カフェきごさいネット投句(9月)飛岡光枝選
邯鄲の音もその姿も月が沈むとともに朝露に。繊細で印象鮮明な一句。
【入選】
空揺らすほのかに赤き薄かな 和子
「空揺らす」で広大な薄原が目に浮かぶ。
白川女脚絆きりりと今朝の秋 弘道
原句は「白川女きりりと脚絆秋の朝」。より緊密な季語(ことば)を探したい。
み仏の自愛の眼水の秋 弘道
原句は「み仏の自愛の眼差し秋日和」。前句と同様、よりよい季語の選択を。
百年の石臼の音走り蕎麦 勇美
重く、それとも軽々と、百年蕎麦を挽き続けている石臼。
秋高し牛も羊も放たれて 勇美
「牛も羊も」という大らかさがこの句では生きている。原句は「秋澄むや牛も羊も放たれて」。
始バスまで露の花野をひとり占め 勇美
「始バスまで」が少々説明的。このままでも句になっているが、上五の工夫でより広がりのある句に。
食べくらぶ浅間三宿走り蕎麦 隆子
句の勢いが蕎麦のうまさ。
あかあかと月も酔うたりましら酒 隆子
「あかあか」と酔うが近すぎる。「まろまろと」など。