カフェネット投句(五月)飛岡光枝選
中七で切れる取り合わせの一句。上五中七はよく使われる慣用句ですが、鉄線の花を取り合わせるとこの言葉もいきいきと動き出すようで、俳句の力を感じます。「舞ひ」に、蔓の先でゆれる鉄線の花を思いました。投句は「てっせん花」となっていました。表記ご注意を。
【入選】
葉桜のトンネル抜けて一輪車 弘道
軽いスケッチですが、ことばに過不足がなく情景をよく描き出しています。
魚屋の呼び声高き初鰹 弘道
「高き」が初鰹によく響いています。
唖蝉の急にとび立つ哀れかな 守彦
「急にとび立つ」が唖蝉らしいですが、「哀れ」と「唖蝉」では少々付きすぎ。
屋号のみ紺に白抜き冷し酒 隆子
ことばが多くてごちゃついてしまいました。「のみ」も余計です。「白抜きの屋号はためく冷し酒」など。
茉莉花を髪にさしあふ母子かな 勇美
ジャスミンのやさしい香りのような一句。茉莉花はハワイではピカケと呼ばれフラの踊り子がよく髪にかざします。
山法師咲きて憩へる峠超え 涼子
「咲き」「憩へる」「超え」と動詞が重なるとうるさいと同時に主体が曖昧になります。「山法師咲きて憩へる峠かな」。
柔らかに土踏む音や岩鏡 和子
高山植物の岩鏡、重たい登山靴が岩鏡の花を労わるように乾いた土を踏みしめて行きます。「岩鏡土踏む音のやはらかに」。
鉄線花蔓蒼穹を巻き取りて 和子
言葉を詰め込みすぎて窮屈。より平易な表現を。「青空を巻き取る蔓や鉄線花」。
〇滑らかな語順や簡潔な表現により伝わるのが俳句です。思いがあってもそれをどのように俳句のリズムに乗せるか。身につけるには古典の名句を読み、暗唱するのが一番です(光枝)