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今月の花(5月)王冠百合

caffe kigosai 投稿日:2021年4月13日 作成者: koka2021年4月13日

ロンドンの門下から「王冠百合が咲きました」と写真が送られてきました。

王冠百合は瓔珞百合(ようらくゆり)とも呼ばれ、茎を高く伸ばしたその先にたくさんの花をつけます。同じような姿の竹島百合はユリ科の百合属ですが、片や王冠百合は同じユリ科でも百合属ではなく貝母属だと知りました。貝母や黒百合の仲間です。

それにしてはこの百合は茎が1メートルにも伸び、貝母や黒百合に比べると花も大きく瓔珞百合という名前も優雅な響きがあります。瓔珞とはインドの王族が身に着けた珠玉や金銀を編んだ装身具のこと。この花はトルコからインドにかけての高地で育ち、中世の末にヨーロッパに渡り日本には明治時代にもたらされたといいます。

どこかで見た記憶はあるのですがどうにも思い出せず、写真を送ってくださったIさんに問い合わせてみました。彼女は私の属している流派のロンドンの初代支部長で、渡英以来いくつもの園芸学校に通って研鑽を積みました。お宅にお邪魔したときは、この植物にはこの土地の土は合わないので庭の一部を1メートル掘って周囲2メートルの土を入れ替えました、というほどガーデニングに力をいれていました。出身国である日本の植物も市場にたまたまあれば手に入れて育て、私は英国でのデモンストレーションの時、調達できない植物を丹精したこの庭から切らせていただきました。私は最近『A Pssion for Ikebana』という本を出しましたが、その英語名と学名の監修は迷うことなく彼女にお願いしました。

I さんによれば、ヤン・ブリューゲルの絵に多く描かれているという王冠百合は、17~19世紀のダッチ・フレミッシュ時代のフラワーアレンジメントではシンボル的な存在らしかったのですが、今では一般の花屋で見かけることはないとのこと。NAFASの資格習得のコースに在籍していた折、ダッチ・フレミッシュ時代のアレンジを再現する課題にこの花を使いたかったので、何個か球根を買い植えたのが二十年前のことだそうです。

花後のさやも見ごたえがあるなどIさんにいろいろ教えていただきながら、学名がFritillaria imperialis と聞き、かすかに記憶がよみがえりました。そう、私はこの花の名前をフリテイラリアと教わりました。なんでもカタカナにしてしまう今の風潮ですが、王冠百合のほうがずっと印象深いのにと残念でした。英語名は、Crown imperialでまさに王冠を意味するのです。

写真を送ってくださった日の翌日、エリザベス女王の夫君、フィリップ殿下が逝去されました。王配というお立場では王冠を付けることをはなかったでしょう。けれども地上ではこの季節、殿下の旅立ちを王冠百合がお見送りしたことを私はこの花を見るたびに思い出すことでしょう。(光加)

カフェきごさい「ネット句会」4月 互選+飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2021年4月6日 作成者: mitsue2021年4月8日

【連中】雅子 裕子 光尾 隆子 都 涼子 和子 勇美 桂 あきえ 良子 弘道 すみえ 光枝

良子選
うすうすと真昼を月の出開帳  隆子
我らみな地に生きるもの桜咲く  涼子
寄り添へぬ心と心芋を植う  桂

裕子選
AIで喋る子犬と暮らす春  雅子
出開帳さくらの蕊を踏みながら  隆子
上野まで母を迎へに初桜  良子

あきえ選
銀嶺や桜の海に浮かびたり  和子
雪洞に花浮かびおる疎水べり  弘道
鶯や真白きシーツ干し終へて  涼子

桂選
よなぐもり湖底の龍は腹空かせ  都
黄砂降る疫つぎつぎと姿かへ  すみえ
朝起きて一杯の水万愚説  裕子

すみえ選
よなぐもり湖底の龍は腹空かせ  都
燕の子土間を汚して巣立ちけり  光枝
寄り添へぬ心と心芋を植う  桂

都選
我ら皆地に生きるもの桜咲く  涼子
銀嶺や桜の海に浮かびたり  和子
先送りの北窓開く校了日  あきえ

涼子選
よべは月美しかりし蒸鰈  隆子
銀嶺や桜の海に浮かびたり  和子
春雷や子ども俳句の恐ろしく  光枝

勇美選
花散つて今朝はま白き花の道  雅子
白木蓮や母の真珠とおなじいろ  あきえ
病癒ゆ草餅の草噛みしめん  すみえ

雅子選
よべは月美しかりし蒸鰈  隆子
春光の滴たらたら鴨の嘴  桂
春雷や子ども俳句の恐ろしく  光枝

弘道選
うす暗き土間なつかしや草の餅  都
夜べは月美しかりき蒸鰈  隆子
帰らむか生家の辛夷咲くころぞ  都

隆子選
花散つて今朝はま白き花の道  雅子
寄り添へぬ心と心芋を植う  桂
病癒ゆ草餅の草噛みしめん  すみえ

和子選
一切をしばし覆ひぬ花万朶  勇美
花筏ほどかぬほどの細き雨  勇美
桜貝すなごは小さく歌ひけり  あきえ

光尾選
一人づつ名前呼ばれて菫笑み  和子
花筏ほどかぬほどの細き雨  勇美
出開帳さくらの蕊を踏みながら  隆子

《飛岡光枝選》
【特選】
白木蓮母の真珠とおなじ色  あきえ

白木蓮はその形を燭台などにたとえた句はたくさんありますが、その色を真珠色として新鮮。そして、その真珠が母の真珠とは何とも深い思いを蔵した一句となりました。原句は「白木蓮や母の真珠とおなじいろ」。「はくれん」と読ませたい場合は、「白木蓮は」。

花散つて今朝はま白き花の道  雅子

言葉の巧みな運びにより一本の白い道が目の前に浮かんできます。

畑に人信濃の里は花あんず  すみえ

上五の「畑に人」で命が吹き込まれました。すっきりとした句の姿がいい。

【入選】
はるかなるウイグルの民黄砂舞ふ  光尾

今年は東京でも黄砂が降りました。身体に影響がある方もいて深刻なことですが、彼方の砂漠からの来訪者と思うと胸が熱くなるものがあります。句は
その地の人々へ思いを馳せて大きな一句となりました。原句は「ウイグルの民何思ふ黄砂舞ふ」。

オフィスへ履くスニーカー朝桜  涼子

ニューヨーカーの通勤時の足元がパンプスからスニーカーになったのは、同時多発テロの後。日本では大震災の後でしょうか。それにマスクが加わり現在はよりたいへんですが、毎朝桜が応援してくれているようです。原句は「オフィスへと履くスニーカー朝桜」。

コロナ禍を桜前線駆け抜ける  裕子

いつの世も変わらない自然のたくましさ。ただ、今年は多くの地域での早すぎる開花が気になります。原句は「コロナ禍や桜前線駆け抜ける」。

よなぐもり湖底の龍は腹空かせ  都

黄砂という大きな自然現象と龍が呼応する一句。そういえば龍は何を食べるのでしょう。

一人づつ呼ばれる名前すみれ笑む  和子

新入生の最初の点呼を思いました。大切な名前。原句は「一人づつ名前呼ばれて菫笑み」。

黄砂ふる疫つぎつぎと姿かへ  すみえ

まさに今、全世界の思い。季語が的確です。

出開帳さくらの蕊を踏みながら  隆子

出開帳のしめやかながら人々の華やいだ心映えがよく描かれています。ただ季重なりは慎重に。

春光の滴たらたら鴨の嘴  桂

鴨の嘴からの水滴や泥を詠んだ句はたくさんありますが、「春光の滴」として新鮮。春の鴨の句。

鐘楼へ上る石段花ふぶき  良子

きちんと描けた一句。情景がよく見えます。

人の来ぬ堤に花の咲き満る  雅子

今年に限らず、あまりに見事な桜を一人で見る時のとまどいが感じられます。

全山の花雲揺るる吉野かな  弘道

「全山」と打って出たところがいい。原句は「全山に花雲揺るる吉野かな」。

カフェきごさい「ネット句会」4月 投句一覧

caffe kigosai 投稿日:2021年4月1日 作成者: mitsue2021年4月2日

☆「ネット句会」専用の投句、選句欄が出来ました。

4月「ネット句会」の投句一覧です。以下の【投句一覧】から3句を選び、参加者は「ネット句会」欄(「カフェネット投句」欄ではなく、その下にある「ネット句会」欄へお願いします)に番号と俳句を記入して送信してください。選句締め切りは4月4日(日)です。みなさんの選と店長(飛岡光枝)の選はこのサイトにアップします

【投句一覧】
1 AIで喋る子犬と暮す春
2 アネモネや眠たくもあり妖しくもあり
3 ウイグルの民何思ふ黄砂舞ふ
4 うすうすと真昼を月の出開帳
5 うす暗き土間なつかしや草の餅
6 オフィスへと履くスニーカー朝桜
7 コロナ禍や桜前線駆け抜ける
8 よなぐもり湖底の龍は腹空かせ
9 よべは月美しかりし蒸鰈
10 一人づつ名前呼ばれて菫笑み
11 一切をしばし覆ひぬ花万朶
12 燕の子土間を汚して巣立ちけり
13 黄砂ふる疫つぎつぎと姿かへ
14 黄砂ふる真昼富士山夢の中
15 花散つて今朝はま白き花の道
16 花桃の大波小波山を越へ
17 花筏ほどかぬほどの細き雨
18 花筏舞妓の涙そっと乗せ
19 我ら皆地に生きるもの桜咲く
20 海知らぬ吾子へ手渡すごうなかな
21 寄り添へぬ心と心芋を植う
22 帰らむか生家の辛夷咲くころぞ
23 銀嶺や桜の海に浮かびたり
24 桜貝すなごは小さく歌ひけり
25 時刻表枕に終の春休み
26 出開帳さくらの蕊を踏みながら
27 春の峰わた雲二つ遊びをり
28 春光の滴たらたら鴨の嘴
29 春灯や町にひとつの喫茶店
30 春雷や子ども俳句の恐ろしく
31 鐘楼へ上る石段花ふぶき
32 上野まで母を迎へに初桜
33 人の来ぬ堤に花の咲き満る
34 責任を果たし終えてか椿落つ
35 雪洞に花浮かびおる疎水べり
36 先送りの北窓開く校了日
37 全山に花雲揺るる吉野かな
38 朝起きて一杯の水万愚節
39 白木蓮や母の真珠とおなじいろ
40 畑に人信濃の里は花あんず
41 病癒ゆ草餅の草噛みしめん
42 鶯や真白きシーツ干し終へて

カフェきごさい「ネット句会」4月のお知らせ

caffe kigosai 投稿日:2021年3月27日 作成者: mitsue2021年3月27日

☆「ネット句会」専用の投句欄ができました☆
カフェきごさい「ネット句会」は、どなたでも参加自由です。4月の句会の投句締切りは3月31日(水)です。このサイトの右側に出ている「ネット句会」欄より、3月31日までに3句を投句ください。4月1日中にサイトへ投句一覧をアップしますので、4月4日までに参加者は3句を選び、投句と同じ方法で選句をお送りください。今まで「ネット投句」欄へ投句いただいていましたが、「ネット句会」の専用欄を設けましたので、投句、選句ともそちらへお送りください。このサイトへ参加者の互選と店長・飛岡光枝の選をアップいたします。今年の桜は早く、各地で開花~満開を迎えていることと思います。春爛漫のネット句会です。(店長・飛岡光枝)

カフェきごさい「ネット投句」(三月)飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2021年3月25日 作成者: mitsue2021年3月25日

【入選】
花脊いま摘草料る頃ならん  弘道

「花脊」とは、その地名が春爛漫。原句は「花脊いま摘草料理の春となる」。花脊で摘草料理といえばあの店と限定されてしまう。より世界を広げたい。

禍々しき雪崩跡なり山の泣く  和子

山笑うのを待つ季節の惨事。原句は「禍々し雪崩跡かな山の泣く」。

春スキー磐梯山の微笑みぬ  和子

上五に置いた「春スキー」が活きている。原句は「春スキー磐梯山も微笑みて」。

空色のボートでくぐる桜かな  勇美

桜の木の上から眺めているような一句。句のリズムが、ゆっくりと動くボートのよう。

神官の杜の百年朝ざくら  涼子

百年の間毎年開いてきた朝桜に思いを馳せる。「朝ざくら」がいい。

春月やひとりひとりと友の逝く  弘道

季語「春月」がよく効いている一句。「春月やひとりまたひとり友の逝く」も。

【投句より】
(海苔を掻く波荒々し日本海)
形も内容も破綻なく描けていますが、日本海の形容、海苔掻きの様子が一般的な範疇に収まってしまっているのが残念。

(朝桜あふぐ白亜の新校舎)
「あふぐ」が「朝桜」にも「白亜の新校舎」にもかかってしまい、曖昧な印象になってしまいました。作者は思い込みがあり伝わっていると思いがちですが、今一度の見直しが大切です。

朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」2月

caffe kigosai 投稿日:2021年3月25日 作成者: mitsue2021年3月25日

新宿の朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」。今月の兼題はサイトより二月の季語「花を待つ」、花「連翹」、浪速の味「すべらんうどん」です。

【特選】
鍬の柄に凭れて仰ぐ春の雲  勇美

春まだ浅い頃、ゆっくりと始まる畑仕事。見上げる春の雲に来る季節への喜びが感じられます。原句は「鍬の柄をささへに仰ぐ春の雲」。

咲き満ちて金の孔雀やいたちぐさ  涼子

「いたちぐさ」は連翹の古称。「金の孔雀」と言い切って成功しました。風に光る連翹が見えるようです。

春の雪すべらんうどん待ちをれば  涼子

「春の雪」が秀逸。合格を祈願して食べるすべらんうどんを待つ心持とやさしく呼応します。

【入選】
流氷の果に眠れる墓いくつ  弘道

終わることのない悲しみを運んで来るかのように今年も流氷が接岸します。原句は「流氷の先に眠れる墓いくつ」。

春日傘汐風松をかがやかす  勇美

春の海辺の空気が伝わってきます。「夕風」もありか。

綿半纏石垣を背に日向ぼこ  守彦

綿半纏と石垣の手触りの違いが、より句に実感を与えています。原句は「綿半纏石垣背にし日向ぼこ」。

雛つるし待つ人あらむ波の音  弘道

「波の音」につるし雛がゆれている風情。原句は「つるし雛待つ人あらむ波の音」。

軽鴨の逆立ち泳ぎ水温む  和子

軽鴨の動きをよく捉えて的確に描写。言葉が過不足なく働いている一句です。

似顔絵を頼むミモザの香る丘  涼子

「丘」の一語でミモザが咲いている様子がよくわかります。「頼み」のほうが軽い印象になります。

下町の軒連なりて小梅咲く  守彦

なにげない句ですがしっかり描けています。「小梅」が下町らしい。

二つ三つ椿流るる谷の川  弘道

上流の椿はまだまだ花の盛り、日ごとに流れる椿の数が増えていくことでしょう。

今月の花(4月)アスパラガス

caffe kigosai 投稿日:2021年3月23日 作成者: koka2021年3月23日

「アスパラガスのお浸しを作っておきました。どうぞ!」といわれ、出されたのは薬指くらいの太さのきれいな緑のアスパラガス。家の近くでつんできたということでした。

イタリアの初夏のオルヴィエート、世界遺産で有名なこの町でよく冷えた緑のアスパラガスにふわりと削り節をかけていただくとは予想外でした。

長くイタリアに住み、オルヴィエートでワインとオリーブオイルを作り、日本にも輸出をしているTさんとは実は初対面。日本で姉上からぜひイタリアに行ったら弟を訪ねてください、という言葉に甘え、フィレンツェから1時間ちょっとのこの街にローマ行きの列車に乗ってやってきたのでした。

野生ならではの深い香りがひろがるアスパラガスの若芽はお湯にちょっと通したくらいでも柔らかく、どこかほろ苦く、これが本来のこの野菜の味なのだと思いました。イタリア料理も大好きな私ですが「なんだかほっとしました」というと、Tさんはこの時期、日本からの客人にはこうしてアスパラをふるまうということでした。

アスパラガスは緑のものと白いものとがありますが、実は同じもので白は光を遮断して作られたもの。そのため時には横穴や洞窟などを利用して栽培されることもあります。しっかりした株になるまで2年は待ち、3年目の春に出た新芽を収穫し始めるといわれます。その後10年は収穫可能なのだそうです。

その時私はフィレンツェ郊外の古い修道院を改装したペンションに泊まっていたのですが、庭にふわふわとした緑を付けた1.5メートルくらいの草のようなものがあり、棒を四隅に立ててひもで囲ってあり、名前を聞くとアスパラガスでした。葉のように見えるのはもともとは細かく分岐した茎です。

この旅の初めにまずミュンヘンで最盛期の白アスパラをごちそうになったのですが、食用のアスパラガスはヨーロッパ原産。花材に使用するのは南アフリカ原産と聞きました。

アスパラガスとはアスパラガス属をさす名前で、いけばなの花材にも多く使われます。アスパラガスプルモーサス、天門冬、スプレンゲリ、スマイラックス、ミリオン、アプライト、アスパラガスルツィイなど、アスパラガスの種類は豊富です。

「冷蔵庫で保管するには先を立ててください」という説明書がついたアスパラガスが北海道から送られてくる季節ももうすぐです。(光加)

浪速の味 江戸の味 四月 イカナゴのくぎ煮(浪速)

caffe kigosai 投稿日:2021年3月21日 作成者: youko2021年3月22日

イカナゴは成長すると20cmほどになる小魚です。関西では、1月ごろ孵化し3月の初めごろ、4cmほどになったイカナゴをシンコと呼びます。シンコの大きさになるとイカナゴ漁の解禁です。

瀬戸内で獲れたシンコが明石の漁港などに水揚げされます。明石の商店街にはキロ売りのシンコが並びます。神戸や大阪の人は、イカナゴ漁の解禁を待って「くぎ煮」を作るためシンコを買いに行きます。大鍋で「くぎ煮」を作るのが春の楽しみです。

買ってきたシンコはまず、ざっと水洗いします。笊にあけて水気をとります。大鍋に醤油、みりん、酒、ザラメを煮立たせ生姜のみじん切りを入れます。シンコは小分けにしてぱらぱらと入れてゆきます。強火で15分ほど灰汁を取りながら煮こみますが、決してかき混ぜません。シンコが折れるのを避けるためです。さらに落とし蓋をして煮汁がなくなるまで煮詰めます。最後に鍋を振って上下を返して仕上げます。つやつやと釘のような形に仕上がるので、まさに「くぎ煮」だと実感します。

近年はイカナゴの不漁が続き、スーパーの魚売り場でも午前中に売り切れの札が出ていました。今年のイカナゴ漁は3月6日に解禁になりましたが、はや20日に打ち切りになりました。貴重な水産資源を守るためです。イカナゴのくぎ煮は関西の春を代表する料理です。炊きたてのご飯にもお酒のおつまみにもよく合います。

大鍋にくぎ煮につまる春の昼   洋子

今月の季語(4月) 花惜しむ

caffe kigosai 投稿日:2021年3月19日 作成者: masako2021年3月20日

今年はすこし早めかつ心情的に桜の季語を追っています。早めのつもりでしたが開花自体が早まっていますから、図らずもタイムリーになってしまう可能性もあります。いつかの年のように、開花後にぐっと冷え込んでくれはしないかとすら思い始めました。

咲くまでをあれほど待った桜ですが、まさに花の命は短くて、風が無くてもちらほらと散るようになると、愛でつつ惜しむという感情がむくむくと立ち上がってきます。

花どきの一週間は一と昔                    今井千鶴子

さくらどき裏返しては嬰を洗ふ        平井さち子

〈花時〉〈桜時〉は時候の季語です。表記の違いを楽しみつつ使えます。

大寺湯屋の空ゆく落花かな     宇佐美魚目

ひとひらのあと全山の花吹雪     野中亮介

花筏とぎれて花を水鏡        岩田由美

〈飛花〉〈落花〉〈花吹雪〉は花の散るさまを表しています。〈花筏〉は水面に散った花びらの連なるさまを筏に見立てています(文字通り花の散りかかる筏や、植物のハナイカダを指すこともあります)。枝を離れてもなお花の行方を追っているのです。

花時を過ぎてなお残る花を指して〈残花〉、散ったあと蘂や花柄が降ることを指して〈桜蘂降る〉といいます。

いつせいに残花といへどふぶきけり    黒田杏子

桜しべ降る慶弔の旅つづけ                  角川源義

〈花過ぎ〉の日々にも慣れたころ、静かに花盛りを迎えている桜に出会うことがあります。花見の喧噪が過ぎた時期に咲き出す桜を〈遅桜〉と呼びます。一般的に〈八重桜〉は花期が遅めですが、一重八重を問わず、花期の遅い桜を指します。

一もとの姥子の宿の遅櫻            富安風生

夏に入っても桜の季語はあります。春にはやがて失われる佳きものを愛おしみ、夏には失ったと思っていたものを思いがけず見いだしたときの喜びや失ったものに代わる新しいものへの期待を詠みます。そうした纏わり続ける視線や思いが「惜しむ」に通じるのです。

二、三月にとりあげた〈花を待つ〉や〈花の闇〉と異なり、〈花(を)惜しむ〉は歳時記に「ある」季語です。〈花〉の項に傍題として掲載されています。つまり散ることのみを指しているのではありません。

花惜しむ莚をのべてたそがれて    黒田杏子

〈花惜しむ〉で詠まれた稀少な例です。この花は万朶の花であってもよいわけです。万朶の花といえば、

咲き満ちてこぼるゝ花もなかりけり    高浜虚子

この句が出されたのは立派な弟子たちの居並ぶ句座でした。道長の望月の歌のように、満たされた心情を思わずにはいられません。

今生の今日の花とぞ仰ぐなる     石塚友二

花見の宴は諦めたほうが無難な今年。純粋に(?)花を待ち、愛で、惜しむことにしましょう。(正子)

 

カフェきごさい「ネット句会」4月のお知らせ

caffe kigosai 投稿日:2021年2月28日 作成者: mitsue2021年2月28日

カフェきごさい「ネット句会」は、どなたでも参加自由です。4月の句会の投句締切りは3月31日(水)です。このサイトの「ネット投句欄」より、3月31日までに3句を投句ください。4月1日中にサイトへ投句一覧をアップしますので、4月4日までに参加者は3句を選び、投句と同じ方法で選句をお送りください。サイトへ、参加者の互選と店長・飛岡光枝の選をアップいたします。春の花々が目を楽しませてくれる3月、桜の開花も待たれます。どうぞ様々な季語にトライしてみてください。(店長・飛岡光枝)

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カフェ_ネット投句とネット句会

・ネット投句は、朝日カルチャーセンター新宿教室(講師_飛岡光枝)の受講者が対象になります。
・毎月20日の夜12時が締め切りです。
・選者はカフェ店長の飛岡光枝、入選作品・選評は月末までに発表します。
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スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。朝日カルチャーセンター「句会入門」講師。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。句集に『玩具』『花実』。著書に『子どもの一句』。和光大・成蹊大講師。俳句結社「藍生」所属。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょうよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。

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  • きごさい

  

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