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浪速の味 江戸の味(十月) 梨【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2024年9月26日 作成者: mitsue2024年9月26日

新高(左)とあきづき

全国区で活躍している梨の妖精「ふなっしー」は船橋市のゆるキャラです。船橋市のある千葉県は梨の収穫量、栽培面積とも全国一で、栽培が盛んな臼井市、市川市、鎌ケ谷市などでは8月から10月にかけて数種類の梨が収穫され、多くの人が梨狩りに訪れます。

千葉県の梨栽培は江戸時代の1700年代後半から広まったと言われています。水はけのよい火山灰の土壌は梨の栽培に適しており、温暖な気候も味方して、大消費地である江戸で高級品として喜ばれました。農家の女性が高下駄を履いて頭上の梨を収穫する古い絵が残っています。その後土壌や品種の改良を重ねて一大生産地に発展していきました。

千葉県の梨は、7月下旬の「幸水」に始まります。私が訪れた9月は1998年に登録された新しい品種の「あきづき」が最盛期でした。「幸水」「新高」「豊水」という人気の三品種を掛け合わせた「あきづき」は溢れるほどの果汁と糖度の高さが特徴です。

また、鳥取県産が知られる「二十世紀」も、実は千葉県松戸市で発見された苗木から栽培が始まったそうです。

江戸の梨は、落語「佃祭」にも登場します。佃祭を舞台に、昔、命を助けた女性に今度は自分が助けられるという古典落語。当時、歯痛に悩む人は、歯の神様として知られる戸隠神社へ祈りを捧げ、梨を川へ流す風習を行っていました。この風習が「佃祭」のサゲに登場するのですが、現代ではあまり知られていないのでサゲの前で噺を収めることが多いようです。

因みに、戸隠神社に祀られている神様、九頭竜大神は梨が大好物で、歯痛に悩む人は竜神様へ梨を供え、三年梨絶ちをすれば必ず治ると言われていたそうです。ジューシーな梨は確かに竜神様が好みそうですし、甘い梨の実は虫歯を誘いそうではあります。歯磨きに励みながら秋の日射しを受けて実った梨を堪能いたしましょう。

顔に熱き日射しや梨を捥ぐ  光枝

第十七回 カフェきごさいズーム句会 句会報(飛岡光枝選)

caffe kigosai 投稿日:2024年8月29日 作成者: mitsue2024年8月29日

第十七回「カフェきごさいズーム句会」(2024年8月17日)句会報告です。(  )は添削例。
「カフェきごさいズーム句会」はどなたでも参加できます。ご希望の方は右の申し込み欄からどうぞ。

第一句座              
【特選】
いつの間に椋鳥の樹となりにけり     斉藤真知子
黒揚羽揺れる木漏れ日泳ぎゆく      早川光尾
(真昼間の木漏れ日泳ぐ黒揚羽)
墓洗ふ会つたことなきはらからの     前﨑都
魂もバツタになりしファブールかな    周龍梅
(魂のバッタとなりてファーブルかな)
秋立つや男の家事をひとつづつ      花井淳

【入選】
うなぎ食うて女の一生長々し       葛西美津子
六分の一切れを買ふ初西瓜        上田雅子
けさ秋の一舟川を下りゆく        斉藤真知子
開校と閉校の碑や晩夏光         村井好子
朝顔のゆゑに家居と決めにけり      たきのみね
(朝顔の咲きつぎ家居と決めにけり)
首里城の槌音高し沖縄忌         上田雅子
(首里城の槌音高く沖縄忌)
喜雨休み煙管ぷかぷか山守は       前﨑都
(山守は煙管ぷかぷか喜雨休み)
蜩や五輪応援午前五時          村井好子
墓参り藪蚊一匹つれ帰る         矢野京子
夏終わるオンザロックの氷コロン     早川光尾
(夏終はるオンザロックの氷コロン)
終戦忌けふの日記を書き終はる      矢野京子
梨を食ふ父の時代の名の梨を       たきのみね
(梨を食ふ父の時代の二十世紀)
黒葡萄夜のしづけさに熟しをり      伊藤涼子
(黒葡萄夜のしづけさに熟しゆく)
若き父ビールの髭で子をあやし      鈴木勇美
納涼会銀座に潮のかをりかな       鈴木勇美
(納涼会銀座は潮のかをりして)
しばらくはとまらせてをく蜻蛉かな    斉藤真知子
真夏日や電柱の陰バスを待つ       早川光尾
炎天や四天王像顔歪め          赤塚さゆり
ぽつぽつと叔母語りくれ広島忌      たきのみね
(広島忌叔母ぽつぽつと語りくれ)

朝顔や母はむらさき父は白        飛岡光枝
  

第二句座(席題・枝豆、馬肥ゆる)
【特選】         
天高く肥ゆるものあり吾と馬       斉藤真知子
朝取りの枝豆掛ける勝手口        赤塚さゆり

【入選】
馬肥へて牧夫に鼻を寄せにけり      伊藤涼子
(馬肥えて牧夫に鼻を寄せにけり)
枝豆の最後のひとつ子に譲り       赤塚さゆり
枝豆や母ほどうまく茹でられぬ      たきのみね
(枝豆や母ほどうまく茹でられず)
里山を離れぬ祖母や月見豆        藤倉桂
(山里を離れぬ祖母や月見豆)
接待やたんとゆがきてだだちや豆     矢野京子

枝豆を飛ばすや好きな人の前        飛岡光枝

今月の花(九月) パンパスグラス

caffe kigosai 投稿日:2024年8月28日 作成者: mitsue2024年8月29日

小さな実をたくさん付け、弧を描く「野茨」の枝、丸い葉と蔓の間に薄緑の丸い実をつけた「山帰来」がそろそろ花材として現れるころ、暑さのためにしばらく休みにしていたお稽古を再開しました。

花材として届けられた中に「パンパスグラス」がありました。包みの中から、若い緑色のまっすぐな茎が出ていて、先に行くにつれて細くなり、瑞々しく、勢いを感じさせる秋の花材のひとつです。長さは1メートルをはるかに超えます。

丸い鞘の周りに、鋏で注意深くやや深めの線を入れていき一周させます。この線の一か所に鋏の先をあて、鋏の片方の刃をさしこみ一気に線を入れます。すると鞘を作っている表皮が落ち、花があらわれます。

どこに線を入れるかにより、穂の長さが決まってきます。現れた少し青臭い銀緑の花穂に「あら、きれい!珍しいからもうこのままの長さで切りたくない」、出てきた花穂を傾けて下がり具合を見ながら「どの花器にしようかしら」、曲げられないまっすぐな線を見ながら「立派ね。このまま剣山に刺しても安定するかしら」などなど、教室のあちこちで声が上がります。

パンパスグラスはイネ科です。原産地は南アメリカですが、今ではニュージーランドなどの水はけのいい、温暖な気候の地域でも見かけます。ひとつの株からたくさんの茎を出す多年草で、大きいものは3メートルの高さにもなります。羽のようにふさふさとした花序が集まって一斉に揺れる様はなかなかいい光景で、風に揺れればその存在がぐっと増すことでしょう。それは気持ちよい秋風の様子でしょう。

すこし紅色がかったものもありますが、改良品種でしょうか。明治に日本に入り、庭などに植えられたそうです。いけばなで使う、乾かして着色をしたイタリアンパンパスもこの仲間です。

パンパスグラスは雌雄異株で、立派な花序をつけるのは雌株なのだそうです。この名は英語名ですが、もともとパンパスグラスはスペイン語で大草原〔pampa(パンパ)〕の草という意味だそうです。

そう、昭和の方ならおそらくご存じの、アルフレッド・ハウゼ楽団の「さらば草原よ」というタンゴの名曲がありました。こちらはスペイン語で(Adios Pampa Mia)。秋今宵、お稽古であまったパンパスグラスをいけて、風そよぐ銀色の花穂が揺れる大草原に思いを馳せてみましょうか。何十年か前に聞いたこの曲を、今はネットで探して。(光加)

第十六回 カフェズーム句会 句会報(飛岡光枝選)

caffe kigosai 投稿日:2024年8月3日 作成者: mitsue2024年8月3日

七月十三日のカフェズーム句会句会報告(飛岡光枝選)です。(   )は添削例。
カフェきごさいズーム句会はどなたでも参加いただけます。右の欄よりお申込みください。

第一句座              
【特選】
初めての糸瓜咲きけり黃鮮やか     たきのみね
(金色に初めての糸瓜咲きにけり)
首のべて亀の噛みつく大暑かな     葛西美津子
鰭ゆらし夏のよどみへ金の鯉      葛西美津子
三伏のま白き鳩の歩み来る       葛西美津子

【入選】
雲の峰マンタと泳ぐ太平洋        藤倉桂
夏を告ぐほほづき市や空青し      前﨑都
おさがりの今年ぴつたり夏帽子     矢野京子
(今年ぴつたりおさがりの夏帽子)
ベランダのトマトを添えて夏料理    早川光尾
(ベランダのトマトを捥ぎて夏料理)
サングラス親指ぐいと踏み出しぬ      村井好子
犬用の合羽も干され梅雨晴間      赤塚さゆり
早苗田の影悠然と浅間山        藤井和子
(早苗田に影悠然と浅間山)
老い二人ほどよき間合ひ冷し酒       前﨑都
(老い二人ほどよき間合冷し酒)
茄子漬の白き切り口雨あがる      たきのみね
取取のマカロン並ぶ梅雨晴間      赤塚さゆり
(取り取りのマカロン並ぶ梅雨晴間)
心太割箸の香もすすりけり       高橋真樹子
(割箸の香をすすりけり心太)
金魚鉢ちがふ景色に移さるる      斉藤真知子
梅雨しとどグロリオーサは赤増しぬ   上田雅子
トンネルを抜け青田波青田波      村井好子
(トンネルを抜けて押し寄す青田波)
異国語は音楽めきて夏の夜       鈴木勇美
おのづと手を合はせてをりぬ滝の前   前﨑都
(おのづから手を合はせけり滝の前)
海の日や新日本丸の風受けて      花井淳
(海の日や新日本丸風受けて)
母のゐし夏の夕暮れ琥珀羹       葛西美津子
この星を焼き尽くさんと酷暑かな    藤井和子
(この星を焼き尽くさんと油蝉)
神鳴や我が夜我が街撃ちぬきて     鈴木勇美
青い目の少女うるはし浴衣かな     伊藤涼子
月明に似たる糸瓜の花一輪       たきのみね

飛岡光枝出句
どぢやう鍋ポンポン船の遠ざかる

第二句座(席題・登山、鰻)
【特選】 
鰻やのメニュー松竹梅とかいろはとか  上田雅子      
(うな重や松竹梅とかいろはとか)
うな重やちょつと寄り道鰻塚      藤倉桂
(うな重やちよつと手を合はせ鰻塚)

【入選】
女郎蜘蛛住んでをるらし登山小屋    伊藤涼子
山登りケルンに積みし石ひとつ     斉藤真知子
不忍の池見下ろして鰻食ふ       上田雅子
(鰻食ふ不忍の池見下ろして)
登山口熊に注意の六ヶ条        高橋真樹子
近江町はうなぎ鰻の熱気かな      花井淳
(近江町うなぎ鰻の熱気かな)
一献や鰻白焼きあればよし        矢野京子
リハビリの後の一鉢うなぎかな      前﨑都
百寿まで生きると決めて鰻喰ふ     高橋真樹子

飛岡光枝出句
富士登山父母かくも若かりき

浪速の味 江戸の味(八月) 鰻の蒲焼(落鰻)【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2024年7月31日 作成者: mitsue2024年7月31日

土用の丑の日に鰻を食べて精をつけ夏を乗り切る。平賀源内が広めた鰻の宣伝文句と言われていますが、近年の猛暑でその思いは強くなり鰻の人気はまさに鰻上りです。

古来から日本人の大好物だった鰻。万葉集には夏痩せにいいという歌で登場。その後の時代も味噌を付けたり膾などにするなどして食べられていましたが、ほぼそのまま輪切りにしていたようです。鰻の輪切りは中国旅行で経験しましたが生臭く、食いしん坊の私でも一口食べただけであとが続きませんでした。

江戸時代、蒲焼が登場すると鰻は別格となります。その様子は池波正太郎の『鬼平犯科帳』にも描かれています。

「辰蔵が子供のころは、鰻なぞも丸焼きにしたやつへ山椒味噌をぬったり豆油(たまり)をつけたりして食べさせたもので、江戸市中でも、ごく下等な食物とされていたものだ。(中略)それが近年、鰻を丸のままでなく、背開きにして食べよいように切ったのへ串を打ち、これを蒸銅壺(むしどうこ)にならべて蒸し、あぶらをぬいてやわらかくしたのを今度はタレをつけて焼きあげるという、手のこんだ料理になった。これをよい器へもって小ぎれいに食べさせる。(泥鰌の和助始末)より」

こうして鰻の蒲焼は江戸で大人気となり、鰻がよく獲れた深川を描いた画には「江戸前大かばやき」の幟を立てた露店がよくみられます。

因みに鰻の養殖が日本(世界)で初めて本格的に行われたのも深川でした。明治十二年、川魚問屋、服部倉治郎が深川の池で鰻の幼魚(クロコ)を育てたところからスタートしました。

江戸時代の鰻はもちろん天然ものばかりでした。海で生まれた鰻は川を上り2~3年で成魚になり、8年ぐらいで成熟すると秋、産卵のため川を下り海を目指します。その鰻を「落鰻(下り鰻)」と呼び、秋の季語となっています。その頃の鰻は脂が乗って美味しいとされ、その鰻を簗で捕らえるのが鰻簗です。卵を抱えて下る鰻を獲ると思うと少々切ないですが、季節感も一緒に味わっていたのではないでしょうか。

養殖技術の発展は素晴らしく、鰻を安定していただけることは本当にありがたいことです。あまり欲張ることなく、海を目指す鰻を心に描きつつ、美味しい鰻を食べて残暑を乗り切りたいと思います。               (参考・鰻割烹 大和田「鰻の蘊蓄」)

  闇縫うて一夜落ちゆく鰻かな  光枝

今月の花(八月) 西洋菩提樹の花

caffe kigosai 投稿日:2024年7月28日 作成者: mitsue2024年7月31日

ラクセンブルグの西洋菩提樹(写真の右上に実がみえます)

ウイーンから車で30分ほどのラクセンブルグ(Laxenburg)。広大な公園に犬を連れた人や子供たちと散歩中のご夫婦。樹々の間を渡ってくる爽やかな空気を吸い込みながらゆったり時が過ぎていくと感じるのは、今回のいけばなの仕事の旅がウイーンですべて終わったからでしょうか。

ラクセンブルグ一帯はかつて貴族の狩猟の場でした。またハプスブルグ家にゆかりがあり、エリザベート、つまりシシーがフランツ ヨーゼフ1世と新婚時代をすごした土地です。「ラクセンブルグ ポルカ」もここの宮殿で生まれたルドルフ皇太子にヨーゼフ シュトラウスからささげられた曲で、2008年ウイーンフィルのニューイヤーコンサートにも演奏されました。

草月流のウイーン支部長のヘルガと彼女の門下でオーストリア在住の日本人Fさんと生い茂る樹々を眺めながら歩きました。まだ青い木の実や草むらの花の名前を教えていただいたり、大きな草刈り機にかられ立ち上る草いきれに記憶をたどりました。

リンデンバウムの花

立ち止まったヘルガが、これがリンデンバウム、(別名リンデン)と指さした先は高さ3~40メートルにもなろうかというひときわ大きな木でした。シューベルトの歌曲集、「冬の旅」の中にある(菩提樹)は日本でも知られています。この菩提樹は西洋菩提樹(リンデンバウム)または西洋しなの木という名前です。

私たちが知っている、その下で仏陀が悟りを開いたというクワ科のインド菩提樹とは異なります。また、日本の菩提樹は中国原産のしなのき科です。山地に生える大葉菩提樹もありますが、いずれも高さはせいぜい10~20メートルだそうです。

日本ではお寺などに植えられているからなのでしょうか、菩提樹をいけたことがなかったことに私は突然気が付きました。インド菩提樹の代わりに日本のお寺には日本の菩提樹が植えられているのでしょう。その実は数珠にも使われるそうです。

西洋菩提樹は夏にすこし黄色がかった花をかたまってつけ、蜂が蜜を集めにやってきます。でもこの時は先のやや尖った丸い葉の間にも花は見つけられませんでした。七月になろうとする今年のウイーンは異常に暑かったので、花は終わってしまったのかもしれません。

いつも自宅の庭から花材を切ってくるドイツの方に、お庭にこの木はありますか?と聞いたところ「自宅の庭は小さいからとんでもない。リンデンバウムは大きく成長するので街路樹に多いですね」と言われて納得しました。

ヘルガは「あそこにも若木が、あちらにも」と、すっと立っている1メートルほどのリンデンバウムの若木数本を見つけました。ヨーロッパのリンデンバウムの樹齢は千年近くになるものもあり、植物を大切にしたといわれるエリザベートも、この辺りのリンデンバウムを見ていたのでしょうか?もちろん、波乱に満ちた人生が待ち受けていることは彼女にはその時想像するすべもなく。(光加)

第十五回 カフェきごさいズーム句会 句会報

caffe kigosai 投稿日:2024年6月30日 作成者: mitsue2024年6月30日

2024年(令和六年)六月八日のカフェズーム句会、句会報告(飛岡光枝選)です。(   )は添削例。
カフェきごさいズーム句会はどなたでも参加いただけます。右の欄よりお申込みください。飛岡光枝

第一句座              
【特選】
父の日やカードで開ける父の墓         上田雅子
黒南風や苔を舐めとる鯉の口          葛西美津子
黴にほふ母のバッグの捨てられず        伊藤涼子

【入選】
酒盗ひと口冷酒ひと口八丁堀           花井淳
(酒盗ひと箸冷酒ひと口)
梅雨晴れ間キャベツ千切りシャキシャキシャキ  藤倉桂
(梅雨晴間キャベツ千切りシャキシャキと)
紫陽花の路地の奥なる書道塾          鈴木勇美
洗鯉あかね色の空惜しみつつ          矢野京子
ライラックこの街に住み二十五年 高橋真樹子
幾万の中の五百句夏ふかむ           斉藤真知子
火を恋ふる翅美しや虫篝            上田雅子
(焼き尽くす翅美しや虫篝)
下手な句をまだ捨てられぬ暑さかな       斉藤真知子
めまとひを払ひながらの案内かな        矢野京子
老鶯や筧を走る山の水             葛西美津子
鱚三十天ぷらにまた風干しに          葛西美津子
あぢさゐの道の果なき夫逝きて         花井淳
(あぢさゐの道の果てなし夫逝きて)
柚子の花旅のひと日の芳しく          伊藤涼子
五月雨の神社に赤き芝居小屋
          鈴木勇美
田水張り煙草喫ふ父眩しげに          早川光尾
(眩しげに煙草喫ふ父田水張り)
あぢさゐや傘とほり過ぐ塀の上         矢野京子
麦秋や砲声未だ鳴り止まづ           早川光尾

飛岡光枝出句
舌出すに似て薄羽の天道虫 

第二句座(席題、青梅、アマリリス)
【特選】
家中に籠の実梅の匂ひけり       斉藤真知子
そこいらの竿もて落とす実梅かな    前﨑都

【入選】
青々と瓶に沈めて梅酒かな       上田雅子
(青々と瓶に沈みて実梅かな)
アマリリスけふ開くかと思ひしが    斉藤真知子
つば広の帽子深めにアマリリス     前﨑都
青梅のぷかりぷかりと瓶の中      斉藤真知子
Tシャツの魔女の行方にアマリリス   高橋真樹子
(猫つれて魔女の行方やアマリリス)
アマリリス遠く聞こえて来るロンド   たきのみね
女冥利真夜の厨の梅仕事        藤倉桂
青梅を一つ拾ひていかにせむ      伊藤涼子
ご隠居の自慢の実梅届きけり      赤塚さゆり

飛岡光枝出句
飛梅やいよいよ青き実をつけて

今月の花(七月) 金糸梅・未央柳

caffe kigosai 投稿日:2024年6月20日 作成者: mitsue2024年6月20日

ヒペリカム

未央柳

五月も末になると、早春から次々と花を咲かせ季節を彩った花木の枝たちは、芽吹きをへて瑞々しい葉をつけて登場します。

花を付けた花木がすべて無いわけではなく、代わりに令法や梅花空木、山法師や銀香梅など、目に涼しい白色の美しい花を咲かせる枝が目に付くようになります。

「この金糸梅はヒペリカムとどう違いますか?日本でのお稽古で使って気に入ったのでロンドンで庭に欲しいと思ったので名前を聞いたらヒペリカム,(ヒぺリクム)と言われました。とても似ているのだけれど」ロンドンから一時帰国している生徒さんの質問でした。

ヒペリカムと呼ばれる植物は200種類もあり、オトギリソウ科でヒペリカムは属の総称です。北米やヨーロッパの原産で、この生徒さんが植えようとしているのは、目が覚めるような鮮やかな黄色い花が特徴のヒペリカムです。

実が付いたときには種類によりグリーンのほかに白やピンク、赤、紫赤など、濃い緑の葉とともに楽しめます。丈は高くはなく葉は茎に対生、生命力が旺盛で地下茎が発達して、増えすぎることもあり庭に植えるのも考えて植えた方が良いそうです。

似たようなものは日本にもあり、山野に自生する多年草のおとぎり草はやはり黄色い花をつけるものがあるということで、秋の季語になっています。

お稽古でいけた金糸梅ですが、花が梅の形に似ているのでこの名がつきました。花の中心には短い黄色の雄蕊を四方に伸ばしています。金糸梅は初夏に花をつけ、中国が原産です。

金糸梅に似ているものに未央柳があります。柳、という名前は葉が柳に似て、やや細く 葉裏は少し白いのです。共に五弁の花びらを持つ金糸梅と未央柳はいずれも枝ぶりがよく、流れるような曲線を見ることもあり、花がなくなってもこの線だけでいけばなの美しさを十分表現することが可能です。

未央柳は中国原産の園芸種で美女柳とも呼ばれます。枝先につく花の中央に多数の雄蕊があり、あの国独特の服を着た柳腰の美女を思い描きます。

細い枝をいいけるときはくるくると回り、緑の葉の裏は粉を吹いたような緑色なのでどの表情が一番かと見定めるまでが大変です。

さて、この季節に皆さんが出会う黄色の花をつけた植物は何でしょうか?金糸梅(Hypericum patulum) 、また未央柳(Hypericum chinense)、または(Hypericum calycinum)などのヒペリカム。いずれも頭にヒペリカムとつきますので近縁の植物です。

写真はヒペリカムと未央柳、このふたつは10メートル離れたところに咲いていました。生命力の強いヨーロッパ原産のヒペリカムにおされて中国原産の未央柳が消滅しないように、来年もひそかに気にかけてその道を通ってみようと思いました。(光加)

 ≪報告≫  第六回「花仙の会」2024 初夏の巻 

caffe kigosai 投稿日:2024年6月2日 作成者: mitsue2024年6月2日

「カフェきごさい」サイトで毎月(今月の花)を執筆する草月流福島光加がいける花6作品に、参加者が俳句を作り飛岡光枝が選をして一巻を巻き上げる「花仙の会」。第六回となる「初夏の巻」は、5月23日に東京都千代田区飯田橋の「東京レジデンス」にて開催されました。前回はコロナ前の2018年の冬に開催、ほぼ5年ぶりの今回は30名以上の参加者による花と俳句が展開される活気あふれる3時間となりました。

山法師が吹雪く花に始まり、糸芭蕉、アイリス、トルコ桔梗、木賊と涼し気な植物がつぎつぎといけられ、第六花の平和を願う向日葵が玻璃の花器にいけられると会場からため息がもれました。入選の句は日本画家杜今日子さんがその場で書にしたため、花とともに入選者にお持ち帰りいただきました。以下、花6作品と俳句6句のコラボレーションをお楽しみください。(光枝)
(写真をクリックすると大きくなります)撮影:花井淳


【第一の花】
山法師・縞がま・擬宝珠・ダリア
【第一の句】
「はるかより帆船来たれ青嵐」光枝

【第二の花】
海藻・モカラ・糸芭蕉の葉
【第二の句】
「雲の峰まで噴き上げよマーライオン」和華子

【第三の花】
土佐水木・ジャーマンアイリス・杜若の葉
【第三の句】
「まづ顔が怖き師のあり走馬灯」容子

 

【第四の花】トルコ桔梗・金宝樹
【第四の句】
「金魚には告白してる恋いくつ」栄順

【第五の花】エピデンドラム・木賊・豆
【第五の句】
「秋近し望遠鏡に土星の環」道子

【第六の花】着色オーガスタの葉・向日葵・ヒペリカム
【第六の句】
「反戦歌声振り絞る夏の果て」遊歩

今月の花(六月) オクラレルカ(長大アイリス)

caffe kigosai 投稿日:2024年5月30日 作成者: mitsue2024年5月30日

気持ちの良いこの季節、端午の節句もあり花菖蒲、杜若などをいけることが多くなります。しかし近頃はこの二種類の花、町の花屋さんでは期間が限定されるものの花は何とか手に入りますが、葉の入手がだんだん難しくなっていると聞きました。

一方、この二種類に類似していて一層立派な葉をもつ植物にオクラレルカがあります。その葉は早春からだんだんと長くなって出回りはじめ、4月頃からは立派なものが手にはいります。実際に花菖蒲や杜若の葉が入手困難な時は、お稽古では代用されることもあります。

剣のようにシャープな葉先のオクラレルカの葉の幅は、広いところで2~3センチとなり、数枚の葉でひと株になっています。この季節の緑にふさわしく見た目にもすがすがしい植物です。長大アイリスとも呼ばれ、長いものは1メートルにもなろうかというその葉の姿が私は好きで、よく花材としていけます。

原産地はトルコで、トルコのアイリス(turkish iris)という英語名があります。

沖縄のオクラレルカの花

先日、花屋さんから届いたお稽古用の花材が包まれた古新聞から、紫がかった薄いブルーの花びらが顔を出していました。早春にいけるアイリスの背がきゅっと伸びたようなまっすぐな茎は、80センチ~100センチもあるようでした。花屋さんからの花材表には「オクラレルカの花」と書かれていました。

アヤメ科の植物なのにこの花が出回らないのはなぜだろう?きれいではないのだろうか、花がとても繊細で輸送に向かないのだろうか。それとも出荷される時期が花菖蒲や杜若と同じなので、生産者の方が遠慮しているのかしら。ずっと不思議に思っていて、この季節になると私の中でこの疑問が繰り返されていました。

やっと会えたオクラレルカの花は、紫がかった薄いブルーがなんとも優し気でアイリスと似たものでした。花びらの中央に黄色い部分があるのもアイリスと似ています。触れてみると花弁はアイリスよりやや薄く感じました。

反面、古新聞を取ると、花の下のまっすぐな緑の茎から直についている苞の中に新たな花が包まれているという、たくましい自然の姿も見せてくれていたのです。

沖縄の大宜味村はオクラレルカで知られていて、3月末には花が咲くと聞きました。いい空気を吸って開くたくさんのオクラレルカの花を思わず想像しました。長い間待って出会えたオクラレルカの花、また来年あらためてこの花をじっくり観察してみたいものです。(光加)

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「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十七回 2026年4月11日(土)13時30分
      (原則第二土曜日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

Catégorie

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スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
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