今月の料理(10月)_菊膾
越後や山形などは秋になると菊を食べる。菊を食べるのはそれ程珍しいことはではないが、概ねは菊海苔といって蒸した菊を板状に伸ばして乾燥させたものが多いと思う。それらは、ちょっとした和え物の彩やお刺身のつまなどに用いられる事が多いが、こちらではちゃんとした一品として使う。
「柿のもと」「もってのほか」などの品種は濃い紫が美しい。よくみると花びらの一つ一つが筒状になっていて、それがとてもよい歯ざわりをもたらす。秋も深まり、周りの畑の景色が少し淋しくなった中で菊畑だけが花盛りだ。やはり摘みたては香りがいい。
沸騰した湯に色止めの酢を少々、サッと一煮立ちさせ水にさらす。絞ってから、胡桃合え、胡麻和え、彩りにほうれん草の緑を少し加えることもある。でも一番美味しいのは酢の物だろう。青梅を醤油につけた梅醤油に出汁を足し好みの濃さにした汁の中に菊を馴染ませる。さくさくと頂く度に秋が深まる。
1・菊は花の芯を残し、花びらをとってばらばらにする。 |
2・鍋にお湯を沸かし少々の酢をいれ。 |
3・沸騰したら先の花びらを入れ、サッと茹でる。 |
4・茹で上がった菊を笊にあげ、水に晒して軽く絞る。 |
5・好みによるが、二杯酢か三倍酢で頂きます。 |
6・ここでは醤油に青梅を漬けた梅醤油を出汁で割って用いています。 |
唇のつめたさうれし菊膾 松根東洋城
東京をふるさととして菊膾 鈴木真砂女
星屑の冷たさに似て菊膾 大木あまり