今月の花(2月) 姫水木(日向水木)
水木と呼ばれるものは多いのですが、さんご水木、ドッグウッドと呼ばれるアメリカハナミズキ、初夏に平たく伸びた枝にたくさんの白い花のつく水木もあります。
その中で、春にもう一歩という頃に見られるのは日向水木とも呼ばれる姫水木です。姫水木の枝は葉が落ちて、まるで魚の小骨のようにお互いに平行に近い距離を保って伸びています。細かくてきゃしゃなその枝にぽちぽちとついている少しだけ先のとがった蕾に、ごく薄い緑がさしているのをみかけることでしょう。
春の花木はさんしゅゆ、万作、連翹など黄色いものがまずでてきますが、その中でこの木の枝につく蕾の淡い緑は外の空気の温度を感じながら花を開く機会を伺っているようです。やがてうつむき加減に開く花の花弁は5枚で長さは1センチにもみたず、少し黄色い雄蕊は花弁より短いのです。
富山に住んでいる知人の本部講師が展覧会をしたときに、小さな会場せましとばかりこの姫水木だけがいけられていました。
会場のドアを開けると、そこは深いブルーに着色された姫水木の枝だけが空間に舞っていました。
よく見るとその中に、薄緑色の花が塗料を突き破り、あちらにもこちらにもあたかも浮かんでいるように小さな無数の薄緑の蕾が。
「バケツに付けて置いたら塗料がかかってしまった時があって、その青くなった枝からでてきた花が面白かった」と、知人はいっていました。「雪が降ると、家から表の道に出る道を毎日雪かき」する生活を送る彼の春を待つ心がこんな目のつけどころとなって現れたのでしょうか。冬が中から押し上げた春がその小さな花にはありました。
花が終わるとやがて葉脈のはっきりした清々しい緑の卵形の葉がでてきます。
高知県の台地に自生していた土佐水木も、この日向水木とおなじころか少し後に花がでてきてたれさがります。枝はダイナミックな線を描き、曲げてみると柔らかくしなやかです。初夏に差しかかったころは葉の爽やかな緑を楽しむことができます。ときどき少し赤みを帯びた葉もあります。
この土佐水木に比べると、花が小さいので日向水木は姫水木とよばれるのでしょうか。
季節は乾燥した冬からいよいよ瑞々しい時へと移り変わっていきます。(光加)