a la carte_アリウム(ユリ科)
貴重な花器を貸していただいての展覧会。その作品制作のときのことです。隣の席の人が浮かぬ顔をしています。彼女がいけるのは著名な作家の白いガラス花器。傍らには包装紙の中から紫の丸い頭をみせてアリウムギガンジウムが10本ほどバケツにつけられていました。
この花は切ると茎からオレンジ色の液体が滲み出てくるので、前もって出してしまうように数日前に切って水につけておいてありました。が、いざ現場ではさみを入れると、オレンジの液体がまたもにじみ出て水が染まってしまうというのです。
これが服にでもついたら落とすのに大変。でもそれ以前に、拝借ものの白いガラスの花器の内側は複雑なので、隙間に入って取れなくなったらどうしようかしらーーと。
アリウムは、すっと伸びた茎の上に小さな花がほとんど360度の方向に向いて花開くという特徴があります。それで全体が丸い形のものが多いのです。特にこのアリウムギガンジウムは、まっすぐな茎の上に無数の小さな花が絡まって成長してきているので両手のひらで持ちくるくると回すと、絡みがはずれ綺麗な丸い形が現れます。
小さめの丹頂アリウムは花序の上側が赤い紫、下が緑で、丹頂鶴の頭部の色の具合に似ているといわれると、たしかにそう見えなくもありません。
アリウムリーキは(リーキ)がまさにねぎを意味し、アリウムがねぎの仲間ということを思いださせる臭いがあります。ですから、アリウムを長く水につけておくときはご用心。
丹頂アリウムもアリウムリーキも、くねくねと曲がっているのはそうなるよう手をかけて栽培されているのです。
アリウムシューベルテイは花序の直径が40センチもあるのを見かけます。私たちはひそかに(花火)と呼んでいます。線香花火を大きくしたものを連想させるからです。生のままでも、またドライや着色して使うと水なしで楽しめます。
人の手が加えられて曲がったアリウムの線は別として、ほとんどまっすぐな茎の上に小花がきれいにそろってボールのようなかたちになっているアリウムギガンジウム。茎と花の対比を見ていると、神様もなかなかのアーチストだと思えてきてしまうのです。(光加)