カフェきごさいネット投句(10月)飛岡光枝選
破れた猪垣を描くことによって、自身が置いてきたもの捨ててきたものへの時空を超えた哀愁の思いをも描いた。「まま」の力。原句は「猪垣の破れしままの故郷の村」。
ななかまど遥けき空に燃え上がり 和子
真っ赤に紅葉したななかまどを見ているうちに、遥かなる空間へ心がさ迷いでた。
鳴きかはす鵯の高音も水の秋 隆子
中七から下五への展開が鮮やか。水の面に跳ね返るような鵯の声。
【入選】
日向へと子らの蹴り出す石榴かな 勇美
暗い樹下から思いもかけず日向へ。無心な子らの残酷さ。
古里は大根引くころ船場汁 涼子
大阪でつましくも豊かに暮らす人が古里へ思いを寄せる一句。
角切りや軽々と鹿走りだす 弘道
「軽」に実感がある。原句は「角切られ走り出す鹿の軽さかな」。
空谷や桔梗一輪咲き残り 和子
秋から冬へ移ろいゆく谷間。