいはての地の、遅い春が過ぎてもいまだ肌寒い雨。
万緑を飲み干さんとぞ新茶かな 涼子
体の中まで青々としてくる新茶。原句は「万緑を飲み干してゐる新茶かな」。
若楓清らかな刻過ぎゆけり 涼子
若楓がゆらめくように過ぎてゆく時間。
ぼうたんに傘さす僧やうるはしき 涼子
牡丹ならではの一句。原句は「ぼうたんに傘さす僧や見目麗し」。
冷酒やざくざくなれば自づから 隆子
ざくざくという音がいかにも涼し気で酒もすすむ。「鱧のざくざく」の詞書が必要。
【入選】
黒揚羽結界門の辺りより 勇美
よけいな言葉がないすっきりとした姿がいい。
届きけり走り茶もかの掛川の 隆子
掛川茶を寿ぎ、夏を寿ぐ。
芳しき生命いただく新茶かな 和子
新茶の清らかさを表現。
山の宿鮎三匹の至福あり 弘道
鮎三匹とは豪勢。
花板の花のやうなる湯引き鱧 隆子
「花のやうなる」がことばの上だけで、いまひとつ像が結ばない。
葛餅屋ここの亭主は話し好き 守彦
いかにも下町の店主の様子が楽しい。
役割を終へし背広を虫干しに 弘道
定年か、新しい背広に座を譲ったか。しみじみとした一句。
宅急便新茶の香る五月かな 守彦
毎年の待ち遠しい便り。原句は「宅急便新茶の香り五月かな」。
くず餅の角の涼しく皿の上 光枝