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    (投句一覧)
    1 富士の背は火焔のごとき寒夕焼
    2 空まさを真つ逆さまに寒の底
    3 手袋のままに手握る別れかな
    4 ほんたうの鬼のゐる世や豆を打つ
    5 テレビより砲声聞こゆ我炬燵
    6 夫とゆく初めての宇治風花に
    7 リビングのひとりに広き余寒かな
    8 金銀に染めて柳の門飾り
    9 山眠る長逗留の湯治宿
    10 永き日や橋より橋を眺めをり
    11 冬ぬくし島にひとりの郵便夫
    12 東京に生きて冬芽に励まされ
    13 願掛けのかはらけ投げて春を待つ
    14 着ぶくれて乗換駅に迷ひけり
    15 はればれとマスク外して初湯かな
    16 小寒や秩父宮は着膨れて
    17 あの角を曲がればミモザ明りかな
    18 顔見世がはねて木屋町筋の店
    19 黒々と大地脈うつ野焼あと
    20 追羽根やはつしと返し恋仇
    21 丹頂の舞ふ蓋とりて雑煮餅
    22 窓越しの猫に挨拶春浅し
    23 立春や燈台の灯のやはらかし
    24 羽ばたいて白鳥はげしく争へり
    25 汐待ちの一人きてゐる雛の市
    26 装ひてアフタヌーンティ春隣
    27 ふんはりと春泥に墜つ紙ひかうき
    28 コンビニや運動靴に春の泥
    29 息白し既読スルーのスマホ閉じ
    30 春めくや指美しきピアニスト
    31 眼つむれば流氷の押し寄せる
    32 丁稚やうかん売つて軒端の梅三分
    33 初参り礼深くなり長くなり
    34 左義長や頬の火照りに団子焼く
    35 次々に春泥踏んで帰還兵
    36 風花す朝比奈越ゆれば父母の墓