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今月の花(三月)柘植の花

caffe kigosai 投稿日:2026年2月28日 作成者: mitsue2026年2月28日

和柄の赤い布のケースにいれられた柘植の櫛。それは初代家元の奥様に頂いたものです。何かの集まりにその場にいた女性全員にくださいました。晩年は車いすでしたが豊かな白髪を後ろで短くちょこんとまとめられ、付き添いの方の手をかりて本部の会館にお出ましのところを何度かお目にかかりました。

柘植の櫛は手入れがよいと一生ものと言われます。柘植の枝をいけてみて、その意味がわかる気がしました。見た目が細いわりに鋏を入れると固く、四画い断面は緻密です。なるほど印鑑や彫刻にも使われる理由もわかります。

柘植はツゲ科のツゲ属で高さは5メートルにもなるそうですが、私は家の庭に植えられていたおよそ1メートルくらいのものしか見たことがありません。光沢のある1センチちょっとの卵型の葉が特徴で、春には枝先に小さな薄黄色の花が咲きます。

柘植の花は一個の雌花の周りを雄花が取り囲んでいてあまり目立たないそうで、家の柘植の花には気が付きませんでした。葉の付け根や枝先にまとまって咲くそうです。

柘植の枝が固いこと、枝分かれが多いことから、枝をまるごと漂白して刈込み、丸い形にして柘植玉と呼びいけばなの大作に使うこともあります。

柘植の櫛の手入れには椿油がいいといわれます。105才までしっかりしていらした、大奥様と呼ばれた初代家元夫人の見事な白髪は柘植の櫛で整えられていたのでしょう。

会館でお目にかかった時の車いすからの呼びかけはいつも「あなたたち、勉強してる?しないと止まるわよ!」

柘植の櫛を手に取るたび、あの声が聞こえてきます。(光加)

加賀の一盞(三月)梅貝

caffe kigosai 投稿日:2026年2月22日 作成者: mitsue2026年2月22日

ご存じ加賀百万石は前田家、その家紋は梅鉢である。この梅鉢にちなんだ商品は多く、その代表が福梅。家紋そのままの形を最中にしたものでお正月にどの家庭でも食される。その他、梅の字をつけた食品は数多い。今回は冬から春に美味しい巻貝の一種、梅貝としたい。

主に能登半島以西の日本海側で漁れる貝類でバイ貝と称されるが、ご当地加賀ではもっぱら梅貝と表示される。ツブガイの一種で殻の色は黄土色、大きさは大きくて全長15センチくらい。身は乳白色をしていて、一番奥にはこげ茶色の肝がついている。ツブガイほどの硬さは無く、丁度良い歯応えだ。主に刺身や酢の物、おでんの具として一般的でどこの魚屋、スーパーでも売っている。

先ずはお刺身からご紹介しよう。スライスして盛り付けると白瑪瑙のような乳白色が反り返り、新鮮さが見た目でも解る。絵付けの皿との相性もぴったりだ。加賀の旨味醤油をつけて頂くと、絶妙な歯応えがたまらない。これぞ春の響きと感じる加賀人は私だけではない。もちろん加賀能登の地酒とマッチすることは言うまでもない。雪の空がようやく春の光を纏い始めるころ、欠かすことの出来ない感覚だ。

続いておでん、おでん屋の大鍋にはいろいろな具材と共に梅貝が殻ごと入っている。注文すると殻から身を出してお皿にごろりと盛り付けてくれる。最後の肝の部分も丁寧に出す。もちろん乳白色の身も美味だが、濃厚な味の肝がたまらない。おでんには欠かせない名残りの加賀源助大根に添えて頂くと梅貝の味が大根に染みわたり格別となる。おでんには燗酒と合わせるのが一番、ついつい進んでしまう。

この季節、金沢の和食屋で梅貝の置いてないところはない。また洋食屋でもカルパッチョやパスタの具材など広く使われている。金沢の早春の歯応えを是非ご体感ください。

梅貝の春の歯応へ能登の酒 淳

「カフェきごさいズーム句会」二月報告 飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2026年2月21日 作成者: mitsue2026年2月22日

第三十五回(2026年2月14日)の句会報告です。(  )は添削例。この句会は見学ができます。右の問い合わせ欄からお気軽にどうぞ。

第一句座              
【特選】
枯れながら花ぶら下がる芭蕉かな    葛西美津子
(芭蕉枯れ大きな花のぶら下がる)
満作や水音高き酒の蔵         花井淳
銀盤のスピンかたかご花開く      伊藤涼子

【入選】   
目の限り大極殿址の草萌ゆる      田原眞知
(目の限り大極殿址草萌ゆる)
日脚伸ぶ立ち話から長話        赤塚さゆり
雪嶺に抱かれ眠る琵琶の湖       藤井和子
(雪嶺に抱かれ眠る湖ひとつ)
涅槃像ひとひざ進め鑑賞す       伊藤涼子
(涅槃像ひとひざ進め手を合はす)
やらはれて老いぼれ鬼は躓きぬ     矢野京子
凸凹の二人も良けれバレンタイン    高橋真樹子
菜をきざむ音にも春の来てをりぬ    斉藤真知子
マフラーに鼻まで埋まり英単語     鈴木勇美
(マフラーに鼻まで埋づめ英単語)
混沌の世界明けゆく初日かな      上田雅子
ひとり居の三日支えるおでんかな    前田悠
立春の目白頬白木から木へ       藤倉桂
(立春の目白鳴きつつ木から木へ)
結ばれしあまた願いや初詣       上田雅子
(結ばれて願いあまたや初詣)
初雪や小さきうさぎをベランダに    上田雅子
春の風邪母のまなざし独り占め     藤倉桂
退職の朝に添えるや寒卵        鈴木勇美
(退職の朝ぱかと割る寒卵)
芹摘むや浸み込む泥はそのままで    田原眞知
(芹摘むや浸み込む泥はそのままに)

飛岡光枝出句
バレンタインデー炎の色の薔薇一本

第二句座(席題・猫柳、春の雪)
【特選】        
猫柳野川に鯉の土煙         藤倉桂
ねこやなぎ誰か手を振る向かう岸   矢野京子    
【入選】
工房に硬き木の椅子春の雪      藤倉桂
半分は降る間に消ゆる春の雪     花井淳
春雪に濡れて届きし訃報かな     葛西美津子
早出してうさぎ当番春の雪      葛西美津子
着納めとなる制服や春の雪      伊藤涼子
春の雪二上山を包むやも       前田悠
(春の雪二上山を包むかに)

飛岡光枝出句
大拙の水四角三角猫柳

「カフェきごさいズーム句会 1月」報告 飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2026年2月7日 作成者: mitsue2026年2月7日

第三十四回「カフェきごさいズーム句会」 (2026年1月10日)の句会報告です。(  )は添削例です。

第一句座              
【特選】
初明りしらかば林弾きつつ 花井淳
真ん中に大きな目玉煮凝れる     葛西美津子
大寒や波もて波を砕く音  斉藤真知子
寒梅の白きは昨夜の月の色      葛西美津子

【入選】   
何の咎彷徨へる熊撃たれをり     高橋真樹子
(何の咎彷徨へる熊撃たれけり)
あれこれと抱負の浮かぶ初湯かな   鈴木勇美
(あれこれと煩悩浮かぶ初湯かな)
薺打つ兄も弟も起こされて      藤倉桂
身欠き鰊ほろと煮崩る霜夜かな    葛西美津子
鶴亀の水引踊る屠蘇祝い       立花武
(鶴亀の水引躍る屠蘇祝ひ)旧仮名遣いの作品の場合
輪飾りの稲を雀の食べ尽くし     矢野京子
淑気満つ花嫁のれんくぐりいる    立花武
(淑気満つ花嫁のれんくぐり入る)
芹なづな雪を払ひて摘みにけり    斉藤真知子
龍の玉浄めの水のかたはらに     葛西美津子
火の護符が舞ひに舞ひたる大どんど  藤倉桂
初旅やササラ電車の勇ましく     鈴木勇美
飾取る藁の匂ひの名残かな      伊藤涼子
(飾取る藁の匂ひも名残かな)
南洲を振り向かせたる寒牡丹     花井淳
夜神楽の荒ぶる神も酔ひにけり    斉藤真知子

飛岡光枝出句
野には早青むものあり初筑波

第二句座(席題・花八手、春を待つ)
【特選】        
白鳩のくぐもる声も春を待つ      葛西美津子
顔見せぬ猫の鳴き声花八手       高橋真樹子
 
【入選】
ばさばさと風に音立て花八手      矢野京子
スカートはタータンチェック春を待つ  花井淳
故郷に母は一人や花八つ手       藤倉桂
ほんたうに来るのかしらと春を待つ   高橋真樹子
花八手横切る宇宙ステーション     花井淳

飛岡光枝出句
神宮の森の深さよ花八ツ手

今月の花(二月)辛夷と木蓮

caffe kigosai 投稿日:2026年1月25日 作成者: mitsue2026年1月25日

辛夷

木蓮

(今月は2018年2月のエッセイをお届けします)

春浅いころ銀色の毛を密生した花芽を見つけたら、それは辛夷かもしれません。その形が、にぎった小さな拳に似ているところから名づけられたともいわれています。

枝は真直ぐなものが多く、花は元に一枚小さな葉をつけて開きます。細めの六枚の花弁は薄く傷つきやすいので、私たちは注意していけます。白い花は開ききると中の芯の部分まで見せて、やがて散っていきます。

辛夷に少し遅れて、木蓮が大きな花を開きます。木蓮というと通常は紫木蓮のことをさし、花弁は外が濃紫で中は薄紫です。色の濃いものは、からす木蓮と呼んでいます。

春の灯がともったような白木蓮も街路樹や庭木として目を楽しませます。木蓮の花は上を向いて咲き、辛夷と比べればいずれも花びらが厚く、長さは十cmくらいになります。木の高さは十五mにも伸び、散歩道で白木蓮の小舟のような形の花びらが落ちているのをみつけると、どこから舞い降りたのだろうと思わずあたりを見上げます。

草月の初代家元と二代目家元が厚い信頼を寄せていた秘書の方とお話をする機会があったのはもう何十年も前でしょうか。彼女のいける花は花材の取り合わせに、華麗さと同時に繊細さも備えていて大好きな作家でもありました。

辛夷の花と彼女を囲んで何人かで話をしたことがありました。その折「辛夷の蕾の先は北を向いているのよ」と言われてもすぐには理解できませんでした。

辛夷や木蓮の蕾は、日の当たる暖かい南側に芽の一部が膨らみ、先はその反動からか反対の北をさすというのです。
そういえば目の前の辛夷の芽の先はそろって同じ方向を向いていました。え!本当ですか?知らなかった!と私も声をあげた一人でした。

山の中で道に迷い、コンパスを持っていなければ辛夷や木蓮の花芽を見よ、というのでしょうか。辛夷と木蓮は[方向指標植物]またはコンパスプラントと呼ばれ、赤目柳などもこの部類に入るのだそうです。

花をいける事の背景には大きな自然のルールがどっしりと存在していることをいまさらながら実感し、辛夷や木蓮の花が花芽をたくさんつけた開花前のまさにその時期を、大自然の中でめぐりあって確かめたいと毎年思っています。(光加)

今月の花(1月)南天

caffe kigosai 投稿日:2025年12月25日 作成者: mitsue2025年12月31日

福島光加 作

お赤飯にその葉が添えられていたり、庭の鬼門とされる方角に植えられていることで南天に出会うことがあるかと思います。これは、南天が<難を転じる>ということで縁起の良いとされる植物のひとつだからです。

お正月には赤い実のつく南天(Nandina domestica)をいけることが多くあります。白南天という白い実をつける南天もありますが、こちらの葉は紅葉しません。

17世紀に渡来したと言われるヒイラギ南天(Mahonia japonica)と言われる種類は、光沢のある葉がヒイラギのようにとがっています。南天と言われますがこの種類は学名にNandinaがつかず、先の南天とは違い、黄色の小さな花が咲きます。

ヒイラギ南天(門下の作品)

秋になると、枝の先に放射状についた黄褐色や紅色の葉が目を引きます。中心にある7ミリ程の粉をふいたような黒紫の実に注目!この秋の展覧会では、繊細な花びらの糸菊といけた門下がいて、季節感を強調した作品となっていました。

また細羽ヒイラギ南天と言われるものは、いけばなをいける方なら岩南天という名でおなじみでしょう。

新年、我が家は赤い実をつけた南天をいけてみたいと思っています。飾るところが問題、と初心者の若い方がおっしゃるので、実南天と言って、南天の実だけを若松一本とドアに飾ったらいかがかしら?水を入れる小さなチューブに生のお花を一、二本いれ、水引きをかければお正月を迎えられますよ!!

私たちの流派のいけばなは、レリーフといって壁に制作するレッスンも教科書にはあります。それをいかすチャンスではないでしょうか、と。

南天をたくさんいけ、もし難が押し寄せたら南天を味方に、幸いに転じる年にしていこう、と思っています。

皆様も健康に気を付けられて、2026年が良い年になりますように。(光加)

加賀の一盞(1月) かぶら寿し

caffe kigosai 投稿日:2025年12月22日 作成者: mitsue2025年12月22日

 お正月にはやはりお雑煮、全国それぞれ味付け、具材、餅の種類など特色がある。

 ご当地加賀の金沢は極めてシンプル、醬油味のすまし汁に角餅、三つ葉と削り節を乗せただけ。その理由は雑煮椀のまわりには豪華なお節の重箱、鰤の刺身、治部煮などたくさんのご馳走が並んでいて、お雑煮に具材を入れる必要が無い百万石なのだ。
 
 そこで本題、金沢の正月に無くてはならないかぶら寿し。材料はこの季節みずみずしさと甘みを増した青首かぶら、同じく脂ののった天然鰤、そして酒米にも高級な山田錦の米糀。作り方は皮をむき厚めの輪切りにしたかぶらに切れ目を入れ3日ほど塩漬けにする。別に塩漬けにした鰤のそぎ切りをかぶらにはさみ、糀とお米で作った甘酒で漬け込む。7日間ほどで出来上がる。
 
 むかし母方の実家に行くと、おばあちゃんがあっという間に治部煮を作り、自分で漬けたかぶら寿しを出してくれた。自作するのが当たり前だったころの話。ただかぶら寿しは長持ちしない、漬けて2週間もすれば酸っぱさが増してくる。今でも買い求めるときはお店の人に美味しく頂ける日にちを聞くことが肝心だ。
 
 お節の箸休めにひとつまみ、雑煮を食べながらひとつまみ、何もなくても燗酒にひとつまみ、価格は高めだが金沢文化を秘めた味は見のがせない。

頬はさむ君の手の平かぶら寿し  淳

「カフェきごさいズーム句会」報告 飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2025年12月21日 作成者: mitsue2025年12月22日

第三十三回「カフェきごさいズーム句会」(2025年12月13日)の句会報告です。(  )は添削例です。

第一句座              
【特選】
冬館あの日のままのチェスの駒      鈴木勇美
もうすこし遠くへ吹かれたき落葉     斉藤真知子

【入選】   
気遣ひは少し温めの柚子湯かな      赤塚さゆり
のぞき見る水の鏡に冬もみじ       矢野京子
土塊の温かき秋球根植ふ         早川光尾
(土塊の温かきかな秋球根)
浮雲の影まろびゆく大枯野        伊藤涼子
悠然と潮吹く鯨小笠原          藤井和子
そばがきや遠き昔の母の笑み       藤井和子
仲代が木の葉時雨の旅を逝く       早川光尾
その中の一番太き大根買ふ        斉藤真知子
白い息切れすぎ無用町研ぎ屋       立花武
(息白く町の研ぎ屋の包丁研ぐ)
初雪やわが青春の荒井由実        矢野京子
クリスマス天にも地にも星あふれ     伊藤涼子
太古の光メタセコイアの冬紅葉      早川光尾
母の手を離せばすぐに悴んで       鈴木勇美
冬雲に触れんばかりや海猫(ごめ)のこゑ  葛西美津子
花枇杷や五島遥けきマリアさま      花井淳
(花枇杷や五島遥けきマリア像)
とりどりの虫の寝床や枯葎        藤倉桂
(とりどりの虫の寝床や枯葎)

飛岡光枝出句
煮凝にあるかなきかの鮒の骨  

第二句座(席題・狐、障子)
【特選】        
貼り立ての障子に朝の来てをりぬ     斉藤真知子
臥す母の命養ふ障子かな         藤倉桂     
薄々と模様の浮かぶ障子かな       矢野京子
(薄々と雪花浮かぶ障子かな)
訪ね来て障子に映る人影や        前田悠
(訪ね来て障子に映る影やたれ)

【入選】
子の部屋の破れ障子はそのままに     斉藤真知子
このところ夜遊びの狐ばかりかな     高橋真樹子
(この里は夜遊び狐ばかりかな)
耳立てて黄泉の声聞く狐かな       葛西美津子
膝の子の絵本に狐鳴く夜かな       高橋真樹子

飛岡光枝出句
白障子母の寝息を確かむる

「カフェきごさいズーム句会」報告 飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2025年12月18日 作成者: mitsue2025年12月22日

第三十二回「カフェきごさいズーム句会」(2025年11月8日)の句会報告です。(  )は添削例。
「カフェきごさいズーム句会」は世界中どこからでも参加可能です。(右の案内を御覧ください)見学も大歓迎です。

第一句座              
【特選】
松林の松奔放に冬に入る       斉藤真知子
もふ猫に狙はれてゐる障子かな    斉藤真知子
  (はや猫に狙はれてゐる障子かな)
部屋中に酢橘の香る夕餉かな     上田雅子   
【入選】   
機嫌よきうちに写真を七五三      葛西美津子
利酒のちよこを干しては目を細め    矢野京子   
絹雲や赤く染まりて暮れ残る      早川光尾
晩秋に脱皮のごと引っ越しす     立花武
  (暮の秋脱皮するごと引つ越しす)
綿虫にけふはやさしき曇り空
     葛西美津子
茶の花や少し猫背の羅漢様       村井好子
信楽の厚き湯呑や今朝の冬       藤倉桂
古墳ごと甘きくれなゐ柿の山      高橋真樹子
  (古墳抱き甘きくれなゐ柿の山)
秋雨や山芍薬の実の真つ赤       藤倉桂
(秋の雨山芍薬の実の真つ赤)
秋の夜にモロッコワイン雄弁に     立花武
穏やかなけふの血圧冬紅葉       花井淳
山茶花の散るや雀のこゑの中      葛西美津子
つる草に足取らるるや火恋し      藤倉桂
昆布締めの鯛に散らせし黄菊かな    矢野京子
  (昆布締めの鯛に散らして菊の花)
哀しみの背中揺らして熊穴へ      藤倉桂
柊の花一輪のかをりかな        斉藤真知子
燃やしたきもの一抱へ秋の暮      葛西美津子
  (秋の暮燃やしたきもの一抱へ)

飛岡光枝出句
 足裏美しき半跏思惟像冬深む
   

第二句座(席題・焼芋、冬紅葉)
【特選】        
 焼芋屋元安川のほとりゆく     矢野京子
【入選】
 焼芋をガザの紙面に包み込む    高橋真樹子
(焼芋をガザの紙面に包みけり)
 凩の角を曲がれば焼芋屋      葛西美津子
 焼いもや薄暗き路地晴れやかに   藤倉桂
 神の山祈りのごとく冬紅葉     前田悠

飛岡光枝出句
 今年また同じ顔して焼藷屋
   

加賀の一盞(12月)能登の海鼠

caffe kigosai 投稿日:2025年11月21日 作成者: mitsue2025年11月21日

これを最初に口にした人は大したものだ、と世間でよく言われるものがある。その最たるもののひとつに海鼠がある。まさに海の鼠のような形をしている。ただ髭と足と尻尾が無いだけだ。

この少しグロテスクでもある海鼠、特に能登の海鼠の素晴らしさを今回紹介したい。

11月6日と言えば北陸から山陰にかけての日本海で蟹の解禁日である。その同じ日、能登の海鼠漁も解禁になる。蟹よりも海鼠が待ち遠しく感じる好き者が私を含めて金沢には多い。料理屋で蟹をむさぼっている横で一人寡黙になまこ酢をつまみ、温め酒をちびりちびり楽しむ。これぞ至福のひととき。こりとした歯触りから嚙み切ると淡い風味、お店の三杯酢がからみつく。

ここでさらに海鼠の楽しみをふたつ、そのひとつが海鼠腸(このわた)。なまこの内臓を塩辛にしたもの、身の淡白さからはかけ離れた磯臭さが凝縮されている。これこそ旨味のある能登の地酒の燗が絶妙、ひと口で広がるなまこの磯の香をさらに濃厚にして流してくれる。盃にこのわたを少し入れ燗酒を注ぎ頂く、これこそ通。

もうひとつ、これぞ珍味の王様、干くちこ。金沢ではその高級さから、おくちことも言う。なまこの内臓、その卵巣のみをひと筋ひと筋紐に掛けて干したもの。一辺7センチくらいの三角形が一枚で、作るのに数十キロの海鼠が必要になる。これを少し炙って酒の肴にする。ここまで来ると食通を通り越して粋の領域に入る。もちろん地酒との相性は抜群である。もっと贅沢なのはみじん切りにした干くちこの炊込みご飯。部屋中に広がる芳醇な香り、まさに天国か竜宮城。

蟹の陰に隠れた能登の海鼠、冬の心地よい酔いへと導いてくれる。ぜひご賞味を。

まるまると太るしあはせ能登海鼠  淳

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「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十六回 2026年3月7日(土)13時30分
    (3月は第一土曜日・7日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

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スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
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