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第二十七回 カフェきごさいズーム句会報 (飛岡光枝選)

caffe kigosai 投稿日:2025年7月12日 作成者: mitsue2025年7月12日

第二十七回カフェきごさいズーム句会(2025年(令和七年)6月14日)の句会報告です。(  )は推敲例。
「カフェきごさいズーム句会」はどなたでも参加できます。見学も大歓迎。詳しくは右の案内をご覧ください。

第一句座              
【特選】
イアーゴのたじろぐ白や朴の花       悠
ソーダ水みんな哀しく美しく        真樹子
(ソーダ水昭和哀しく美しく)
わが髪のうねりいよいよ梅雨入りかな    京子
若き日のヴィトンのバッグ黴にやる     美津子
【入選】
老鶯応ふや夫の口笛に           桂
(夏鶯応ふや夫の口笛に)
呼ばれても聞こえぬふりの端居かな     真知子
花南天かすかな風か零れけり 悠
家々の麦飯旨き芒種かな          龍梅
(わが家の麦飯旨き芒種かな)
夏闇に寝る一瓶の梅酒かな         京子
(一瓶の梅酒の眠る夏の闇)
梅雨寒し背番号3旅立ちぬ         光尾
(荒梅雨や背番号3旅立ちぬ)
田植ゑ終へ煙草喫ふ父背の大き       光尾
(煙草吸ふ父の背大き植田風)
これからも二人きりなる冷蔵庫       真樹子
(これからも二人きりなり冷蔵庫)
こどもらはカープデビューよ夏帽子     京子
家中の時刻まちまち時の日よ        光尾
(人類の時刻まちまち時の日よ)
あたらしき夏へ開かん能登の海       京子
(あたらしき夏へ漕ぎ出す能登の海)
骨のかけら珊瑚のかけら沖縄忌       雅子
尾山祭気負ふしんがり能登キリコ      淳
便りまず紫陽花色づきしことを       京子
(便りせん紫陽花の色づきしこと)
半袖の子の腕細し更衣           雅子

飛岡光枝出句
鱚釣りて父の機嫌や酒一合

第二句座(席題・鯰、籐椅子)
【特選】         
人の世を笑ひて不動鯰かな        光尾

【入選】
籐寝椅子からだ横たふるに足りず     京子
この川に鯰ゐるとかゐないとか      京子
ひと風呂の汗ひいてきし籐の椅子     美津子
縄文の色とも思ふ鯰かな         真樹子
(縄文の色して静か大鯰)
空き家なる縁側の主籐の椅子       悠
(空き家なる縁側にゆれ籐の椅子)
籐椅子に雲の曼荼羅見てをりぬ      真樹子
(籐寝椅子雲の曼陀羅見て飽かず)
梅雨鯰泥に潜れて憩ひける        龍梅
(梅雨鯰泥に潜りて眠りけり)
籐椅子を猫に譲りし昼下り        さゆり
(籐椅子を猫に譲りて父の昼)
破れたる父の籐椅子捨てられず      真知子

飛岡光枝出句
中華包丁つるりと逃れ梅雨鯰
  

浪速の味 江戸の味 七月【冷し酒】(浪速)

caffe kigosai 投稿日:2025年7月7日 作成者: youko2025年7月9日

江戸積銘酒名寄

日本酒の歴史は古く、3世紀頃に大陸から稲作の伝来とともに伝えられ、お米からお酒を造り飲酒を楽しんでいたという記録があります。

兵庫県は酒造業が盛んであり、県内各地に66の酒蔵があります。「灘の生一本」で有名な日本一の酒どころ灘五郷(今津郷・西宮郷・魚崎郷・御影郷・西郷)は、江戸時代には日本一の酒どころと言われるようになりました。それに先んじて、まず伊丹で酒造りが盛んになりました。伊丹といえば大阪・伊丹空港があり、大阪に隣接しています。元禄十年(1697年)、伊丹の蔵元のうち、二十四軒に名字帯刀が許され、江戸幕府の「官用酒」となり、これを「御免酒」と称しました。一般の酒屋とは区別され格式高いものでした。新酒が江戸積され幕府に献上されるまで。他の酒は町中に販売できなかったそうです。その中でも「老松」は最も格式が高く宮中奉献酒として、将軍の御膳酒として有名でした。現在、伊丹では二つの酒蔵のみとなりました。その一つが、元禄元年創業の御免酒「老松酒造」です。元禄年間(1688年~1703年)に江戸で版行されたという「江戸積銘酒名寄」では、伊丹の「老松」は堂々東方の大関として載っています。横綱はないので、トップの評価です。阪急伊丹駅、JR伊丹駅から徒歩5分くらいのところに「老松」の紺暖簾がかかった店があり、先日立ち寄りました。暑い夏には冷し酒が飲みたくなります。おすすめの御免酒「純米吟醸」を買いました。お酒に強いわけではないのですが、すっきりと美味い冷し酒に暑気払いをした気分になりました。

句会終へこれぞ老松冷し酒   洋子

カテゴリー: à la carte (アラカルト), 浪速の味 江戸の味

今月の花(七月)おおでまり

caffe kigosai 投稿日:2025年6月22日 作成者: mitsue2025年6月25日

帯広の北海道ホテルに花を飾る展覧会は昨年に続き3回目。正面でお客様をお迎えする花は竹を使って床からいけ、3メートル近くの高さに。レセプションには、季節の花を華やかに。一方、私の門下とその門下は、棚の上、廊下、柱の前、カウンターの上などにいけ、レストランへ行く絵が飾ってある廊下の壁は数名の合作で、青竹の筒にいけられた花が10作ならびました。

昨年とほぼ同じ時期の開催のため、同じような種類の植物をいけるのはできるだけさけたいと思いました。しかし、遥か十勝の山々を駆け上がっていくあふれんばかりの緑の中で、使える花材はわずかです。本州に比べると北海道はいけられる樹木の種類が少ないようで、またうっかりついている虫などをホテルに持ち込むことはご法度です。去年は、高さ2.5メートルの満天星つつじ3本を花屋さんを通じてオーダーした結果、私の帯広への航空運賃より高くつきました。今年の開催日を少しずらしたのは、母の日に近づくと花が値上がりするからです。

「使えたら、どうぞ!店のお客さんのお花の先生の庭にたくさん咲いていて、使っていいと言われたので切ってきました」と花屋さんがみせてくれたのは「おおでまり」でした。この季節の丸く白いボールのような花には、白いアジサイ、そしてもう少し早い時期には、フレッシュな緑から白へ移る小花の塊を見せるスノーボールと呼ばれるビバーナムがあります。おおでまりと同じスイカズラ科で洋種潅木とも呼ばれていますが、違いは葉が3か所さけているところです。葉が楕円形で葉脈がはっきりしているおおでまりと区別できます。

緑の葉に清々しい白い大きな毬のような花は、枝を手に取るたびに細い枝の先で頭をくるりと振って数輪の白い小花を散らします。花が咲くと頭が重くなるからでしょうか。その柔らかな曲線が魅力ではあるものの、会期終了まで花は持つのだろうか。枝の元を水切りの後でたたき、ミョウバンをしっかりと擦り込みました。

展覧会の2日間、おおでまりは同時にいけたどの花より涼感を与える白の持つ美しさをしっかりと保っていました。北海道では育たない青竹を千葉から取り寄せ、その直線と良いコントラストをみせ、旅のお客様を迎える使命を果たしました。

帯広は農業が盛んです。そして人は優しいと、訪れるたびに思います。北の大地に育ったおおでまり、その本当の底力を見た思いをしたのでした。(光加)

今月の季語(七月) 暑し  

caffe kigosai 投稿日:2025年6月20日 作成者: masako2025年6月22日

〈薄暑〉は初夏、〈極暑〉〈溽暑〉〈炎暑〉は晩夏の季語です。〈暑し〉はこれら一切を合わせた総称です。春の〈暖か〉、秋の〈冷やか〉、冬の〈寒し〉に対する、夏の体感を表す季語です。

手の平にひたひをささへ暑に耐ふる    阿波野青畝

世にも暑にも寡黙をもつて抗しけり    安住 敦

明治生まれの二人です。青畝は打ちひしがれているようであり、敦は憤って真っ赤になっていそうです。「暑」とあるのみですが、「薄」であろうはずはなく「極」や「溽」が籠められていそうです。

電柱の影一本の暑さかな             森川光郎

電柱のほかに影は無いのです。田や畑の中の一本道でしょうか。炎天下と言ってもよさそうな場所を、自分の影を曳きながら歩いて行くさまを思います。

暑きゆえものをきちんと並べをる       細見綾子

暑に耐へて話の筋は通すべく         三村純也

こちらは姿勢の正しい二人です。心頭滅却せよと喝を入れられる心持ち。そうしなければ負けてしまうほどの暑さでもあるのです。

マヨネーズおろおろ出づる暑さかな    小川軽舟

対してこちらは、もうどうしようもないよ~と両手を挙げているような句。作者自身は筋金入りのビジネスマンですが、敢えて掛金を外したような詠みぶりが面白いです。

あれほどの暑さのこともすぐ忘れ       深見けん二

喉元過ぎれば、ではありませんが、忘れたい体感は過ぎてしまうと忘れるものかもしれません。けん二も、我ながら現金と思っていそうです。

そうした最中なればこそ、ふとした折に覚える涼しさに身も心も生き返る心地となります。〈涼し〉は〈暑し〉ゆえに生きる季語です。

此あたり目に見ゆるものはみな涼し    芭蕉

涼しさや鐘をはなるるかねの声        蕪村

皮膚で感じるだけでなく、視覚や聴覚で捉える涼しさもあります。

一筋の涼しき風を待ちにけり         大峯あきら

音などでもうすぐここまで来るとわかっているのだと、素直に受け止めてもよいのですが、まだ風は作者のところまで至ってはいません。もしかすると「一筋の涼しき風」は絵に描いた餅に終わるかもしれないのです。そうなると〈涼しき風〉を詠みながら実際には〈暑し〉の句になる……「待ちにけり」が俄然面白く思えてきます。

虚子の部屋涼し立子の部屋いとし       後藤比奈夫

孫といふ涼しき命抱きにけり         今瀬剛一

百年後全員消エテヰテ涼し           小澤 實

これらは心で感じる涼しさといえましょうか。比奈夫の父は夜半です。父の師である虚子への敬意と、直接の師である立子(虚子の二女)への慕情を感じます。剛一が抱いたのは初孫でしょうか。感動に震える瞬間に違いありません。實は皮肉っぽい口調でサバサバと言い放つ感じです。今この世にいる私たちはもちろん消えていますが、人類が消滅していないことを祈ります。(正子)

 

第二十六回 カフェきごさいズーム句会報告(飛岡光枝選)

caffe kigosai 投稿日:2025年6月1日 作成者: mitsue2025年6月1日

第二十六回カフェきごさいズーム句会 (2025年(令和七年)5月10日)
の句会報告です。(  )は推敲例です。
「カフェきごさいズーム句会」はどなたでも参加できます、見学も大歓迎です。詳しくは右の案内をご覧ください。

第一句座              
【特選】
蝮草誰も見に来ぬ花咲かせ      和子
豆かんの二色だけを好みけり     雅子
(豆かんの二色好み好々爺)
桜貝どこへもゆけぬ君のため     京子
クサ亀が転げ落ちたり花の闇     桂
草笛や予期せぬ音の嬉しさよ     桂
(草笛の予期せぬ音の嬉しさよ)

【入選】
牡丹散る庭の要の失せにけり 桂
父母の待つ宇出津へあばれ祭の日   淳
(父母の待つ宇出津へあばれ祭かな)
便り来ぬ子の棲む国のおぼろかな   悠
光集む楓若葉は歓喜の歌       和子
(光集め楓若葉は歓喜の歌)
新品の田植機届く代田かな      好子
(新品の田植機すすむ代田かな)
白玉や君が幼な子だつたころ     真樹子
白牡丹ためらはず切る父のため    桂
田水張り蝦夷の富士山浮かべんと   真樹子
(田水張る蝦夷の富士山浮かべんと)
けふ一日ビニールシートも花筵    京子
(けふ一日ビニールシートの花筵)
大袈裟に啜るうどんや夏来る     さゆり
さわさわと茅花流しや雲の富士    光尾
瞑想や竹の落葉の降りしきる     美津子

飛岡光枝出句
夏の闇うごめく鯉の口幾万

第二句座(席題・ダービー 母の日)
【特選】
美しき水の流れよダービーは      桂
(美しき水の流れよダービーよ)
母の日や中国の母日本の母       龍梅
母知らぬ母と気付けり母の日に     悠
(母知らぬ母と過ごすやカーネーション)

【入選】
ダービーを気に掛けつつの句会かな   京子
勝馬の勇姿拝まん人の群れ       さゆり
母の日やうらやむ父の独り言      龍梅
母の日や好みは加賀の豆すはま     淳
(母の日や母の好みし豆すはま)
母の日や娘も母にならんとす      さゆり
         
飛岡光枝出句
鼻息の荒くしづかにダービー馬

今月の花(六月) かなめもち

caffe kigosai 投稿日:2025年5月21日 作成者: mitsue2025年5月21日

この季節、生垣でよく見かける「かなめもち」。新緑も濃くなった中で赤い輝くような葉が目立ちます。そういえば、この花材がお稽古に出てくることは今まであったかしら、と記憶をたどってみました。

花鋏で切ってみると枝の細さに比べて思いのほか固いことがわかります。かなめもちの名の由来は扇のかなめに使われたからという説もあります。材質がしっかりしていて、扇を束ねるのに適しているのでしょう。

初夏のお稽古では、枝物は他にも「梅花ウツギ」「ななかまど」「エボタ」などがあるのですが、ひときわその赤い葉の色が目を引きます。その赤の下にうっすらと緑を隠していると思ったのは、もう少し経つと赤い葉は緑になっていくからです。そして、小さな5弁の花びらを持つ白い花が集まって咲きはじめます。

枝の物をいけばな用に生産する人たちは、高齢化、そして世代交代のためにその数を減らしています。お稽古の後、枝が大きいと飾るところがないからと枝を切って持って帰る人もいます。生産者の苦労を知っている、枝好きな私としては心が痛みます。

仏さまにも見せたいからと短く切ってお仏壇に小さく飾る人は良しとしましょう。こじんまりした家でも、床に何かを敷いた上に花器を置いて枝を大きくいけ、家族やお客様を迎えてもいいのでは?職場に持っていって楽しんでいただくこともできるのでは?もっと飾る場所をさがしましょうよ、と呼びかけたい思いがあります。

かなめもちの枝は水の中で切り、切ったところをたたいて割っていけます。一度水が上がると、フレッシュなまま、長持ちします。

それぞれ置かれた空間の中で、人々をつなぐかなめの役割をこのバラ科の花材のニューフェースに期待しています。(光加)

加賀の一盞(六月) 岩魚炭火焼

caffe kigosai 投稿日:2025年5月18日 作成者: mitsue2025年5月18日

白山は水が良い。特に手取川水系は水質において高く評価されている。水の善し悪しが重要な液晶や電子部品のメーカーが多数大きな工場を建てている。もちろん酒造りもさかん。となれば川魚の美味しいのは必然、まして上流域の岩魚はことさらである。

白山をご神体に仰ぐ白山比咩神社はこの手取川扇状地の扇のかなめの地に鎮座されている。その社の真後ろに知る人ぞ知る『いわなの庵』がある。谷川の水をそのまま生簀に流し自然のままに養殖している。

店はその生簀のすぐ脇にある。夏のみの営業で今頃は若葉風が通り、谷川からは雪解水の流れが聞こえる。中央には囲炉裏が置かれ客はそれを囲んで座る。炭火が熾り、串に刺された岩魚が立ちて並ぶ。焼き上がりまで約40分、庵の親父はせわしなく炭の具合を見、串の角度を変えたり表裏を返したりして余念がない。奥さまと娘さんは塩焼きに合わせる炊込みご飯や山菜の和え物、みそ汁など用意する。

焼き上がった岩魚は食べやすい20センチくらい、頭からかぶりつく。この時の感動がすごい。頭や骨を噛む感触が無く心地よい歯応えなのだ。丁度良い苦みが加わり野趣が最高、どんどん食べて尻尾まですべて堪能する。岩魚定食は1匹だが、いつももう1匹追加し2匹で注文する。この美味しさは1匹ではもの足りない。鳥が囀り山吹が色を添える中、白山の岩魚は欠かせない。

転じてお隣の富山県には立山連峰がある。名峰劔岳から続くところ、滑川市に句友の酒井きよみさんが坐忘庵と名付けたお宅に住んでおられる。数年前にお邪魔したら、きよみさん自身が釣った見事な岩魚をご馳走してくれた。後ろは劔岳、前は富山湾から能登半島を望める絶景の坐忘庵、岩魚も格別でした。

大岩魚これを釣つたんきよみさん 淳

今月の季語(6月)木の花(2)

caffe kigosai 投稿日:2025年5月17日 作成者: masako2025年5月18日

新緑から万緑へ移りゆくころとなりました。南のほうから梅雨前線も迫ってきています。そんなころの木の花(木本の意で使っています)として、誰もがまず思い浮かべるのは〈紫陽花〉ではないでしょうか。色の七変化が楽しいだけでなく、花や葉の形に意匠を凝らした園芸種が次々に生まれています。

紫陽花や白よりいでし浅みどり         渡辺水巴

あぢさゐの藍をつくして了りけり           安住 敦

移り気という花言葉もあるそうな。そういう紫陽花なればこそ、

あぢさゐやきのふの手紙はや古ぶ       橋本多佳子

という句も実感とともに受け止めることができるのでしょう。

陰湿な環境を好む紫陽花ですが、ある意味ではこの時期の花形ともいえるでしょう。

ザクロの木が遠くからでもぱっと目を引く朱い花をつけるのもこのころです。

花石榴雨きらきらと地を濡らさず      大野林火

日のくわつとさして石榴の花の数      小林篤子

近くで仰ぐとガラス細工のような…。「雨きらきら」や「くわつと」射す日に、その透明感が際立ちます。

柿若葉重なりもして透くみどり       富安風生(初夏)

若葉のころには息を呑む美しさであった柿の木は、更に茂って葉の数が増えるだけでなく、葉の厚みが増すからでしょうか、晴れた日には照り、雨の日には冥い木になっています。が、よくよく仰ぐと、青葉の間に薄緑にも見える花をたくさんつけています。大概は木の下にこぼれた花を見て気づくことになりますが、壺型の硬質な象牙色の花です。

柿の花こぼれて久し石の上            高浜虚子

百年は死者にみじかし柿の花         藺草慶子

呼鈴に声の返事や柿の花               小川軽舟

掃き寄せられなければいつまでも転がっているような質感です。昭和一桁生まれの女性が、紐で繋いで首飾りにして遊んだとおっしゃっていましたが、宜なるかな。

視覚より嗅覚に訴えてくる花としてはまず〈栗の花〉でしょうか。

花栗のちからかぎりに夜もにほふ     飯田龍太

栗咲く香この青空に隙間欲し         鷲谷七菜子

ムッとした青臭い匂いにあたりを見回すと、かなり遠くに噴水のような花盛りの栗の木を見つけることがあります。ここまでに「にほふ」のかと驚くほどです。

〈椎の花〉もなかなか強烈。神社などでよく見かけます。

椎の花鉄棒下りし手のにほふ         福永耕二

芳香の代表としては〈定家葛の花〉を挙げてみましょう。

虚空より定家葛の花かをる           長谷川櫂

蔓性なので巨木に巻き上って高みから香を降りこぼします。好んで生垣に使う人もいます。先日グリーンカーテン状にしているお宅を見つけ、羨ましく思ったのですが、常緑なので冬は日当たりに問題が出るのでは、とつい余計な心配をしたのでした。(正子)

浪速の味 江戸の味(五月) 柏餅【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2025年5月5日 作成者: mitsue2025年5月5日

端午の節句が近づくと餅屋、和菓子屋はもちろんのこと、スーパーやコンビニの店頭にも柏餅が並びます。

奈良時代に朝廷で始まった端午の節句は、江戸時代には民間の行事として盛んに行われるようになりました。当時から江戸では主に柏餅、京阪地方では粽が節句の菓子として愛好され、江戸の柏餅は自家製が多かったようです。

柏の葉を用いた柏餅は、九代将軍家重から十代家治の頃、江戸で生まれたといわれています。この時代は田沼意次が活躍した庶民文化興隆の時期にあたります。その後、参勤交代で全国に広まったと考えられています。

柏の葉は、新芽が育つまで古い葉が落ちないことから子孫繁栄を願って用いられたといわれますが、清々しい香りと色が端午の節句に相応しいと思います。何よりそのまま持って食べられるのが好もしい。 

写真は、飛鳥山にほど近い東京都北区上中里の「平塚神社」境内の一角にある和菓子店「平塚亭つるおか」の柏餅です。「平塚神社」の歴史は古く、創立は平安後期といわれています。

源氏の棟梁、八幡太郎源義家が奥州征伐の凱旋途中にこの地を訪れ、領主に鎧を下賜、それを清浄な地に埋め塚(平塚)を築いたところから平塚の地名となったそうです。御祭神が武勇に秀でた義家とその弟達という「平塚神社」。その門前の柏餅を頬張ると力が漲る心持がします。

をみなこそここ一番ぞ柏餅 光枝

追記
俳句結社「古志」の長年の句友、福島県南相馬で餅屋を営む宮本みさ子さんが、初句集『餅屋句集』(青磁社)を上梓されました。「わが店の柏餅なりすべて白」をはじめ、柏餅の秀句が並びます。機会がありましたらぜひご一読ください。

第二十五回 カフェきごさいズーム句会報告(飛岡光枝選)

caffe kigosai 投稿日:2025年4月30日 作成者: mitsue2025年5月3日

第二十五回カフェズーム句会(2025年4月12日)の句会報告です。(   )は推敲例。
「カフェきごさいズーム句会」はどなたでも参加できます。見学も大歓迎です。

第一句座              
【特選】
壺焼のひとつが噴けば次もまた  斉藤真知子
たんぽぽは歌ふ花なり我もまた     高橋真樹子
春の暮猫も家路に遠くなり       前田悠
花のごと生まれて花の産湯かな     上田雅子
山下りて清水に濡らす杖の先      周龍梅
(山下りて流れにすすぐ花の杖)

【入選】
河川敷の風のうねりや黄水仙      村井好子
(河川敷の風にうねるや黄水仙)
やさしくて時にはげしく鳥の恋     矢野京子
(時折は羽音はげしく鳥の恋)
春はやて右往左往す葱坊主       伊藤涼子
(春はやて右往左往の葱坊主)
春雷や鼻つ柱を圧し折られ       赤塚さゆり
梔子の花や谷中の夕まぐれ       鈴木勇美
百歳の花見は花の杖持ちて       上田雅子
(百歳の花見は花の杖をつき)
春怒濤むかし流人を運びけり      斉藤真知子
傘の下ふたり分け合ひ花見酒      鈴木勇美
(傘の下ふたり分け合ふ花見酒)
小半日父と二人の花筵         藤倉桂
熊避けや三橋美智也を唄いつつ      早川光尾  
(熊避けの三橋美智也を唄ひつつ)
八重桜春の重さをもてあます      葛西美津子
木曽川の長き鉄橋目借時        村井好子
結局は開かぬままの春日傘       斉藤真知子
胎の子をさすり春眠分かちあふ     高橋真樹子
がむしやらに生きて喜寿なり目刺焼く  藤倉桂 

あんぱんに臍すこやかや桜漬      飛岡光枝

第二句座(席題・春雷、雲雀)
【特選】         
こんにやくを春雷のごと包丁す     高橋真樹子
春雷や今日は私の誕生日        藤倉桂
(揚雲雀今日は私の誕生日)
【入選】
ずぶ濡れし犬の哀れや春の雷      上田雅子
(ずぶ濡れの犬の哀れや春の雷)
関税は何のことやら雲雀鳴く      斉藤真知子
(関税は何のことやら亀の鳴く)
首痛くなるまで空の雲雀かな      葛西美津子
春雷に浮かびし一句忘れけり      矢野京子
太陽の子になりたくて揚げ雲雀     藤倉桂
天守閣転げ落ちしか春の雷       矢野京子
(春雷に転げ落ちたり天守閣)
夕雲雀取り残されてしまひけり     矢野京子

揚雲雀きのふの声の落ちてくる     飛岡光枝
  

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「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第二十八回 2025年7月19日(土)13時30分(今月は第三土曜日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

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スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
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