カフェきごさいネット投句(2月) 飛岡光枝選
原句は「あの山のあの谷の水が春の水」、この「が」の一文字で散文になってしまいます。「が」がいらないことに気づくには何度も声に出して読むことも有効です。リフレインが春の喜びを歌います。
【入選】
若き日の母と摘みたる木の芽かな 涼子
一緒に料理をした思い出。原句は「過ぎし日の母と摘みたる木の芽かな」ですが、この句の場合「過ぎし日」では説明。
深川めし江戸の名残りをぶつかけに 涼子
句の形はいいのですが「江戸の名残り」は常套句で新鮮さがありません。「深川めし江戸の勢をぶつかけに」など、自分のことばで色々考えてみてください。
深川飯振り売りの声なつかしき 隆子
「深川飯」は歳時記にはなく「浅蜊飯」が一般的ですが、この句も前句も「深川」がよく効いています。原句は「振り売りの声なつかしや深川飯」。
背の籠にのぞく花菜やあさり売り 隆子
浅蜊売が花菜も売っている様子。春らしい一景ですが「背の籠にのぞく」が少々冗長。「一笊は花菜を盛りて浅蜊売り」など。
立春の夕陽は富士の懐へ 和子
春が始まった日のことさらの夕陽。原句は「春立ちぬ夕陽は富士の懐へ」。