今月の料理(十月)栗汁粉
以前住んでいた庭の裏手に一本の山栗の木がありました。九月も半ばころになると盛んに実を落とします。市販の大粒の栗とは比べものにならない程小さなものでしたが、初めて食べた時の美味しさは忘れられません。きめが細やかで甘みも強く、栗の味が濃く感じられました。朝起きて木の下に行くとあちこちに実が転がっています。小さい物ですから地面に叩きつけらると遠くまで飛んで行ってしまうのが難点です。それでも毎朝、手に一握二握りとためたものをちょっと日に干して茹でたてを食べる楽しみは早起きに代え難いものでした。
落ちている栗のなかにはもう先を越されているのもあります。多分裏山に住んでいるリスかムササビの仕業でしょう。小さな歯の跡もみえます。薮の中に落ちた栗を探していると水引草、きんみずひき、露草、釣舟草などが雑草に混って見えるのもいかにも山の秋らしく、同じ花でも庭にある秋海棠や杜鵑草とはまた違った季節の趣を感じたものでした。
子供の頃のお八つにいただいた栗はもちろんマーケットにでている市販のものです。栗の実は毬の中に三つ程入っていて真中の栗はコロコロとしておいしそうですが、茹栗のお八つをするとたいてい両端の余り美味しそうでない栗がいくつか余ってしまいます。時間がたつと栗の皮は硬く剥きにくいばかりか、実もぐっと味が落ちてしまいます。母はそんな栗を集めて翌日はお汁粉を作ってくれました。とろとろとして甘いほのかな栗の味のするお汁粉は小豆でつくるのとはまた違った美味しさです。
作り方はいたって簡単。もちろん生の栗から作ったものは一度茹でた物よりぐっとおいしいですが、茹栗の残りでもそれはそれで美味しいものです。
【作り方は】
生の栗をむきます。
剥きあがった栗に被る程度の水を入れ火にかけて柔らかくします。
(丁寧にするときは栗を一度茹でこぼします。)
栗に火が通ったら冷まして潰し裏ごしをします。
(裏ごしは省いてもかまいません)面倒ならフードプロセッサーにかけます。
砂糖を好みの量入れ、水でうすめて出来上がりです。
白玉を作って入れてあります。
茹た栗が余ったら、包丁で二つ割って中身をスプーンでくり抜きお汁粉にしたてます。