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カテゴリーアーカイブ: 今月の花

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今月の花(三月)柘植の花

caffe kigosai 投稿日:2026年2月28日 作成者: mitsue2026年2月28日

和柄の赤い布のケースにいれられた柘植の櫛。それは初代家元の奥様に頂いたものです。何かの集まりにその場にいた女性全員にくださいました。晩年は車いすでしたが豊かな白髪を後ろで短くちょこんとまとめられ、付き添いの方の手をかりて本部の会館にお出ましのところを何度かお目にかかりました。

柘植の櫛は手入れがよいと一生ものと言われます。柘植の枝をいけてみて、その意味がわかる気がしました。見た目が細いわりに鋏を入れると固く、四画い断面は緻密です。なるほど印鑑や彫刻にも使われる理由もわかります。

柘植はツゲ科のツゲ属で高さは5メートルにもなるそうですが、私は家の庭に植えられていたおよそ1メートルくらいのものしか見たことがありません。光沢のある1センチちょっとの卵型の葉が特徴で、春には枝先に小さな薄黄色の花が咲きます。

柘植の花は一個の雌花の周りを雄花が取り囲んでいてあまり目立たないそうで、家の柘植の花には気が付きませんでした。葉の付け根や枝先にまとまって咲くそうです。

柘植の枝が固いこと、枝分かれが多いことから、枝をまるごと漂白して刈込み、丸い形にして柘植玉と呼びいけばなの大作に使うこともあります。

柘植の櫛の手入れには椿油がいいといわれます。105才までしっかりしていらした、大奥様と呼ばれた初代家元夫人の見事な白髪は柘植の櫛で整えられていたのでしょう。

会館でお目にかかった時の車いすからの呼びかけはいつも「あなたたち、勉強してる?しないと止まるわよ!」

柘植の櫛を手に取るたび、あの声が聞こえてきます。(光加)

今月の花(二月)辛夷と木蓮

caffe kigosai 投稿日:2026年1月25日 作成者: mitsue2026年1月25日

辛夷

木蓮

(今月は2018年2月のエッセイをお届けします)

春浅いころ銀色の毛を密生した花芽を見つけたら、それは辛夷かもしれません。その形が、にぎった小さな拳に似ているところから名づけられたともいわれています。

枝は真直ぐなものが多く、花は元に一枚小さな葉をつけて開きます。細めの六枚の花弁は薄く傷つきやすいので、私たちは注意していけます。白い花は開ききると中の芯の部分まで見せて、やがて散っていきます。

辛夷に少し遅れて、木蓮が大きな花を開きます。木蓮というと通常は紫木蓮のことをさし、花弁は外が濃紫で中は薄紫です。色の濃いものは、からす木蓮と呼んでいます。

春の灯がともったような白木蓮も街路樹や庭木として目を楽しませます。木蓮の花は上を向いて咲き、辛夷と比べればいずれも花びらが厚く、長さは十cmくらいになります。木の高さは十五mにも伸び、散歩道で白木蓮の小舟のような形の花びらが落ちているのをみつけると、どこから舞い降りたのだろうと思わずあたりを見上げます。

草月の初代家元と二代目家元が厚い信頼を寄せていた秘書の方とお話をする機会があったのはもう何十年も前でしょうか。彼女のいける花は花材の取り合わせに、華麗さと同時に繊細さも備えていて大好きな作家でもありました。

辛夷の花と彼女を囲んで何人かで話をしたことがありました。その折「辛夷の蕾の先は北を向いているのよ」と言われてもすぐには理解できませんでした。

辛夷や木蓮の蕾は、日の当たる暖かい南側に芽の一部が膨らみ、先はその反動からか反対の北をさすというのです。
そういえば目の前の辛夷の芽の先はそろって同じ方向を向いていました。え!本当ですか?知らなかった!と私も声をあげた一人でした。

山の中で道に迷い、コンパスを持っていなければ辛夷や木蓮の花芽を見よ、というのでしょうか。辛夷と木蓮は[方向指標植物]またはコンパスプラントと呼ばれ、赤目柳などもこの部類に入るのだそうです。

花をいける事の背景には大きな自然のルールがどっしりと存在していることをいまさらながら実感し、辛夷や木蓮の花が花芽をたくさんつけた開花前のまさにその時期を、大自然の中でめぐりあって確かめたいと毎年思っています。(光加)

今月の花(1月)南天

caffe kigosai 投稿日:2025年12月25日 作成者: mitsue2025年12月31日

福島光加 作

お赤飯にその葉が添えられていたり、庭の鬼門とされる方角に植えられていることで南天に出会うことがあるかと思います。これは、南天が<難を転じる>ということで縁起の良いとされる植物のひとつだからです。

お正月には赤い実のつく南天(Nandina domestica)をいけることが多くあります。白南天という白い実をつける南天もありますが、こちらの葉は紅葉しません。

17世紀に渡来したと言われるヒイラギ南天(Mahonia japonica)と言われる種類は、光沢のある葉がヒイラギのようにとがっています。南天と言われますがこの種類は学名にNandinaがつかず、先の南天とは違い、黄色の小さな花が咲きます。

ヒイラギ南天(門下の作品)

秋になると、枝の先に放射状についた黄褐色や紅色の葉が目を引きます。中心にある7ミリ程の粉をふいたような黒紫の実に注目!この秋の展覧会では、繊細な花びらの糸菊といけた門下がいて、季節感を強調した作品となっていました。

また細羽ヒイラギ南天と言われるものは、いけばなをいける方なら岩南天という名でおなじみでしょう。

新年、我が家は赤い実をつけた南天をいけてみたいと思っています。飾るところが問題、と初心者の若い方がおっしゃるので、実南天と言って、南天の実だけを若松一本とドアに飾ったらいかがかしら?水を入れる小さなチューブに生のお花を一、二本いれ、水引きをかければお正月を迎えられますよ!!

私たちの流派のいけばなは、レリーフといって壁に制作するレッスンも教科書にはあります。それをいかすチャンスではないでしょうか、と。

南天をたくさんいけ、もし難が押し寄せたら南天を味方に、幸いに転じる年にしていこう、と思っています。

皆様も健康に気を付けられて、2026年が良い年になりますように。(光加)

今月の花(十二月)いいぎりの実

caffe kigosai 投稿日:2025年11月19日 作成者: mitsue2025年11月19日

iigirinomi
(今月は2013年12月の「アラカルト」へ掲載のエッセイをお届けします)

明るい朱色の房になって垂れ下がるいいぎりの実は、ひときわ華やかな晩秋を演出します。いいぎり(飯桐)と呼ばれるのは、昔その大きめの葉にご飯を包んだり、盛ったりしたからといわれています。日本の中でも西では(いとぎり)ともよばれるそうです。

南天桐という別名は、艶やかな丸い実が南天の実の色と形に似ているからでしょう。この実をつけている季節は、木が10数メートルに達する高さであることもあって一段と目立つのですが、それは人間だけでなく鳥とて同じ。遠くから実をながめて楽しもうと思っていた矢先、そこにあったはずの実が下がっていない!

―――花材として綺麗なままをとろうとすれば、そりゃできる限りの高さに鳥よけの網をかけて、実を守るしかないからねーーーいけばなの枝をたくさん扱っている花屋さんの話です。長ければ20センチ近くの房になり、実は秋が深くなるまで枝に残っています。大きな葉がなくなってしまえば、元の枝から切り取って水につけなくても、実は急に落ちたり、表面の皮がすぐにはしおれる事は少ないでしょう。こんな理由もあって、この時期の花展には花材としてよく見かけられます。

木肌は確かに桐に似ています。桐から下駄やたんすが作られるのは他の木と比べると軽めだからといわれますが、この南天桐も実がついているわりに、持ってみると想像していたより軽く感じられます。

実に充分に陽が当たるように、という植物本来の持っている知恵でしょうか、枝は真っ直ぐ羽を広げたように伸びています。そこに下がる房の間隔は隣の房にあまり邪魔にならないよう、絡む事のないよう、うまく配置されているかのように見えてくるのです。

夏も終りのころのいいぎりを見た事があります。その緑の実からは、秋も深まったころの豪華に垂れ下がった姿はあまり想像できません。熟していないため実の形もほっそりとしています。でもこれはこれで面白く、魅力があります。朱赤ではなく白い実をつけた(いいぎり)もあるということですが 私はまだ見たことはありません。

もしもこの時期、いいぎり南天を幸運にも見かけることができたら色と形をじっくり観察してみてください。毎日の散歩の途中、すこし首を伸ばして上をみて探してみてください。都会の真ん中でもいいぎりは意外と回りに見つかるかもしれません。鳥たちに先を越されなければ、ですが。(光加)

今月の花(十一月)かくれんぼく

caffe kigosai 投稿日:2025年10月27日 作成者: mitsue2025年10月27日

kakurenbo
(今月は2013年11月の「アラカルト」へ掲載のエッセイをお届けします)

仕事のため大阪に行くことになり、現地の紹介された花屋さんに電話をしました。そこですすめられたのがこの、かんれんぼく、でした。「かんれんぼく?どんな字をかくのですか?」

いけばなの手ほどきを受けた時から数えれば、半世紀以上はたっている植物とのかかわりですが、まだまだ知らないものが外国はもちろん、国内にも数限りなくあります。当日は楽しみに大阪入りをしました。

かんれんぼくは「旱蓮木」と書くそうです。花屋でごつい茶色の紙の中から取り出されたのは、葉がなくて実だけとなったものでした。赤や黄色の実がなる植物が多い時期に、きれいな薄い緑色をした実がとても新鮮に見えました。しかもよく観察すれば、青い小さなバナナの房のようなものがいくつも集合して一つの球を作っているのです。さわるとパラリと落ちた(ミニバナナ)のひとつを拾って手にとってよくみれば、しっかりと3つの稜がありました。

ひとつの枝から分かれた細い枝の先にいくつもぶら下がっているところは、緑の大小の惑星が宙に浮かんで漂っているような楽しい光景です。宿にもって帰り、この(ミニバナナ)のひとつを輪切りにしてみました。つっと入っていく刃の先に、少しだけ手ごたえのある核があるのが本当の種かもしれません。やがては全体が茶色になっていくのでしょう。生命力の強いかんれんぼくは薬用としても研究されていると聞きました。

10メートル以上にもなる木は、葉脈のはっきりした、つやのある大きな緑の葉をつけます。遠目には、やつでの花の形にも似た、白に近い薄緑の花をつけたところを、来年の夏にはみてみたいものです。かんれんぼくは中国南部の原産。バナナ状の実にたくさんの種がある事が子孫繁栄をあらわすからでしょうか、別名は(喜樹)。「Happy Tree (ハッピーツリー)」という英名もあります。確かに実を見ているとハッピーな気分になります。

せっかちな人間たちがそろそろクリスマスを意識しだす頃、自然もつられてクリスマスのオーナメントをつくってみたような、そんなメッセージさえ感じさせる丸いかんれんぼくの実が、この季節にはさがっているのです。(光加)

今月の花(十月)すすき

caffe kigosai 投稿日:2025年9月27日 作成者: mitsue2025年9月28日

susuki
(今月は、2013年9月の「花」に掲載されたエッセイをお届けします)
秋の七草のひとつである尾花、すなわちススキの原産地は日本。葉は一般的な緑の他、園芸種では横に薄い黄の斑のはいった(タカノハススキ)、また縦縞の(縞すすき)などがあります。穂がつんと出て開き、たれれば風になびき、やがてほうけ、折々に表情を変えていきます。

昨年10月、ローマで開かれる和食を広める夕食会にぜひいけばなを、という依頼が日本大使館からありました。外国でいけばならしいくいけるとなれば、いけばなの3つの要素、つまり、線、色 塊のうちなんといっても線のものが必要です。大使公邸の庭で、代々の11人の大使に仕えたイタリア人庭師のIさんの案内でさまざまな枝を入手。最後に穂の出たススキを大きな株からたくさん切らせていただき、葉が丸まらないようにすぐに古新聞に包み、水を入れたバケツにつけました。

会場は今では元貴族のプライベートなクラブとなっているボルゲーゼ家の館。内部の写真は絶対撮ってはならぬと何度も念をおされました。ローマの町に陽の落ちはじめる頃、天井の高い声のよく響く二階の会場に花材をもって入ったとたん、豪華な調度や気をつけてといわれた大きく下がったシャンデリアより、吸い寄せられるように目がひきつけられたのは正面の一枚の肖像画。100号くらいのキャンバスに描かれていた人物は、白い羽織とはかまをつけ、髷を結い上げている、まさしく日本人でした。外国の画家の筆によると日本人の目は細く描かれがちですが、その人物は丸い目でこちらをじっと見ているように思えたのでした。

(支倉常長の肖像画といわれています。ここローマに滞在中に描かれたそうです。)

それはまったく予期せぬ名前でした。
400年前に石巻の月浦をたち、メキシコへ、そののちスペイン、ローマと渡っていった支倉常長ひきいる慶長遣欧使節団。何故この館に支倉の肖像画があるのかは私の知識ではすぐには理解できませんでした。人物の白い袴には草のような植物が描かれていて、遣欧使節団は、斬新なデザインのものを用いたことでも有名な伊達政宗の特命をうけたことを思い出させました。

ともかく元貴族の皆さんの集まってくるカクテルの始まる30分前には花を仕上げなくてはなりません。ヨーロッパと日本から集まってきてくれた私の生徒とご主人たちも加わり,ちょうど支倉の肖像画を両方から挟むように竹を立て花をいけると、まるで肖像画に献花をしたようになりました。葉のふちで手を切らないようにいれたたくさんのススキは、その葉の線で繊細な動きを作品に与えていました。

テーブルの上にもなにか、というシェフの突然の要望が出たときはすでに花器を全部使用したあとでした。急遽公邸の古くなった漆塗りのお盆をもちこみ、水を張って日本から何かの折に使うかもと持参した金箔を浮かせその水の面にススキを渡し、菊の花を浮かせました。

今年になってのこと、伊達政宗の特集があるということでテレビをつけた私は、思わず画面に釘付けになりました。支倉常長がローマ法王にと伊達政宗から預かってきた親書が映し出され、紙には政宗の筆に金箔や退色していたものの銀箔がちりばめてありました。その親書を入れていた文箱は黒い漆塗りで、大胆な構図で牡丹に唐草、そして線は細いけれどススキが露をのせて描かれていたのです。その箱にはあとからつけられたであろう茶色になった紙がタグとしてついていました。一瞬でしたが記された字を私は見逃しませんでした。(Borghese)その文箱はボルゲーゼ家の所有だったということに間違いありません。

私がいけた場所は、あちこちにいくつもあるとはいえ、まさにローマの中心にあるボルゲーゼの館そのものでした。(当時の法王パオロ5世はボルゲーゼ家の出身なので、ボルゲーゼ家が文箱をもっていたことは十分ありうるでしょう)と、大使館の若き優秀なイタリアの専門官が説明してくれました。

洗礼をうけた支倉常長はその後日本に帰りますが、そのときキリスト教は禁止されていました。彼は50代のはじめ失意のうちにこの世を去った事になっています。しかし一説には、彼はその後人里はなれたところで30年も生き延びたとも言われています。

ヨーロッパにいたときは、彼はきっと抑えられないくらいの好奇心をもって世界を見ていたのにちがいありません。だから実際にあんな丸い目の印象を画家がもったのでしょうか。それとも何百年もの間、絵の中の常長は日本のいけばなを捧げられた事がなかったので、驚いていたのかもしれないと私は勝手な推測を巡らせたのです。    

ススキは銀色の穂もほうける頃になると、芒と書いたほうがふさわしく思えてきます。しかし文箱に描かれた金の薄は枯れはてて(芒)となることはなく、これからもあのままに、そして大切に保管されるのに違いありません。

ローマのススキが支倉常長へ、彼をつかわした伊達政宗へ、そしてあの時代へと、興味と好奇心の道をつけてくれました。支倉常長から、400年後の私にメッセージがとどけられた気さえします。

かの肖像画の衣装に刺繍された植物もススキと聞くと、支倉常長はやはりあの晩、あの場の花材にどうしてもススキをご所望だったのではないでしょうか。そんな気がしてきます。(光加)

今月の花(九月)おおうばゆり

caffe kigosai 投稿日:2025年8月23日 作成者: mitsue2025年8月23日

福島光加作(おおうばゆり、オクラレルカ、ミスカンサス)

夏の帯広のホテルでの撮影の際、カメラマンのMさんが「もうそろそろ終わりだけど」と言いながら、この土地ならではの花材を切ってきてくださいました。

うす黄緑の鉄砲百合のような形の花を8輪ほどつけたその花は、「おおうばゆり」でした。花は横にそれぞれの方向に向いていました。東京の花屋さんで「うばゆり」なら一度だけ見たことがあります。関東から西の常緑樹の中に育つのが、うばゆりです。

おおうばゆりも多年草で、本州の中部から北海道、樺太にもあり、こちらは落葉樹の中で生育するそうで、2メートルにもなるとか。

「姥百合」という名は、茎の下の方に対生している厚みと光沢のある細長い卵型の葉が、花が咲くと朽ちてなくなってしまうので「葉(歯)がぬけていく」のが姥の歯のよう、ということが由来とのことです。が なんだか拍子抜けする命名の理由は本当でしょうか?アイヌの方たちは、鱗茎に含まれる澱粉を大事な食料として球根を輪形に乾かして保存食としたようです。

雌雄がある、というのも興味深いです。雄のおおうばゆりは発芽して数年後にふとい茎となり、時には二十もの花をつけ、花が散ると種の入った蒴果をつけて、立ち枯れするそうです。この蒴果は長く丸みをおびていて、うばゆりのほうだったかもしれませんが一度東京の花屋で見たことがあります。

一方雌は茎や花を持たず、球根の鱗茎の先端に一枚ずつの葉をもつ、と書いてあり、帯広市の図書館で私は思わずうなりました。想像はますます膨らみ、不思議なおおうばゆりのことをもっと知りたくなりました。

複雑な植物に敬意をこめて、ホテルの寿司カウンターにこの花を使って一作いけました。明日も部屋に置いて眺めてみたい、と思いましたが花はすでに茶色くなり始めていました。

北海道帯広でいける機会に恵まれたおおうばゆりにすっかり魅せられ、植物との出会いはつくづく面白いと思ったのです。(光加)

今月の花(八月) 番外編・いけばなと俳句

caffe kigosai 投稿日:2025年7月23日 作成者: mitsue2025年7月24日

Liisa Nurminen 作(フィンランド)
 

Sandra Marker 作(オーストラリア)

昨年、フィンランドでのいけばなワークショップで、英語とフィンランド語に訳した芭蕉の俳句から考えを飛躍させ作品を作るという試みを参加者にしてもらいました。俳句に詠まれたものの再現ではなく、その中から各自強くひかれた点を、目の前の花材の特徴を見極めて作品としてあらわすのです。私の海外とのオンラインクラスでは、数十年いけばなに携わっている師範たちにも時々この俳句と花のかかわりの課題を出しています。

草月の本部からの私のオンラインクラスは、日本在住の会員のためのものでした。先日、あえて地球の北半球と南半球に住んでいる二人、オーストラリアとフィンランドの門下を選びこの試みを紹介しました。その時はドナルド・キーンさん英訳の芭蕉の句、そして山頭火の句をとりあげました。

四十年近く私の門下であるリーサは、フィンランドで数か所の町でいけばなを教えています。日本にはほぼ毎年来ていて万葉集や書の勉強もしています。「じゃ、あとでね!」というと(ワレテモスエニアワントゾオモウ)などと言ってびっくりさせます。

夏草や兵共がゆめの跡 芭蕉

写真はこの句を元とした作品で、黒いものは馬鍬だそうです。毎夏行く自分たちのサマーハウスの近くで見つけたものでしょう。もう使われてはいないけれど、昔動いたその音が聞こえてきそうです。枯れた花材はサマーハウスの近くの草むらからでしょうか。

北半球に住むリーサに対して、真逆の季節の南半球、オーストラリアのサンドラもいけばなクラスをたくさん持って活躍しています。彼女には種田山頭火の句を選びました。

分け入っても分け入っても青い山 山頭火

送られてきた作品は初めは下の緑の部分が少なかったので、迫力がもう少し欲しいと思い緑を加えてもらいました。

何十年ものキャリアがあり、どこか自分の表現に物足りなさを感じた時、俳句は全くほかの方向からIkebana artistたちの感性に揺さぶりをかけてくれるのでは、と私は思っています。(光加)

今月の花(七月)おおでまり

caffe kigosai 投稿日:2025年6月22日 作成者: mitsue2025年6月25日

帯広の北海道ホテルに花を飾る展覧会は昨年に続き3回目。正面でお客様をお迎えする花は竹を使って床からいけ、3メートル近くの高さに。レセプションには、季節の花を華やかに。一方、私の門下とその門下は、棚の上、廊下、柱の前、カウンターの上などにいけ、レストランへ行く絵が飾ってある廊下の壁は数名の合作で、青竹の筒にいけられた花が10作ならびました。

昨年とほぼ同じ時期の開催のため、同じような種類の植物をいけるのはできるだけさけたいと思いました。しかし、遥か十勝の山々を駆け上がっていくあふれんばかりの緑の中で、使える花材はわずかです。本州に比べると北海道はいけられる樹木の種類が少ないようで、またうっかりついている虫などをホテルに持ち込むことはご法度です。去年は、高さ2.5メートルの満天星つつじ3本を花屋さんを通じてオーダーした結果、私の帯広への航空運賃より高くつきました。今年の開催日を少しずらしたのは、母の日に近づくと花が値上がりするからです。

「使えたら、どうぞ!店のお客さんのお花の先生の庭にたくさん咲いていて、使っていいと言われたので切ってきました」と花屋さんがみせてくれたのは「おおでまり」でした。この季節の丸く白いボールのような花には、白いアジサイ、そしてもう少し早い時期には、フレッシュな緑から白へ移る小花の塊を見せるスノーボールと呼ばれるビバーナムがあります。おおでまりと同じスイカズラ科で洋種潅木とも呼ばれていますが、違いは葉が3か所さけているところです。葉が楕円形で葉脈がはっきりしているおおでまりと区別できます。

緑の葉に清々しい白い大きな毬のような花は、枝を手に取るたびに細い枝の先で頭をくるりと振って数輪の白い小花を散らします。花が咲くと頭が重くなるからでしょうか。その柔らかな曲線が魅力ではあるものの、会期終了まで花は持つのだろうか。枝の元を水切りの後でたたき、ミョウバンをしっかりと擦り込みました。

展覧会の2日間、おおでまりは同時にいけたどの花より涼感を与える白の持つ美しさをしっかりと保っていました。北海道では育たない青竹を千葉から取り寄せ、その直線と良いコントラストをみせ、旅のお客様を迎える使命を果たしました。

帯広は農業が盛んです。そして人は優しいと、訪れるたびに思います。北の大地に育ったおおでまり、その本当の底力を見た思いをしたのでした。(光加)

今月の花(六月) かなめもち

caffe kigosai 投稿日:2025年5月21日 作成者: mitsue2025年5月21日

この季節、生垣でよく見かける「かなめもち」。新緑も濃くなった中で赤い輝くような葉が目立ちます。そういえば、この花材がお稽古に出てくることは今まであったかしら、と記憶をたどってみました。

花鋏で切ってみると枝の細さに比べて思いのほか固いことがわかります。かなめもちの名の由来は扇のかなめに使われたからという説もあります。材質がしっかりしていて、扇を束ねるのに適しているのでしょう。

初夏のお稽古では、枝物は他にも「梅花ウツギ」「ななかまど」「エボタ」などがあるのですが、ひときわその赤い葉の色が目を引きます。その赤の下にうっすらと緑を隠していると思ったのは、もう少し経つと赤い葉は緑になっていくからです。そして、小さな5弁の花びらを持つ白い花が集まって咲きはじめます。

枝の物をいけばな用に生産する人たちは、高齢化、そして世代交代のためにその数を減らしています。お稽古の後、枝が大きいと飾るところがないからと枝を切って持って帰る人もいます。生産者の苦労を知っている、枝好きな私としては心が痛みます。

仏さまにも見せたいからと短く切ってお仏壇に小さく飾る人は良しとしましょう。こじんまりした家でも、床に何かを敷いた上に花器を置いて枝を大きくいけ、家族やお客様を迎えてもいいのでは?職場に持っていって楽しんでいただくこともできるのでは?もっと飾る場所をさがしましょうよ、と呼びかけたい思いがあります。

かなめもちの枝は水の中で切り、切ったところをたたいて割っていけます。一度水が上がると、フレッシュなまま、長持ちします。

それぞれ置かれた空間の中で、人々をつなぐかなめの役割をこのバラ科の花材のニューフェースに期待しています。(光加)

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「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十六回 2026年3月7日(土)13時30分
    (3月は第一土曜日・7日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

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スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
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