↓
 

caffe kigosai

投稿ナビゲーション

← 古い投稿

浪速の味 江戸の味 7月【鱧鮓】(浪速)

caffe kigosai 投稿日:2022年6月22日 作成者: youko2022年6月27日

今年は祇園祭の山鉾巡行、天神祭の陸渡御、船渡御も行われるので、コロナ禍で神事のみとなっていた関西の夏の祭に本来の賑わいがもどってきそうです。あまり密にならぬようにと思いつつもやはり、熱気に包まれた祭は心躍ります。

祭鱧とよばれるくらい、関西の夏祭に鱧は欠かせません。夏が旬の白身の魚で、全長1メートルの円筒状で、口が大きくのこぎり状の歯を持ち、かみつきます。「食む(はむ)」がなまってはもになったとも言われます。小骨が身と皮の間に斜めに入り込んでいるので、鱧切り包丁で、小骨を切っていきます。

成分は鰻に似ていて、白身魚にしては脂肪含有量が多い旬の鱧は、照り焼き、天ぷら、湯びき鱧などどのように料理してもおいしいのですが、お勧めは「鱧鮓」です。照り焼きの鱧をのせた棒鮓を食べやすく切り分けたものです。甘辛いタレをつけて焼いた鱧と鮓飯がよく合います。祭見物の最中に手軽に食べられますし、箱に入った鱧鮓はみやげにも重宝します。

祇園祭や天神祭の思い出に登場するまさに祭鱧の料理だと思います。写真の鱧鮓は創業300年を超える大阪鮓の「すし萬」の鱧鮓です。大阪鮓と言えば箱鮓で、一手間かけた魚が鮓飯と一体となり風味を増します。見た目はそれこそ宝石箱のようです。鱧鮓は棒鮓で、鱧と鮓飯の間に山椒の実が少々。この山椒の実が食欲を増進させます。鱧は鰻より淡泊で、骨切りしてあるので炙ると身が開きます。ごつとした風味が暑気払いにもよさそうです。

鱧鮓や三年ぶりの渡御を見に   洋子

今月の花(七月)ひまわり

caffe kigosai 投稿日:2022年6月21日 作成者: koka2022年6月21日

マケドニアの詩祭でいけたひまわりの花。マケドニアはアレクサンダー大王を輩出した地域です。この国は1991年、時のユーゴスラビアから血を流さず独立したのですが、歴史をみれば国境も支配者もよく変わる不安定な国と言わざるを得ません。独立まもない1996年、その年の優れた詩人に与えられる金冠賞の授与式が大統領も出席し国をあげて華々しく行われることに驚きました。

受賞者で旧知の大岡信さんと奥様が到着する前、私は授賞式が行われるストル―ガの古い教会の中に花をいけることになっていました。町で1~2軒しかない花屋は品質管理は十分とはいえず、花の種類も限られていました。前もって注文していた赤の小さなアンスリウムだけは10本手に入れることができました。森でも作品の骨格となる木や枝を切らせてもらったのですが、華やかな席での作品としてはそれだけでは色が足りません。

詩祭委員の一人が背の高いお嬢さんを私の助手にと紹介してくれました。オーストラリアに家族で数年住んだことがある18歳は長い金髪にハート型の顔、物憂げな表情はどこかボッティチェリの春の女神に似ていました。周りに英語の通じる人がいなかった私はほっとしました。「お祝いなので鮮やかな色の花を集めたいの」と言うと、彼女は「この季節はどこでも花は咲いているから歩いてみましょう」。この春の女神にいざなわれ、歩き出しました。すると、一軒の家の庭に私の背の高さのひまわりが何本もたくさんの花をつけてゆらりとゆれていたのです。

知っている家ではないけれどと言いながら彼女は簡単な木の柵を入っていき、出てきた家主はすんなりと花を切らせてくれました。そのひまわりはいかにも手入れをされていないまま、澄みきった空気の中でのびのび育ったいずれも15センチもあろうかという大輪で、太い茎は薄緑、葉は柔らかな光を受け、下には次々と開きそうな蕾が続いていました。数本手にしてみればゴッホの描いたひまわりの逞しさに重なるものがありました。新鮮なひまわりたちは個性と生命力にあふれ、教会の作品の中にいけると薄暗い空間が赤のアンスリウムを伴って光が灯されたようでした。

後にマケドニアは国名が北マケドニアになりました。金冠賞は今でも続いています。喜びの花として飾られたひまわりを懐かしく思い出します。
(以上は、2019年7月の「今月の花 ひまわり」を加筆修正したものです)

前述の文を書いたのはわずか3年前。今の私には、この季節に見かけるひまわりの黄色が心にしみます。

ウクライナを思って花をいけるときに使われるのが国旗の色であるブルーと黄色の花たち。ブルーは花器で代用することも、また青いデルフィニウムなどを使うこともあります。この季節は黄色の花は手に入りやすいひまわりであることが多いのです。

このところ1970年封切りの「ひまわり」という映画がにわかに脚光を浴びています。マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレンの演じた戦争で引き裂かれた夫婦の話です。若いころ私も見てジーンときたのを思い出します。中でもひまわり畑の中を歩くソフィア・ローレンの姿が目に焼き付いています。

陽を浴びて一面に花を咲かせるひまわり畑の前で土地の人が言います。その下にはたくさんの人たちが眠っている。戦争で犠牲になった兵士たちだけでなく一般の人や子どもたち、捕虜など。ゆれるひまわりがその一人一人の魂の様に見え、反戦映画の代表作の一つとなっています。後にそのロケ地はウクライナと聞きました。

ウクライナの国花は「ひまわり」。ロシアの国花は「かみつれ」、そしてウクライナと同じく「ひまわり」でもあるのです。種の縞が特徴のたくましいこの花に国境はありません。真の平和が訪れ、ひまわりが二つの国に美しく咲き誇る日々が一日でも早いことを願ってやみません。(光加)

今月の季語(七月) 夏の水辺

caffe kigosai 投稿日:2022年6月17日 作成者: masako2022年6月20日

梅雨が明けると水辺に出ることが増えます。〈水遊〉〈船遊〉、もっと直接的に〈泳ぐ〉など。いずれも人の営為なので生活の季語です。

水遊びまだ出来ぬ子を抱いてをり                     日原 傳

だんだんに脱ぎつつ水に遊びをり                     岩田由美

〈水遊〉は名詞ですが、動詞に使いたいときには「水に遊ぶ」などとします。また〈行水〉にも使える〈日向水〉も、この時分の季語です。

尾道の袋小路の日向水                                        鷹羽狩行

作者は山形に生まれ、尾道に育ったそうです。今も袋小路には盥が出ているに違いありませんが、懐かしい心の風景でもありましょう。

木曽川を庭の続きに船遊び                                金久美智子

遊船に灯を入れ男坐りかな                                横井 遥

立ち上る一人に揺れて船料理                             高浜年尾

納涼のために船を仕立てて遊ぶのです。乗り合いの遊船にも使えます。遊船が和のイメージならば、洋のイメージはこちら。

帆を上げしヨット逡巡なかりけり                       西村和子

〈泳ぎ〉の周辺にも季語がたくさんあります。

愛されずして沖遠く泳ぐなり                              藤田湘子

水踏んでゐるさびしさの立泳ぎ                          野村登四郎

平泳ぎやクロールも季語に使えます。水練のみならず、遊びで泳ぐことも季語になります。

海はまだ不承不承や海開き                                  大牧 広

もう一度わが息足して浮ぶくろ                           能村研三

砂日傘抜きたる砂の崩れけり                               小野あらた

海や川での泳ぎはむろんのこと、人工的な遊泳場も季語に使えます。

プールより生まれしごとく上がりけり                 西宮 舞

飛込みの途中たましひ遅れけり                             中原道夫

人工的といえば、ちょっと驚くこんなものも。

釣堀の四隅の水の疲れたる                                     波多野爽波

箱釣の肘の尖つてきたりけり                                 野中亮介

プールも釣堀も四季を問わずに存在しますが、夏は殊に人出が多いという理由です。

〈箱釣〉は金魚釣りのことと思ってよいでしょう。スーパーボールなどの玩具を釣ることもありそうですが。後の句は、だんだん必死になってきた様子がありありと伝わってきます。

それでは釣りも季語かと思ってしまいそうですが、こちらは工夫が必要です。

この雨は止むと出掛くる夜釣かな                       三村純也

大粒の雨が肘打つ山女釣                                 飯田龍太

涼みがてら釣る、夏の魚(鮎、岩魚、鱚など)を釣る等、すこし工夫すると季語になります。(正子)

 

カフェきごさい「ネット句会」6月 互選+飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2022年6月8日 作成者: mitsue2022年6月11日

【連中】守彦 都 良子 桂 すみえ 裕子 雅子 涼子 光尾 隆子 利通 酔眼 光枝

≪互選≫
良子選
飛魚や帰省の船をまへうしろ 隆子
菖蒲田の光分け行く小舟かな 桂 
己が道図太く生きよ牛蛙 都

裕子選
老鶯の背山妹山季(とき)問はず 利通
飛花落花狐六法なほ高く 酔眼
イカロスの落ちたる海の飛魚かな 隆子

桂選
老鶯の背山妹山季(とき)問はず 利通
飛花落花狐六法なほ高く 酔眼
三年を眠りし梅酒封を切る 雅子

光尾選
菖蒲田の光分け行く小舟かな 桂
歯の治療をへて安堵の夕薄暑 裕子
今年またおんなじ父の夏帽子 良子

雅子選
微笑みて吹かれてをるや蛇の衣 光枝
飛魚や帰省の船をまへうしろ 隆子
山芍薬雲の白さに花開く 涼子

すみえ選
風くれば金魚泳ぐや江戸風鈴 雅子
三年を眠りし梅酒封を切る 雅子
柿若葉子供みこしの一休み 裕子

都選
父の日やひとり居の父爪を切る すみえ
飛魚や帰省の船をまえうしろ 隆子
まぼろしのひまわり畑子の遊ぶ 光枝

涼子選
風くれば金魚泳ぐや江戸風鈴 雅子
菖蒲田の光分け行く小舟かな 桂
山峡の風も運んで新茶着く 光尾

利通選
風くれば金魚泳ぐや江戸風鈴 雅子
泰山木花のつぼみの朽ちゆくも 光枝
菖蒲田の光分け行く小舟かな 桂

隆子選
老鶯の背山妹山季(とき)問はず 利通
菖蒲田の光分け行く小舟かな 桂
今年またおんなじ父の夏帽子 良子

酔眼選
父の日やひとり居の父爪を切る すみえ
婚礼のくさやとならん飛魚とぶ 隆子
ところてん話し上手に聞き上手 良子

≪飛岡光枝選≫
【特選】
山芍薬雲の白さに花開く 涼子

山芍薬の咲く山の澄んだ空気が感じられる一句です。「山芍薬雲の白さの花開く」。

今年またおんなじ父の夏帽子 良子

「今年またおんなじ」で切って読みます。日焼けした古い帽子を大切にされている父上。新しいのがあるのに、と家族に言われても我関せず。そんな父上を好もしく見守る作者です。

グレイヘヤーさあ楽しまん髪洗ふ  雅子

原句は「グレイヘアーさて楽しまん髪洗ふ」。新しい夏の新しい自分の勢いをより出しては。「髪洗う」の新鮮な一句です。

丸き山いくつ超えたか遍路笠 守彦

讃岐地方にはぽこぽことした丸い山が続きます。遥かゆくお遍路さんへ心を寄せた一句。「遍路笠」が上手い。

【入選】
飛魚や帰省の船をまへうしろ  隆子

ふるさとへはやる気持ちを飛魚に託した一句。夏の季語「帰省」をどうするか。「飛魚や帰郷の船のまへうしろ」。

独裁者自ら落ちる蟻地獄  都

戦争のニュースに心痛む日々。原句は「独裁者自ら落ちろ蟻地獄」。気持ちはわかりますが、作品として「蟻地獄」の存在がより生きるようにしたいところです。

絶妙な母の間合ひや新茶汲む 裕子

具体的にはどういった状況かはわかりませんが、絶妙なタイミングで美味しい新茶を振る舞う母上。新茶の力でその場がより和やかになったに違いありません。

菖蒲田の光分けゆく小舟かな 桂

絵葉書の風景に落ち着かずに、「光分けゆく」と動きを出して上手くいきました。

仕事場に父が坐りし夏の夢 守彦

仕事をするお父上の後ろ姿でしょうか。「坐りし」で作業の様子が目に見えるようです。短夜の夢の一端。

蚕豆のつるんと出でて夕べかな 酔眼

晩酌の蚕豆でしょうか、夏の日の終わりのほっとする時間。原句は「蚕豆のつるんと出でてくる夕べ」。

山峡の風も運んで新茶着く 光尾

山間に育った新茶でしょうか、封を切る時のうれしさが思われます。言葉の運びに無理がなく心地よい一句。

胡椒餅旨し外つ国の夜店かな 都

屋台の胡椒餅が美味しそう。言葉に少々無理があります、素直に。「胡椒餅香る台南夜店かな」など。

己が道図太く生きよ牛蛙 都

牛蛙の大きな鳴き声に勇気をもらいます。取り合わせの句ですが、季語の「牛蛙」が内容と合い過ぎているのでもう少し間のある季語を考えてみましょう。

亀の子は鼻突き出して夏の川 桂

少し淀んだ夏の川の様子。「鼻突き出す」が具体的で句をいきいきとさせています。原句は「亀の子は鼻突き出すや夏の川」。

柿若葉子供みこしの一休み 裕子

やわらかな柿若葉の下、お神輿を下して一休み。涼しい風が吹いていることでしょう。

「ネット句会」6月 投句一覧

caffe kigosai 投稿日:2022年6月2日 作成者: mitsue2022年6月3日

6月の「ネット句会」の投句一覧です。
参加者は(投句一覧)から3句を選び、このサイトの横にある「ネット句会」欄(「カフェネット投句」欄ではなく、その下にある「ネット句会」欄へお願いします)に番号と俳句を記入して送信してください。
(「ネット句会」欄にも同じ投句一覧があります。それをコピーして欄に張り付けると確実です)

選句締め切りは6月5日(日)です。後日、互選と店長(飛岡光枝)の選をサイトにアップします。(店長)

(投句一覧)
1 老鶯の背山妹山季(とき)問はず
2 風くれば金魚泳ぐや江戸風鈴
3 父の日やひとり居の父爪を切る
4 父の日の夜に入りて来る子の電話
5 姫女苑地蔵のごとく並びおり
6 微笑みて吹かれてをるや蛇の衣
7 飛魚や帰省の船をまへうしろ
8 飛花落花狐六法なほ高く
9 肥え野良がドヤ顔で行く春の昼
10 独裁者自ら落ちろ蟻地獄
11 湯の町の夕風匂ふ花みかん
12 東京に虹や汐留辺りより
13 泰山木花のつぼみの朽ちゆくも
14 絶妙な母の間合ひや新茶汲む
15 青梅の産毛きらきら昨夜の雨
16 新緑の葉陰にどっこい赤椿
17 菖蒲田の光分け行く小舟かな
18 女教師に鈴蘭そつと差し出す子
19 歯の治療をへて安堵の夕薄暑
20 紫蘭なほ弥勒のごとく立ちて母
21 仕事場に父が坐りし夏の夢
22 蚕豆のつるんと出でてくる夕べ
23 山芍薬雲の白さに花開く
24 山峡の風も運んで新茶着く
25 三年を眠りし梅酒封を切る
26 婚礼のくさやとならん飛魚とぶ
27 今年またおんなじ父の夏帽子
28 胡椒餠旨し外つ国の夜店かな
29 己が道図太く生きよ牛蛙
30 幻のひまはり畑子の遊ぶ
31 蕎麦の花風にゆれてる開墾地
32 亀の子は鼻突き出すや夏の川
33 丸き山いくつ越えたか遍路笠
34 柿若葉子供みこしの一休み
35 ところてん話し上手に聞き上手
36 ダダダダと戦争ごつこ梅雨深し
37 たかんなの昂さする蹠かな
38 グレイヘアーさて楽しまん髪洗ふ
39 イカロスの落ちたる海の飛魚かな

「カフェきごさい」ネット句会(6月)のお知らせ

caffe kigosai 投稿日:2022年5月27日 作成者: mitsue2022年5月27日

雨が多い東京の5月、その合間に出かけた新宿御苑で風に吹かれる「蛇の衣」を見つけました。「カフェきごさい」ネット句会6月の締切は6月1日(水)です。どなたでも参加可能です。サイトの「ネット句会」欄から3句ご投句ください。

・このサイトの右側に出ている「ネット句会」欄より、3句を投句ください。

・6月2日中にサイトへ投句一覧をアップしますので、6月5日までに参加者は3句を選び、投句と同じ方法で選句をお送りください。

・後日、参加者の互選と店長・飛岡光枝の選をこのサイトへアップいたします。

初夏の「ネット句会」、みなさまの力作をお待ちしています。(店長)

カフェきごさい「ネット投句」(五月)飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2022年5月26日 作成者: mitsue2022年5月26日

【特選】

天を突く落葉松若葉晴れ晴れと  和子

落葉松は落葉が印象的ですが、高い空に誇らしげに芽吹く若葉が気持ちを開放してくれるような一句です。

【入選】

水分けて出逢ふ太藺や鯉の昼  裕子

原句は「水分けて出逢う太藺を見上げるや」。太藺の水に棲む生き物になって詠んだ句と思いますが、要素が多く句の焦点が定まらないのが残念。「水分けて」はたいへん涼し気でけっこうなので、その上五をより生かし、焦点が合うよう工夫してみましょう。

新緑の海に真白き浅間山  和子

なだらかな稜線の浅間山ならではの句。浅間山に集約した言葉の運びが心地よい、しっかりした一句です。

河鹿笛亡き人恋ふて夜もすがら  和子

平安の和歌のような端正な句。こちらも句の形がいい。

朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」四月

caffe kigosai 投稿日:2022年5月25日 作成者: mitsue2022年5月25日

新宿朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」。四月の兼題はサイトより、今月の季語「鳥の巣」、花「ユーカリ」、江戸の味「桜えび」です。

【特選】
桜えび朝日におどる天日干し  裕子

広い干場に桜海老を撒いていく様子。「朝日におどる」が新鮮な桜海老を思わせます。原句は「桜えび朝日におどり天日干し」。

桜海老煎餅割つて飛び出さん  和子

桜海老を焼き込んだ香ばしい煎餅。煎餅から飛び出さんばかりの桜海老とは美味しそうです。原句は「割りて」ですが、「割つて」の勢いがほしいところです。

【入選】
君待てば天道虫がブローチに  勇美

初々しい恋心。天道虫がブローチのようだという発想はあるので、より普遍的に詠みたい。「君待てば天道虫が胸の上」など。

巣箱揺るる砲声二発湖の上  和子

砲声が巣箱を揺らすようだという発想は新鮮ですが、色々入れ込んで句がごちゃついてしまったのが残念。自分が何を言いたいのかに焦点を当てたい。「一発の砲声に揺れ巣箱かな」など。

ユーカリの風をはらむやサンシェード  勇美

「ユーカリの風」が涼し気です。

春スキー滑り下りれば花の里  和子

雪の山から花の里へ、一気に変わる風景は春スキーならではです。「花の里」が少々平凡なので、より印象的な情景でよりダイナミックな一句にしたいところ。「春スキー滑り下りれば桃源郷」など。

ユーカリの香り纏ひて山の道  和子

ユーカリの香りに洗われるよう。

新材で競ふ個性や鴉の巣  勇美

ハンガーなど様々な素材を集めて巣を作る、都会の鴉ならではの愉快な一句。新材を具体的なものにしてもより楽しくなるか。

富士山のすそ長々と桜えび  光枝

浪速の味 江戸の味(六月) 飛魚のくさや〈江戸〉

caffe kigosai 投稿日:2022年5月23日 作成者: mitsue2022年5月23日

飛魚のくさや

夏の季語「飛魚」は季節回遊魚で、春先から夏にかけて日本付近へ北上し産卵します。世界で五十種ほどいるうちの三十種ほどが日本近海で確認され、各地で食料として親しまれています。

飛魚の特徴は何と言っても大きく発達した胸ビレでの滑空です。シイラなどの捕食から逃げるため、海面から2メートルくらい上を100~300メートルも飛び続けることができるそうです。沖縄で離島へ渡る途中、船の前を翔び続ける姿に驚いたことがあります。

この飛魚を、東京都の伊豆諸島、特に新島、八丈島などでは古くから「くさや」と呼ぶ干物に加工しています。江戸時代には献上品とされていたそうです。

「くさや」は、開いた魚を「くさや液」に八~二十時間ほど浸けてから水で洗い天日に干して作ります。当初、塩水に浸けた魚を干していましたが、塩が貴重なため、使った塩水を捨てずに塩を足して使ううち、液中に溶けた魚の成分に微生物が作用して「くさや液」が出来たとされています。

「くさや」はその名の通り、独特の匂いがあり好き嫌いが分かれる干物です。「くさや液」によって発酵した魚の独特のうま味は、ご飯のおかずや酒の肴として好む人も多く、八丈島では冠婚葬祭の席には欠かせないそうです。

私の両親は関西出身で、亡くなるまで納豆を口にしなかった父に対して、母は納豆も「くさや」も大好物です。台所で「くさや」を焼くと匂いが家中に漂ってきたのを思い出します。現在の都会では家庭で「くさや」を焼くのは少々難しいかもしれません。

夏の扉つぎつぎ開き飛魚とぶ 光枝 

今月の花(六月)芍薬

caffe kigosai 投稿日:2022年5月20日 作成者: koka2022年5月21日

この二枚の写真は、ここ数年、店先に出まわってきた私のお気に入りの芍薬です。咲き始めは鮮やかなオレンジ色ですが、右の写真にあるように散り際は白に近くなっていきます。

手にいれた時、ころんとした小さな蕾は濃いサーモンピンクでした。名前は「コーラルNゴールド」と呼ばれるようで、命名した人は花にコーラル(サンゴ)の色を重ね合わせたのでしょう。

花屋さんでは、今は一重咲きのほうが見かける機会が少なくなりました。何十枚もの花弁を持つ、それぞれ翁咲き、手毬咲き、冠咲き、バラ咲き、などと呼ばれて美しさを競っています。以前、薄クリーム色の芍薬をいけたことがあり、開いた花をのぞき込むと底は臙脂色でした。

同じボタン科の牡丹との違いは、芍薬は草本性であるのに対し牡丹は木本性です。英語で芍薬をChinese peony というのに対して牡丹はtree peony、木のpeonyです。

芍薬の葉は濃い目の緑で切れ目があり、やや光沢のあるしっかりとした大きめな葉がまっすぐな茎の基部についています。その茎のすっとした姿を見れば、美しい女性を指して(立てば芍薬)という一節が生まれたのも納得です。

芍薬は(薬)の字がさすように現在でも漢方薬にもちいられています。見てよし、役にもたつ芍薬です。

今の芍薬は大陸から渡ってきたもので、人々の目を楽しませたのは安土桃山時代にさかのぼるといわれています。観賞用として江戸時代には園芸品種がたくさん作られ、やがて数百種にもなっていきます。ヨーロッパにあった芍薬も、中国からの芍薬が入ると一気に豪華な芍薬へと次々と品種改良がされ、日本に逆輸入されます。

おしべが花弁へと化した、数十枚以上ある花びらをもつ花を「西欧芍薬」、これに対してもともと日本にあった芍薬を「和芍薬」と区別して呼びます。

「洋しゃく」と呼ばれるたっぷりとした美しさはもちろん素晴らしいですが、日本に自生する「やましゃくやく」の楚々とした姿にも惹かれます。本州の西の山の中で見られる、白い花弁がわずか六枚の可憐な芍薬をこの季節のうちにいけてみたいものです。

根元を割って水の中に入れれば水上りもよくなり、思っているより長く楽しめる芍薬。一輪でもぜひ近くにおいてみてください。花屋さんでもこの時期、濃いピンク、薄いピンク、白などの芍薬をどれにしようか迷うほど見かけます。部屋に置いておくと雨の日など香りもかすかにしてきて、パソコンに向かう間もどこかゆったりとした気分になってきます。薬にもなる芍薬、心の鎮静剤としてもおすすめです。(光加)

投稿ナビゲーション

← 古い投稿

Catégorie

  • à la carte (アラカルト)
  • 今月の季語
  • 今月の料理
  • 今月の花
  • 和菓子
  • 店長より
  • 浪速の味 江戸の味
  • 花

menu

  • top
  • 管理

カフェ_ネット投句とネット句会

・ネット投句は、朝日カルチャーセンター新宿教室(講師_飛岡光枝)の受講者が対象になります。
・毎月20日の夜12時が締め切りです。
・選者はカフェ店長の飛岡光枝、入選作品・選評は月末までに発表します。
<<カフェ_ネット投句へ>>


<<ネット句会へ>>

スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。朝日カルチャーセンター「句会入門」講師。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。句集に『玩具』『花実』。著書に『子どもの一句』。和光大・成蹊大講師。俳句結社「藍生」所属。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょうよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。

link

  • きごさい

  

©2022 - caffe kigosai
↑