今月の花(十二月) アロエの花
一メートル二十センチくらいの高さがあるアロエの塊が何株も、人気のない家の前に無造作に置かれた一つのプランターに窮屈そうに育っています。私が気が付いてから何年になるでしょうか。
アロエは棘のある肉厚の植物で、葉は粉を吹いたような緑で中央から四方ににょろりと手を伸ばし、その姿は吸盤こそないものの緑色のタコの手のようだ、と子供心に思ったものです。それはいろいろな薬になる、たとえば火傷をしたとき葉をすりおろして塗るといい。見て楽しむという植物でなく、いざというときに役に立つ、そんな植物だからおいてあるのだと大人に説明されましたが、実際にそうして使うことはありませんでした。
よく見かけるものはキダチアロエというアロエの種類なのですが、薬や化粧品などに用いられるのはまたほかの種類のアロエ・フェロクスで、そのほかにもアロエ・バルバデンシスなどがあるそうですが、ではヨーグルトに入っているものはどれなのでしょう。
大きな株になり陽の光がたくさん当たるとニューっと茎がのび、フットボールのボールの形の小さな緑色のものがほころんでやがて下からぱらぱらと花が開き始め、集まって長めの円錐を形成していきます。花は円筒状で三~四センチくらいの長さがあり、前にお稽古で使ったトリトマという花の鮮やかなオレンジ色に似ていました。力強さは感じられるものの、いまひとつ地味な存在と思っていたアロエでしたが 花が咲くと太陽を謳歌しているような陽気ささえ感じられます。アロエは南アフリカの原産です。葉は斑がはいるものもあり、棘の付き方も特徴のあるものがあるそうで、予想に反して、いろいろな種類があることがわかりました。
お正月にむけてのあるいけばなの講習会で、ひとつの株のアロエの葉いっぱいに金箔をつけたものが使われたことがあります。本物の金箔ではない、と説明されていましたが、金箔に覆われた様子に、この植物が水がなくても長い時間そのままでいられるという秘めた強さを感じました。地味に見えるアロエも精一杯お化粧をして、新しい年を迎える姿になっていました。
一見引っ込み思案のこの植物ですが、あのラテン系の花を思って今年はひとつ違う華やかな表情をさせてあげようか、と思ったのでした。(光加)