今月の料理〈2月〉_みぞれ鍋
みぞれ あられ 時雨 卯の花 木の芽 みな季語なのですが、利休 いとこ しのだ 磯部 土佐と加えると、これらの共通項っていったいなんでしょう。食いしん坊さんならすぐわかるかも知れません。
みぞれは大根を摩り下ろした所謂、大根おろしを使った料理。あられは霰餅の略で料理に使う場合はお菓子の霰よりもっと小さくしたものを使います。よくお茶漬けのもとに入っている小さくて丸い香ばしい粒々といえばおわかりいただけると思います。お料理によってはこれをさらに細かくして、まぶしたり、衣にして揚げ物にしたりします。時雨は蛤の時雨煮や牛肉の時雨煮でご存知の方も多いはず。多くは生姜をきかせた佃煮などをこのように呼んでいますが、時雨煮には諸説あり必ずしも生姜を使ったものをさすとは限りません。卯の花はおから、木の芽は若い山椒の葉、などをつかったものです。利休は利休焼や利休あんなどゴマを用いた料理に、いとこは小豆を使用したもので南瓜や蓮根のいとこ煮などは、家庭でもよく作るお惣菜です。しのだは油揚げ、磯辺は海苔、土佐はもちろん鰹節を使ったものです。
立春も過ぎましたが、あとひと月ほどは寒い日が続きます。一月の半ばから三月の声を聞くまでが冬本番といったところでしょうか。土鍋の出番も多い頃です。
今回はシンプルこの上ない鍋料理を。旬の大根をたっぷりと使ったみぞれ鍋です。雪見鍋などと呼ぶこともある、色も素材も思いっきり精進の鍋です。
作り方はいたって簡単。鍋に濃い目に出しを引き、ここに絹ごし豆腐をいれて豆腐を温めます。大根はおろして水気をきり、軽く絞ります。大根臭さが気になるようでしたら、さっと水洗いをしてください。くつくつと煮立った鍋に大根をいれ熱々のところをぽん酢で頂きます。薬味は葱や生姜、海苔、柚子こしょう、かんずり、などで。材料が材料だけに出汁を奢るのをお忘れなく。半透明の大根おろしが本当のみぞれのようで、つくづくすばらしいネーミングだと思います。
でも、余りにもシンプルで、と思われる方はここに薄切りにした豚のさんまい肉などいれて楽しんでみてはどうでしょう。何をプラスしてもけっこうおいしくいただけます。(岩井善子)