↓
 

caffe kigosai

投稿ナビゲーション

← 古い投稿
新しい投稿 →

一月 寒(3)

caffe kigosai 投稿日:2025年12月19日 作成者: masako2025年12月22日

〈寒(かん)〉とは、〈寒の入り〉から〈節分〉(=立春の前日)までのおよそひと月の期間を指します。〈寒中〉〈寒の内〉とも呼び、一年のうちでもっとも寒い時期にあたります。

約束の寒の土筆を煮て下さい                       川端茅舎

寒といふ弩(いしゆみ)をひきしぼりたる            友岡子郷

単に「寒」といえば時候の季語ですが、「寒○○」の形でほかの章にも多く見られます。

寒の月白炎曳いて山をいづ                           飯田蛇笏〈天文〉

寒の水こぼれて玉となりにけり                     右城暮石〈地理〉

罪障のふかき寒紅濃かりけり                        鈴木真砂女〈生活〉

風神を祀らすとかや寒詣(かんまゐり)     後藤夜半〈行事〉

今月は〈動物〉の例をみていきましょう。

寒雀身を細うして闘へり                                  前田普羅

寒鴉己(し)が影の上(へ)におりたちぬ             芝 不器男

いつも見かける雀、鴉も、寒をつけて季語になります。前出の子郷は阪神淡路大震災に遭遇し、こう詠みました。

倒・裂・破・崩・礫の街寒雀                            友岡子郷

動いているものは寒雀だけだったかもしれません。

魚や貝も俳句では「動物」にくくられます(確かに動く物です)。

塩打ちし寒鰤の肌くもりけり                草間時彦

食べ物を旨そうに詠むことにおいて、時彦の右に出る者はいないかもしれないほど。対抗できるのはこの人、

品書きに鰤書き足して鰹消す              鈴木真砂女

銀座「卯波」の女将、食べさせる側の真砂女かもしれません。

寒鯉のかたまつてゐて触れ合はず                  伊藤伊那男

寒鮒を焼けば山国夕焼色                             山口青邨

寒蜆売にふたりの子がをりぬ                 今井杏太郎

身近な存在である鯉、鮒も、寒をつけて季語になります。

〈蜆〉は春、〈土用蜆〉は夏の季語です。要するにいつも食卓に上り得る小貝ですが、寒中にとれるものを特別に〈寒蜆〉と呼びます。「ばけばけ」のおトキさんも売り歩いていましたね。

虫も俳句では動物の仲間です。「寒○○」より「冬○○」の用例が断然多いようですが、冬になっても残っている虫ですから、生死の境をさまよっています。凍蝶は冬の蝶よりさらに哀れな様子です。

日向へと畦ひとつ越す冬の蝶              木内怜子

凍蝶の花にならむと石の上                 遠藤若狭男

石の上でじっと動かない蝶には霜がびっしりと降りているかもしれません。作者は、花になろうとしているのか、と見ています。

「植物」にも寒○○はたくさんあります。

一輪の寒紅梅の天地かな                   深見けん二

山の日は鏡のごとし寒桜                    高浜虚子

寒丹大往生のあしたかな                     黒田杏子

寒菊のほか何もなき畑かな                 山本一歩

植物については別の機会にゆっくり読むことにしましょう。(正子)

「カフェきごさいズーム句会」報告 飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2025年12月18日 作成者: mitsue2025年12月22日

第三十二回「カフェきごさいズーム句会」(2025年11月8日)の句会報告です。(  )は添削例。
「カフェきごさいズーム句会」は世界中どこからでも参加可能です。(右の案内を御覧ください)見学も大歓迎です。

第一句座              
【特選】
松林の松奔放に冬に入る       斉藤真知子
もふ猫に狙はれてゐる障子かな    斉藤真知子
  (はや猫に狙はれてゐる障子かな)
部屋中に酢橘の香る夕餉かな     上田雅子   
【入選】   
機嫌よきうちに写真を七五三      葛西美津子
利酒のちよこを干しては目を細め    矢野京子   
絹雲や赤く染まりて暮れ残る      早川光尾
晩秋に脱皮のごと引っ越しす     立花武
  (暮の秋脱皮するごと引つ越しす)
綿虫にけふはやさしき曇り空
     葛西美津子
茶の花や少し猫背の羅漢様       村井好子
信楽の厚き湯呑や今朝の冬       藤倉桂
古墳ごと甘きくれなゐ柿の山      高橋真樹子
  (古墳抱き甘きくれなゐ柿の山)
秋雨や山芍薬の実の真つ赤       藤倉桂
(秋の雨山芍薬の実の真つ赤)
秋の夜にモロッコワイン雄弁に     立花武
穏やかなけふの血圧冬紅葉       花井淳
山茶花の散るや雀のこゑの中      葛西美津子
つる草に足取らるるや火恋し      藤倉桂
昆布締めの鯛に散らせし黄菊かな    矢野京子
  (昆布締めの鯛に散らして菊の花)
哀しみの背中揺らして熊穴へ      藤倉桂
柊の花一輪のかをりかな        斉藤真知子
燃やしたきもの一抱へ秋の暮      葛西美津子
  (秋の暮燃やしたきもの一抱へ)

飛岡光枝出句
 足裏美しき半跏思惟像冬深む
   

第二句座(席題・焼芋、冬紅葉)
【特選】        
 焼芋屋元安川のほとりゆく     矢野京子
【入選】
 焼芋をガザの紙面に包み込む    高橋真樹子
(焼芋をガザの紙面に包みけり)
 凩の角を曲がれば焼芋屋      葛西美津子
 焼いもや薄暗き路地晴れやかに   藤倉桂
 神の山祈りのごとく冬紅葉     前田悠

飛岡光枝出句
 今年また同じ顔して焼藷屋
   

加賀の一盞(12月)能登の海鼠

caffe kigosai 投稿日:2025年11月21日 作成者: mitsue2025年11月21日

これを最初に口にした人は大したものだ、と世間でよく言われるものがある。その最たるもののひとつに海鼠がある。まさに海の鼠のような形をしている。ただ髭と足と尻尾が無いだけだ。

この少しグロテスクでもある海鼠、特に能登の海鼠の素晴らしさを今回紹介したい。

11月6日と言えば北陸から山陰にかけての日本海で蟹の解禁日である。その同じ日、能登の海鼠漁も解禁になる。蟹よりも海鼠が待ち遠しく感じる好き者が私を含めて金沢には多い。料理屋で蟹をむさぼっている横で一人寡黙になまこ酢をつまみ、温め酒をちびりちびり楽しむ。これぞ至福のひととき。こりとした歯触りから嚙み切ると淡い風味、お店の三杯酢がからみつく。

ここでさらに海鼠の楽しみをふたつ、そのひとつが海鼠腸(このわた)。なまこの内臓を塩辛にしたもの、身の淡白さからはかけ離れた磯臭さが凝縮されている。これこそ旨味のある能登の地酒の燗が絶妙、ひと口で広がるなまこの磯の香をさらに濃厚にして流してくれる。盃にこのわたを少し入れ燗酒を注ぎ頂く、これこそ通。

もうひとつ、これぞ珍味の王様、干くちこ。金沢ではその高級さから、おくちことも言う。なまこの内臓、その卵巣のみをひと筋ひと筋紐に掛けて干したもの。一辺7センチくらいの三角形が一枚で、作るのに数十キロの海鼠が必要になる。これを少し炙って酒の肴にする。ここまで来ると食通を通り越して粋の領域に入る。もちろん地酒との相性は抜群である。もっと贅沢なのはみじん切りにした干くちこの炊込みご飯。部屋中に広がる芳醇な香り、まさに天国か竜宮城。

蟹の陰に隠れた能登の海鼠、冬の心地よい酔いへと導いてくれる。ぜひご賞味を。

まるまると太るしあはせ能登海鼠  淳

今月の花(十二月)いいぎりの実

caffe kigosai 投稿日:2025年11月19日 作成者: mitsue2025年11月19日

iigirinomi
(今月は2013年12月の「アラカルト」へ掲載のエッセイをお届けします)

明るい朱色の房になって垂れ下がるいいぎりの実は、ひときわ華やかな晩秋を演出します。いいぎり(飯桐)と呼ばれるのは、昔その大きめの葉にご飯を包んだり、盛ったりしたからといわれています。日本の中でも西では(いとぎり)ともよばれるそうです。

南天桐という別名は、艶やかな丸い実が南天の実の色と形に似ているからでしょう。この実をつけている季節は、木が10数メートルに達する高さであることもあって一段と目立つのですが、それは人間だけでなく鳥とて同じ。遠くから実をながめて楽しもうと思っていた矢先、そこにあったはずの実が下がっていない!

―――花材として綺麗なままをとろうとすれば、そりゃできる限りの高さに鳥よけの網をかけて、実を守るしかないからねーーーいけばなの枝をたくさん扱っている花屋さんの話です。長ければ20センチ近くの房になり、実は秋が深くなるまで枝に残っています。大きな葉がなくなってしまえば、元の枝から切り取って水につけなくても、実は急に落ちたり、表面の皮がすぐにはしおれる事は少ないでしょう。こんな理由もあって、この時期の花展には花材としてよく見かけられます。

木肌は確かに桐に似ています。桐から下駄やたんすが作られるのは他の木と比べると軽めだからといわれますが、この南天桐も実がついているわりに、持ってみると想像していたより軽く感じられます。

実に充分に陽が当たるように、という植物本来の持っている知恵でしょうか、枝は真っ直ぐ羽を広げたように伸びています。そこに下がる房の間隔は隣の房にあまり邪魔にならないよう、絡む事のないよう、うまく配置されているかのように見えてくるのです。

夏も終りのころのいいぎりを見た事があります。その緑の実からは、秋も深まったころの豪華に垂れ下がった姿はあまり想像できません。熟していないため実の形もほっそりとしています。でもこれはこれで面白く、魅力があります。朱赤ではなく白い実をつけた(いいぎり)もあるということですが 私はまだ見たことはありません。

もしもこの時期、いいぎり南天を幸運にも見かけることができたら色と形をじっくり観察してみてください。毎日の散歩の途中、すこし首を伸ばして上をみて探してみてください。都会の真ん中でもいいぎりは意外と回りに見つかるかもしれません。鳥たちに先を越されなければ、ですが。(光加)

十二月 冬籠

caffe kigosai 投稿日:2025年11月17日 作成者: masako2025年11月20日

新型コロナ禍の籠り居から解放されたかと思いきや、今年の夏はあまりの暑さに籠もって過ごすことに…。暑さがようよう納まり、さあいよいよ秋だと喜んだのも束の間、急速に冷え込むようになってきました。

こうなってくると、暮らしの近代化により実感を失った〈冬籠〉が気になります。歳時記をひもとくと、昔の人がしていた〈冬籠〉が垣間見えます。

まず冬を迎える前に〈冬支度〉をします。これは晩秋の季語です。衣類、寝具、燃料の準備、家まわりの補修をし、干したり漬けたりして保存食の仕込みをします。地方や家庭によってさまざまですが、冬になる前に行う、冬を過ごすための準備全般を指します。

ちなみに〈障子貼る〉も冬支度の一つです。「えーっ」と思った方もおられましょうが、秋の季語であることを覚えておきましょう。

ふるさとへ障子を貼りに帰りけり                     大串 章〈秋〉

独りなり障子貼り替へてはみても                    奥名春江〈秋〉

喋りつつはかどつてゆく障子貼り                    三村純也〈秋〉

いろいろな障子貼りがありそうです。山廬・飯田家では代々の当主が障子貼りの名人だったとか。現当主が先代(父)龍太の腕前もすばらしかったと書いています。

そして冬になると仕込んだ漬物や、干したり塩にしたりして貯蔵した食糧を少しずつ消費しながら暮らしていきます。

妻と我沢庵(たくあん)五十ばかりかな      島田五空

夜ふかしを妻に叱られ干菜汁(ほしなじる)        沢木欣一

塩鮭の塩きびしきを好みけり                    水原秋櫻子

家まわりの防寒・防雪の備えが必要な地方もあります。

高き木に梯子かけたり冬構(ふゆがまへ)          高浜虚子

山祇(やまつみ)の出入りの扉あり雪囲      前田普羅

樹木や草花にも冬構を施します。

霜除(しもよけ)の藁に降る雨だけ見えず          後藤比奈夫

風垣(かざがき)のくくり縄嚙む放ち鶏        皆川盤水

菰巻(こもまき)の松の鱗の落ちつきぬ      永方裕子

家うちでは〈隙間風〉を防ぎ、建具を入れ替えて暖房効果を高めます。

ことごとく北塞ぎたる月夜かな                 大峯あきら

首の骨こつくり鳴らす目貼(めばり)して    能村登四郎

運ばむと四枚屏風に抱きつきぬ                 後藤綾子

濤うちし音かへりゆく障子かな                 橋本多佳子

君と寝む襖(ふすま)の虎に囲まれて                高山れおな

暖房も今ならばスイッチ一つで切換えられますが、かつてはさまざまな使い勝手のものがありました。

スチームや中世の色濃きホテル                千原叡子

一片のパセリ掃かるる暖炉かな                芝 不器男

ストーブの中の炎が飛んでをり                上野 泰

学問のさびしさに耐へ炭をつぐ                山口誓子

今では〈炭〉をつぐのはお茶を嗜む方くらいかもしれません。〈炭〉を使わない家には〈炭斗(すみとり)〉や〈火消壺〉もありません。〈炭売〉という商売もあがったりになります。

ですがまだ歳時記にはこれらの「記憶」が残っています。時には解説にとどまらず考証まで読んでみてはいかがでしょう。(正子)

浪速の味 江戸の味(十一月) 軍鶏鍋【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2025年11月10日 作成者: mitsue2025年11月10日

いつまで続くのかと絶望的になるほどの夏の暑さでしたが、さすがに十月の声を聞くと東京はぐっと気温が下がり、慌てて衣替えをしました。

気温が下がると急に恋しくなるのが鍋料理。秋晴れの一日、以前から気になっていた東北自動車道の「羽生PA」に鍋を食べに行きました。パーキングエリアで鍋とは?

日光街道、奥州街道から江戸への入り口にあたる栗橋関所にほど近い埼玉県の「羽生PA」には、鬼平犯科帳をモデルにした江戸の街が再現されています。鬼平に登場する様々な店が並び、その一軒が鬼平ファンにはお馴染みの「五鉄」。密偵たちとの連絡場所として物語に頻繁に登場するこの店の名物が「軍鶏鍋」です。

江戸時代初期にタイから日本に渡来したといわれる軍鶏。その名は、タイの旧名「シャム」に由来します。勇猛な性質で闘鶏に使われましたが、引き締まった肉はうまみが濃厚で江戸名物の「軍鶏鍋」は武士や町人に好まれました。

賭博の闘鶏が禁止されてからも、日本各地で食用として品種改良されてきた軍鶏。江戸時代の軍鶏の血統を濃く引き継ぎ、飼育期間が一般的な鶏より三倍近く長い「東京しゃも」という鶏も誕生しています。

現在の「五鉄」の軍鶏鍋も江戸っ子好みの濃口醤油味。ささがき牛蒡がいいアクセント。この店では鬼平に登場する同心木村忠吾の好物「一本饂飩」も味わえます。こちらもみりんの利いた濃厚な汁に驚くほど太い饂飩が鎮座している逸品。

この冬は寒くなるのが早いとの予報、インフルエンザも早々流行期突入とか。「軍鶏鍋」と「一本饂飩」で精をつけて、この冬を乗り切りたいものです。

トントンと二階へ運ぶ軍鶏の鍋  光枝

カフェきごさい句会報告 飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2025年11月8日 作成者: mitsue2025年11月8日

第三十一回「カフェきごさいズーム句会」(2025年10月11日)の句会報告です
(  )は添削例です

第一句座              
【特選】
よき音でもの食ふ人よ鰯雲       葛西美津子
手の先をすぐによごして葡萄摘む    高橋真樹子
(両の手のすぐによごれて葡萄摘む)
雲晴れてどかと富士山鯊の秋 葛西美津子
秋日浴び散らばつていく練習艇     上田雅子

【入選】
湯豆腐や庭に実りし柚子もらひ    上田雅子
(湯豆腐や庭に実りし柚子搾り)
ラフランス甘き香りに包丁す     高橋真樹子
(ラフランス甘き香りを包丁す)
駅出でて匂ふ銀杏や上野山      早川光尾
(駅出でて匂ふ銀杏上野山)
ひたすらに木の実拾ひし別れかな   藤倉桂
ひと束の草々の秋供へけり      花井淳
(ひと束のりんどうの秋供へけり)
花蕎麦の先や静もる村ひとつ     伊藤涼子
(蕎麦の花先に静もる村ひとつ)
今年またお裾分けくる唐辛子     高橋真樹子
子を宿す嫁に一献菊の酒       藤倉桂
人波に埋もれし長城国慶節      周龍梅
(人並に埋もれ長城国慶節)
ひとひらの松茸なれど馳走かな    斉藤真知子 
キラキラと手首のボルト秋の空    立花武
無謀にもカントに挑む夜長人     赤塚さゆり
濃竜胆葉先の枯れて咲きはじむ    伊藤涼子
けふ土手は祭たけなは曼殊沙華    藤倉桂
悔しくてレモンに噛みつく未成年   赤塚さゆり
菊酒やしみじみと良き母の顔     赤塚さゆり
秋高の日の本大谷大の里       花井淳
青空のはるかへ胡麻の爆ぜる音    藤倉桂

飛岡光枝出句
足腰の強き婆なり曼珠沙華
 

第二句座(席題・栗、鹿)
【特選】        
恵那山の風に毬栗育ちけり      花井淳   
さびし山神を起こして栗拾ふ     周龍梅

【入選】
ふりかへり又ふりかへり鹿山へ    斉藤真知子
人住まぬ島守る鹿や神の鹿      藤倉桂
渋皮煮つくれと夫の栗拾ふ      藤倉桂
(渋皮煮つくれと夫の栗拾ひ)
向きあふて言葉少なに栗むけり    斉藤真知子
かたまつていつもの鹿の家族かな   高橋真樹子
み吉野の鹿のこゑ聴く一夜かな    葛西美津子
母子鹿波が波打つ崖に立つ      藤倉桂
栗の毬次々割れて熊怖ろし      葛西美津子
鹿鳴はきこえなくなりよきめおと   立花武

飛岡光枝出句
風強き三日三晩を渋皮煮

今月の花(十一月)かくれんぼく

caffe kigosai 投稿日:2025年10月27日 作成者: mitsue2025年10月27日

kakurenbo
(今月は2013年11月の「アラカルト」へ掲載のエッセイをお届けします)

仕事のため大阪に行くことになり、現地の紹介された花屋さんに電話をしました。そこですすめられたのがこの、かんれんぼく、でした。「かんれんぼく?どんな字をかくのですか?」

いけばなの手ほどきを受けた時から数えれば、半世紀以上はたっている植物とのかかわりですが、まだまだ知らないものが外国はもちろん、国内にも数限りなくあります。当日は楽しみに大阪入りをしました。

かんれんぼくは「旱蓮木」と書くそうです。花屋でごつい茶色の紙の中から取り出されたのは、葉がなくて実だけとなったものでした。赤や黄色の実がなる植物が多い時期に、きれいな薄い緑色をした実がとても新鮮に見えました。しかもよく観察すれば、青い小さなバナナの房のようなものがいくつも集合して一つの球を作っているのです。さわるとパラリと落ちた(ミニバナナ)のひとつを拾って手にとってよくみれば、しっかりと3つの稜がありました。

ひとつの枝から分かれた細い枝の先にいくつもぶら下がっているところは、緑の大小の惑星が宙に浮かんで漂っているような楽しい光景です。宿にもって帰り、この(ミニバナナ)のひとつを輪切りにしてみました。つっと入っていく刃の先に、少しだけ手ごたえのある核があるのが本当の種かもしれません。やがては全体が茶色になっていくのでしょう。生命力の強いかんれんぼくは薬用としても研究されていると聞きました。

10メートル以上にもなる木は、葉脈のはっきりした、つやのある大きな緑の葉をつけます。遠目には、やつでの花の形にも似た、白に近い薄緑の花をつけたところを、来年の夏にはみてみたいものです。かんれんぼくは中国南部の原産。バナナ状の実にたくさんの種がある事が子孫繁栄をあらわすからでしょうか、別名は(喜樹)。「Happy Tree (ハッピーツリー)」という英名もあります。確かに実を見ているとハッピーな気分になります。

せっかちな人間たちがそろそろクリスマスを意識しだす頃、自然もつられてクリスマスのオーナメントをつくってみたような、そんなメッセージさえ感じさせる丸いかんれんぼくの実が、この季節にはさがっているのです。(光加)

十一月 枇杷の花 柊の花 

caffe kigosai 投稿日:2025年10月17日 作成者: masako2025年10月22日

枇杷はバラ科、柊はモクセイ科。どちらも常緑ですが、木の姿も花の形もまるで異なります。共通するのはその佳き香り―と聞いて「え、枇杷の花って香るの?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。私も自分の鼻でその香りを捉えたのは、さほど昔のことではなく、二〇一九年十一月のことでした。

「俳句四季」十一月号(十月二十日刊行)にそのいきさつを長々と書きましたので詳細は省略しますが、その日、どこよりか芳しい香りが漂ってきてあたりを見回すと、大きな枇杷の木が遠目にもわかるほど白く花を付けていました。何度も通った場所ではありました。ここに枇杷あった? 枇杷の花って香るの? 近づくにつれ強くなるその香に、同行の者は皆、絡め取られるように酔い痴れたのでした。

例句を調べると、

蜂のみが知る香放てり枇杷の花              右城暮石

香りの句もありますが、芳香を絶賛しているわけではなさそうです。

十人の一人が気付き枇杷の花                高田風人子

一人が「いい匂い」と気付いた可能性も無くはないのですが……。

満開といふしづけさの枇杷の花             伊藤伊那男

故郷に墓のみ待てり枇杷の花                福田蓼汀

裏口へ廻る用向き枇杷の花                    山崎ひさを

やはり裏手にあたるところにひっそりと咲く花のようです。

「俳句四季」には三十名の会員に句を寄せていただきましたが、その中に香りの句が三句ありました。

明かぬ夜やきのふの枇杷の花匂ふ    堀口知子

このにほひは母の鏡台枇杷の花             原田桂子

ふるさとの甘やかな風枇杷の花             仙波玉藻

二〇一九年の体験以来、私は枇杷の花を見つけると、必ず寄って行くことにしていますが、いつも香るとは限らないようです。ものの本には、花が黄色くなるにつれ、強く香るとありますが。

この冬、皆さまにも枇杷の花の香りを確かめていただければと願っています。

柊の花のほうは、その香を知らぬ人はいないでしょう。モクセイ科なだけはあるという香りです。こちらも花自体はさほど目立たず、芳香によってその存在に気付くことが多いようです。

柊の花一本の香かな                 高野素十

柊のひそかな花に顔よせて          星野立子

素十の句は、たった一本あるだけでこれほどまでに香る、と読みたいですし、立子が顔をよせたのは、その芳香ゆえ、と思います。

私自身がその香に吸い寄せられた定かな記憶は、一九九九年十一月下関でのことです。少しひんやりした日でした。ふいにその日の空気より冷たい流れが頰に触れ、モクセイ? と思いました。が、既にその季節は過ぎています。ではヒイラギ? あたりにそれらしきものが無いので、探しながらさらに進むと、一軒をすっぽりと囲む生垣がどうやらそれらしく思われました。近づくと「ヒイラギモクセイ」と札が付いていました。欲張りな名前だなあ…。その後のことは、句会場の床の間に柊が生けられてあったこと以外の記憶が欠落しています。

ひひらぎの生けられてすぐ花こぼす      髙田正子

ひひらぎの花まつすぐにこぼれけり

思い出から拾った、初冬の芳しい花ベスト2でした。 (正子)

 

 

第三十回 カフェきごさいズーム句会報(飛岡光枝選)

caffe kigosai 投稿日:2025年10月4日 作成者: mitsue2025年10月4日

第三十回(2025年九月十三日)の句会報告です。(  )は推敲例です。
「カフェきごさいズーム句会」はどなたでも参加できます。詳しくは右の案内をご覧ください。

第一句座              
【特選】
いずこより猫迷ひくる野分あと     赤塚さゆり
届きたり縫ひ目拙き菊枕        藤倉桂
(届きけり縫ひ目拙き菊枕)

【入選】
馬のほか動くものなし夏競馬      早川光尾 
(馬のほか動くものなし大夏野) 
天の川いつでも夢を口遊む       早川光尾
かぜ台風ゴジラを遠くすつ飛ばし    立花武
句会せむ句座の真中に萩生けて     藤倉桂   
くさぐさに秋の佇む子規の庵      葛西美津子
買ふつもりなき松茸を品定め      斉藤真知子
泡立草押し倒し行く上り道       藤井和子
(泡立草押し分けて行く上り道)
稲雀食ふても食ふても百万石      花井淳
朝霧の尾根にリュックの赤と青     鈴木勇美
(朝霧の尾根にリュックの赤動く)
ひやひやと布団をさがす足裏かな    高橋真樹子
鎌掲げ我を討たんと子かまきり     上田雅子
これはまたひよろりとながきふくべかな 葛西美津子
鶏頭花泣いて笑つて村歌舞伎      藤倉桂
(村中の泣いて笑つて村歌舞伎)
初秋の空に束の間赤き月        上田雅子
(闇迫る空に束の間赤き月)
いましばしクルマの窓に霜おりて    立花武
(しばらくは車の窓に霜おりて)
水澄むや金の水尾ひくからし鯛     伊藤涼子
立ち飲み屋残る暑さの月のぼる     葛西美津子

いつの間に夕暮迫る冬瓜汁  光枝

第二句座(席題・虫、糸瓜)
【特選】        
百日の咳に効きたり糸瓜水       葛西美津子
朝鈴の虫籠金の糸垂らし        葛西美津子
(鈴虫の虫籠金の糸垂らし)
【入選】
たそがれ清兵衛虫籠を編む夜更け    葛西美津子
村の子の虫籠提げて登校す       赤塚さゆり
(休み明け虫籠提げて登校す)
糸瓜水美人になるよと母の手に     伊藤涼子
次の世は糸瓜になつてみるもよし    斉藤真知子
虫時雨わが身いつしかからつぽに    藤倉桂
長瓜や同級の顔思ひつつ        花井淳

ゆれながら考えてゐる糸瓜かな  光枝
  

投稿ナビゲーション

← 古い投稿
新しい投稿 →

「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十六回 2026年3月7日(土)13時30分
    (3月は第一土曜日・7日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

Catégorie

  • à la carte (アラカルト)
  • 今月の季語
  • 今月の料理
  • 今月の花
  • 加賀の一盞
  • 和菓子
  • 店長より
  • 浪速の味 江戸の味
  • 花

menu

  • top
  • きごさいBASE
  • 長谷川櫂の俳句的生活
  • お問い合せ
  • 管理

スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
©2026 - caffe kigosai
↑