カフェきごさい ネット投句(八月) 飛岡光枝選
花火散る河原の深き闇の中 和子
大花火の後の静寂。原句は「花火散る河原は深き闇の中」。
縁側に兄の籐椅子広島忌 弘道
あの日からずっとそこにある籐椅子。
よき人の訪ひ来たり冷やし酒 弘道
来る人も迎える人もよき人なり。人生のなかで幾度このような冷し酒がいただけるか。
【入選】
スコールの去りて虹の輪バナナ園 涼子
バナナワニ園というのもあるが、この句はバナナを収穫する農場ととりたい。夏の雨に洗われたたわわなバナナ。
揚花火終はりて月のやすらへり 涼子
花火の後の人々の心持をも描いた。
黒ちぬをさつと洗ひに涼新た 隆子
すっきりとした句の姿が新涼の佇まい。
白桃や皮引く指の香るかな 和子
皮を剥いているうちに指までも香ってくる白桃のみずみずしさ。原句は「白桃や皮剥く指の香りかな」。
獅子岩に荒ぶる獅子や大花火 勇美
海上花火だろうか、花火に照らし出される獅子。原句は「獅子岩の荒ぶる獅子や大花火」。
牛車引く水牛憩ふバナナかな 勇美
南国の昼下がり。原句は「バナナ生る牛車の水牛憩ふ庭」。
母来るや七十回目の盆用意 弘道
何十年経ても同じ思いの盆。「母来ると七十回目の盆用意」もあるか。