↓
 

caffe kigosai

カテゴリーアーカイブ: 加賀の一盞

加賀の一盞(1月) かぶら寿し

caffe kigosai 投稿日:2025年12月22日 作成者: mitsue2025年12月22日

 お正月にはやはりお雑煮、全国それぞれ味付け、具材、餅の種類など特色がある。

 ご当地加賀の金沢は極めてシンプル、醬油味のすまし汁に角餅、三つ葉と削り節を乗せただけ。その理由は雑煮椀のまわりには豪華なお節の重箱、鰤の刺身、治部煮などたくさんのご馳走が並んでいて、お雑煮に具材を入れる必要が無い百万石なのだ。
 
 そこで本題、金沢の正月に無くてはならないかぶら寿し。材料はこの季節みずみずしさと甘みを増した青首かぶら、同じく脂ののった天然鰤、そして酒米にも高級な山田錦の米糀。作り方は皮をむき厚めの輪切りにしたかぶらに切れ目を入れ3日ほど塩漬けにする。別に塩漬けにした鰤のそぎ切りをかぶらにはさみ、糀とお米で作った甘酒で漬け込む。7日間ほどで出来上がる。
 
 むかし母方の実家に行くと、おばあちゃんがあっという間に治部煮を作り、自分で漬けたかぶら寿しを出してくれた。自作するのが当たり前だったころの話。ただかぶら寿しは長持ちしない、漬けて2週間もすれば酸っぱさが増してくる。今でも買い求めるときはお店の人に美味しく頂ける日にちを聞くことが肝心だ。
 
 お節の箸休めにひとつまみ、雑煮を食べながらひとつまみ、何もなくても燗酒にひとつまみ、価格は高めだが金沢文化を秘めた味は見のがせない。

頬はさむ君の手の平かぶら寿し  淳

加賀の一盞(12月)能登の海鼠

caffe kigosai 投稿日:2025年11月21日 作成者: mitsue2025年11月21日

これを最初に口にした人は大したものだ、と世間でよく言われるものがある。その最たるもののひとつに海鼠がある。まさに海の鼠のような形をしている。ただ髭と足と尻尾が無いだけだ。

この少しグロテスクでもある海鼠、特に能登の海鼠の素晴らしさを今回紹介したい。

11月6日と言えば北陸から山陰にかけての日本海で蟹の解禁日である。その同じ日、能登の海鼠漁も解禁になる。蟹よりも海鼠が待ち遠しく感じる好き者が私を含めて金沢には多い。料理屋で蟹をむさぼっている横で一人寡黙になまこ酢をつまみ、温め酒をちびりちびり楽しむ。これぞ至福のひととき。こりとした歯触りから嚙み切ると淡い風味、お店の三杯酢がからみつく。

ここでさらに海鼠の楽しみをふたつ、そのひとつが海鼠腸(このわた)。なまこの内臓を塩辛にしたもの、身の淡白さからはかけ離れた磯臭さが凝縮されている。これこそ旨味のある能登の地酒の燗が絶妙、ひと口で広がるなまこの磯の香をさらに濃厚にして流してくれる。盃にこのわたを少し入れ燗酒を注ぎ頂く、これこそ通。

もうひとつ、これぞ珍味の王様、干くちこ。金沢ではその高級さから、おくちことも言う。なまこの内臓、その卵巣のみをひと筋ひと筋紐に掛けて干したもの。一辺7センチくらいの三角形が一枚で、作るのに数十キロの海鼠が必要になる。これを少し炙って酒の肴にする。ここまで来ると食通を通り越して粋の領域に入る。もちろん地酒との相性は抜群である。もっと贅沢なのはみじん切りにした干くちこの炊込みご飯。部屋中に広がる芳醇な香り、まさに天国か竜宮城。

蟹の陰に隠れた能登の海鼠、冬の心地よい酔いへと導いてくれる。ぜひご賞味を。

まるまると太るしあはせ能登海鼠  淳

加賀の一盞(9月)金沢の九月

caffe kigosai 投稿日:2025年9月5日 作成者: mitsue2025年9月5日

新学期が始まる9月は金沢の二つの食に関する大事な月、食通ならずとも待ち遠しい楽しみな日が続く。

ひとつは日本海側の底引き網漁解禁の9月1日。7月8月は資源保護のため禁漁、その間日本海中央部にある大和堆まで漁に出なければならないが、解禁後は近場での漁となりより新鮮で安価な魚貝が店頭に並ぶ。甘エビ、ガスエビ、小鯛、カレイ、メギス、はたはた、のどぐろなどなど。どれも水揚げされて1日と時間が経っていないものばかり、刺身や塩焼き、ふぁっと煮るなど庶民の味で楽しむ。この煮付けはカレイやメギスなど白身魚を鍋に入れ、ひたひたの水と金沢近郊の港町大野で醸造される旨味の醤油や能登の魚醤いしるを加え、落し蓋をして強中火でほんの4~5分炊いたもの、凝った味付けは不要、家庭の味が楽しめる。刺身では甘エビやガスエビの秋を感じる甘さがたまらない。
 
もうひとつは日本酒ひやおろし販売開始、今年は9月5日。日本酒は前年11月頃より造りはじめ、春先まで続く。出来てすぐの酒はあらばしりなどと表示され、少し発泡またはおりがらみの若々しい味を楽しむ。その新酒を一度火入れして低温タンクで静かに半年あまり寝かせ、上澄みを生酒として瓶詰めされたものがひやおろし。雑味が無く滑らかで香り豊かな風味となる。その日酒屋、デパートではのぼりを立てて、県内ほぼ全酒蔵の銘柄を並べて売り出す。また金沢の酒飲み仲間の会ではひやおろしを集め、各蔵の今年の出来栄えを評価して楽しむ。

ここで底引き網漁の魚貝とひやおろしのマッチングが始まる。甘エビなどとろりとした味わいにひやおろしの綺麗な風味をかぶせ、余韻は芳醇な残り香が鼻に抜ける。これぞ金沢9月の醍醐味、至高の一瞬である。10月4日には酒マルシェと称するイベントが金沢中心地の緑地で開催され、県内酒蔵が一堂に集まる。市内料理屋の出店も出て毎年数千人がひやおろしや大吟醸を楽しむ。

金沢の秋はこれからが本番、山海の美味が目白押し。鰤に脂がのり出し、そして11月7日のズワイガニと海鼠の解禁へと絶頂を迎える。まだまだ知られていない美食金沢の秋を紹介させて頂きました。

眠りから覚めて秋麗ひやおろし   淳

加賀の一盞(六月) 岩魚炭火焼

caffe kigosai 投稿日:2025年5月18日 作成者: mitsue2025年5月18日

白山は水が良い。特に手取川水系は水質において高く評価されている。水の善し悪しが重要な液晶や電子部品のメーカーが多数大きな工場を建てている。もちろん酒造りもさかん。となれば川魚の美味しいのは必然、まして上流域の岩魚はことさらである。

白山をご神体に仰ぐ白山比咩神社はこの手取川扇状地の扇のかなめの地に鎮座されている。その社の真後ろに知る人ぞ知る『いわなの庵』がある。谷川の水をそのまま生簀に流し自然のままに養殖している。

店はその生簀のすぐ脇にある。夏のみの営業で今頃は若葉風が通り、谷川からは雪解水の流れが聞こえる。中央には囲炉裏が置かれ客はそれを囲んで座る。炭火が熾り、串に刺された岩魚が立ちて並ぶ。焼き上がりまで約40分、庵の親父はせわしなく炭の具合を見、串の角度を変えたり表裏を返したりして余念がない。奥さまと娘さんは塩焼きに合わせる炊込みご飯や山菜の和え物、みそ汁など用意する。

焼き上がった岩魚は食べやすい20センチくらい、頭からかぶりつく。この時の感動がすごい。頭や骨を噛む感触が無く心地よい歯応えなのだ。丁度良い苦みが加わり野趣が最高、どんどん食べて尻尾まですべて堪能する。岩魚定食は1匹だが、いつももう1匹追加し2匹で注文する。この美味しさは1匹ではもの足りない。鳥が囀り山吹が色を添える中、白山の岩魚は欠かせない。

転じてお隣の富山県には立山連峰がある。名峰劔岳から続くところ、滑川市に句友の酒井きよみさんが坐忘庵と名付けたお宅に住んでおられる。数年前にお邪魔したら、きよみさん自身が釣った見事な岩魚をご馳走してくれた。後ろは劔岳、前は富山湾から能登半島を望める絶景の坐忘庵、岩魚も格別でした。

大岩魚これを釣つたんきよみさん 淳

「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十五回 2026年2月14日(土)13時30分
    (3月は第一土曜日・7日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

Catégorie

  • à la carte (アラカルト)
  • 今月の季語
  • 今月の料理
  • 今月の花
  • 加賀の一盞
  • 和菓子
  • 店長より
  • 浪速の味 江戸の味
  • 花

menu

  • top
  • きごさいBASE
  • 長谷川櫂の俳句的生活
  • お問い合せ
  • 管理

スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
©2026 - caffe kigosai
↑