浪速の味 江戸の味(十一月) おでん(江戸)
ちくわぶ・はんぺん・スジ[/caption] 肌寒くなると恋しくなる「おでん」。おでんの語源は「田楽」に「お」をつけた女房言葉からきていることはよく知られています。味噌田楽が主流だったなか、銚子、野田など醤油の生産地を持つ江戸で、鰹だし、醤油、砂糖で煮込んだおでんが作られ全国へ広がったといわれます。焼く手間がかかり味噌だれを別に用意しなければならない田楽より手軽な煮込みおでんは、単身者が多い江戸で屋台の食べ物として人気が出たとの説もあります。
東京のおでんの具材として特徴的なのは「はんぺん」「ちくわぶ」「スジ」です。関西で「スジ」といえば牛スジですが、東京では魚のすり身を使った練り物。小麦粉を練ってちくわ型にした「ちくわぶ」は静岡辺りを境に、関西ではなじみが薄い具材です。落語でちくわが無いから麩で代用したと悪口を言われる場面もありますが、東京では人気のおでん種です。
関西では「関東煮(かんとだき)」と呼ばれるおでんは、その土地土地で好みの味、具材で根付き、「静岡おでん」など広く知られるご当地おでんも登場しています。近年特に全国的な広がりを感じさせるのはコンビニエンスストアのおでんです。コンビニおでんの出汁は関西風の薄い色。関東風だと具材が見えにくいからでしょうか、東京のおでん屋さんの黒い煮汁の鍋を見るとそう思います。
コンビニが無かった子供のころは駄菓子屋さんや引き売り屋台での買い食いが楽しみで、赤塚不二夫さんの漫画「おそ松くん」のチビ太のように串に刺したおでんを食べながら遊んでいました。ちなみにチビ太の持っているおでんの具材は、上からコンニャク、がんもどき、ナルトだそうです。大人のおでんには「サザエさん」の波平のように、やはり熱燗でしょう。(光枝)
今朝雪を冠りし富士やおでん鍋 光枝