加賀の一盞(三月)梅貝

ご存じ加賀百万石は前田家、その家紋は梅鉢である。この梅鉢にちなんだ商品は多く、その代表が福梅。家紋そのままの形を最中にしたものでお正月にどの家庭でも食される。その他、梅の字をつけた食品は数多い。今回は冬から春に美味しい巻貝の一種、梅貝としたい。
主に能登半島以西の日本海側で漁れる貝類でバイ貝と称されるが、ご当地加賀ではもっぱら梅貝と表示される。ツブガイの一種で殻の色は黄土色、大きさは大きくて全長15センチくらい。身は乳白色をしていて、一番奥にはこげ茶色の肝がついている。ツブガイほどの硬さは無く、丁度良い歯応えだ。主に刺身や酢の物、おでんの具として一般的でどこの魚屋、スーパーでも売っている。
先ずはお刺身からご紹介しよう。スライスして盛り付けると白瑪瑙のような乳白色が反り返り、新鮮さが見た目でも解る。絵付けの皿との相性もぴったりだ。加賀の旨味醤油をつけて頂くと、絶妙な歯応えがたまらない。これぞ春の響きと感じる加賀人は私だけではない。もちろん加賀能登の地酒とマッチすることは言うまでもない。雪の空がようやく春の光を纏い始めるころ、欠かすことの出来ない感覚だ。
続いておでん、おでん屋の大鍋にはいろいろな具材と共に梅貝が殻ごと入っている。注文すると殻から身を出してお皿にごろりと盛り付けてくれる。最後の肝の部分も丁寧に出す。もちろん乳白色の身も美味だが、濃厚な味の肝がたまらない。おでんには欠かせない名残りの加賀源助大根に添えて頂くと梅貝の味が大根に染みわたり格別となる。おでんには燗酒と合わせるのが一番、ついつい進んでしまう。
この季節、金沢の和食屋で梅貝の置いてないところはない。また洋食屋でもカルパッチョやパスタの具材など広く使われている。金沢の早春の歯応えを是非ご体感ください。
梅貝の春の歯応へ能登の酒 淳
