a la carte_桜餅
京都の四條大橋東詰にある南座の「特別舞台体験」に参加してきました。
南座といえば、京都の冬の風物詩「吉例顔見世興行」でよく知られています。
京都四條河原で、1603年(慶長8年)に、出雲の阿国が「かぶき踊り」を興行したのが歌舞伎の発祥といわれています。その発祥地に建つ現在の南座は、1929年(昭和4年)に竣工した、桃山時代の様式を加味した破風造りで、1991年(平成3年)に大改修をしています。伝統と格式を感じる、美しい劇場です。
その南座の「特別舞台体験」は、「花道」「せり」「廻り舞台」など、江戸時代に日本の芝居小屋で発明された、歌舞伎劇場の舞台機構について、説明を聞き、体験もできるというものです。
実際に、花道を歩かせてもらいました。廻り舞台で一回転しました。せりで、奈落に下りたり、2メートル近く迫上げられるのも体験しました。
江戸時代初期の劇場は、能舞台の形を真似て造られていましたが、娯楽性を追求し、より楽しんでもらうために、劇場の機構が変化していったそうです。南座の舞台から客席を見るのは、初めてのことでしたが、客席がとても近くに見え、二階三階席も、よく見えました。
この舞台機構を動かしている方を、「操作盤」(そうさばん)さんと呼びます。
素晴らしい舞台を観ることができるのは、役者さんはじめ出演者はもちろんですが、大道具、小道具、照明、音響、操作盤などなど、裏方として支える方々の力が結集してこそだなと、あらためて思いました。
さて、観劇のもう一つの楽しみに幕間(まくあい)弁当があります。歌舞伎は、非日常の時空に遊ぶことができます。その上、おいしいお弁当を食べるのですから、大満足です。
さらに、南座の正面右手に文政年間創業という饅頭屋があります。幕間に、一つでも買うことができます。いま店頭には、桜餅、蓬餅、花見団子など、春の明るい色彩があふれています。
関西の桜餅は、こし餡を道明寺粉でつつみ、塩味を少しきかせた桜の葉で巻きます。まさに、春の香りと味です。(洋子)
薄き葉の中に朱味や桜餅 正岡子規