新しい料理や食べ物は子供の頃ならともかく、最近では海外旅行や地方にいかないとなかなか出会えるものではない。子供の頃、オムレツケーキはその名からして、卵の調理されたものと、ケーキが合わさったものだと思い、姉に大笑いされた記憶がある。
結婚して間もない頃、新しい料理というより、衝撃的な郷土食に出会った。それは知人から頂いたもので、「煮菜」といった。雪国の保存食で塩漬けにした菜(野沢菜やたい菜)を水で戻し根菜類と煮たものだった。味付けは味噌でする。
東京にいたころは真冬でも青い菜は目にすることができたが、雪深い越後ではまず無理である。今でこそ小さな町でもマーケットがあるが、嫁いだ頃、周りの家々ではキャベツや白菜を新聞紙に包み土間や廊下に保存していた。
頂いた暖かい「煮菜」からは食べ物とは少し違った匂いがしてくる。正直に言えば、くさった匂いだ。一瞬捨てようか思ったくらい強烈だった。後からわかった事だが、その家では自家製の3年味噌を使い、塩漬けの菜もじっくりと醗酵の進んだ菜を使っていた。醗酵の二重奏だ。納豆、くさや、鮒鮓、など発酵食品はなれないとなかなか箸が進むものではないが、一度おいしいと感じるとやみつきになる。
世界を旅した人が教えてくれた。醗酵食品は頭で食べるのものですと。風土と環境が作り上げた食べ物こそ、その土地の食の文化を頂くことなのだろう。
何時の頃からか、雪模様の空を眺めるとそぞろ懐かしく食べたくなる。この煮菜こそ家庭の味、同じ新潟県でも各地方によって味に違いがある。味付けは味噌、出汁は煮干を使う。最も大きな違いは酒粕を入れるか入れないかだろう。
【作り方】
1)塩漬けの菜(野沢菜、たい菜 など)を食べやすい大きさに切って、水からサッと茹で笊にあげてから、塩出しのため一晩水につける。
2)菜に少し塩分がのこっているくらいがおいしく仕上がる。
3)大根、人参、牛蒡、里芋、大豆などを乱切りにして油で炒め火にかける。具材と油がなじんだら、煮干の腸をとって二つに割り、水を入れて煮る。水の分量は材料がかぶるくらい。
4)大根が柔らかくなったら、水切りした菜を入れ、弱火で煮込む。調味料は味噌のみ。水分がなくなったら水を足す。
5)菜の量が半分くらいになり水分がなくなれば出来上がり。【材料】
野沢菜、たい菜、冬菜など 500から600グラム
人参、牛蒡、 1/2程度
大根 4/1程度
煮干 5,6本
味噌 適宜
好みで里芋、油揚、打ち豆(大豆を叩いて平らにしたもの) など。



越後や山形などは秋になると菊を食べる。菊を食べるのはそれ程珍しいことはではないが、概ねは菊海苔といって蒸した菊を板状に伸ばして乾燥させたものが多いと思う。それらは、ちょっとした和え物の彩やお刺身のつまなどに用いられる事が多いが、こちらではちゃんとした一品として使う。