a la carte_立葵(アオイ科)

何処までも真っ直ぐに伸びていきそうな茎に、下から次々に花を咲かせる立葵。短い毛におおわれた茎は、しばしば人の背の高さをこえてのびていきます。ピンクや白、薄黄色や赤や紫赤などの花は比較的大きく、一重から八重まであり、草の花でこんなに華やかに咲く花は、この季節、周りを見渡してもありません。
遠くからみて、目の高さの空間に何か自然な綺麗な色が漂っているーーと近寄って見るとこの花が咲いている場に出会うことがあるのです。
梅雨の頃に咲き始め、太陽の強くなる梅雨明けにはそろそろ姿を見かけなくなるので、つゆあおいとも呼ばれるそうですが、場所やその年の気候により、さらに長く咲いています。
同じ頃に咲くひまわりのダイナミックさとは正反対。やさしく、しかもはなやいだ雰囲気をあたりにただよわせ、かといって特別高貴な花というイメージでもありません。花はこちらにメッセージを発信しているかのように、茎に直角に近いかたちでついています。室町時代にはすでに渡来して、今では暑い国では野生化しているようです。どんなに華やかに咲いているのかみてみたいものです。
この立葵、日本では思いがけないところで見かける事が多いように思いますが、それは私が単に都会育ちだから、ということでしょうか。古い駐車場のアスファルトの割れたところから、また草の中から気がつけばいつの間にか高く立ち上がっているのを見かけます。皇居のお堀を見下ろす道端に花をたくさんつけて丈高い姿が、通る人々の目を引いていました。梅雨のころ、あるいは初夏に蕾をつけたのを見れば、草刈をしていても切る事が出来ないのでしょう。
夏のはじめ、旅をした先でのこと。青田の端にある一軒の民家を囲むように立葵が一列に植えられ,この家の人たちが楽しみに育て、周囲の家の人たちも開花を楽しみに待っていたのだろうなと思ったことがありました。
いけて楽しむためには、切ったあとすぐに切り口を焼いて深い水につけるといいといわれます。でも、花はすぐにしおれてしまいます。やはりこの花は 周りの自然の風景のなかで、のびのびと咲いているのがよくあっていると思うのです。いつの間にかどこかに消えてしまったかと思うと、花のあとに丸い実をつけているのを発見します。
毎年どうしても袖をとおす時期を逸してしまうクリーム色の立葵の絽のきものを、今年は着る機会に恵まれました。少し気遅れする場でも、背筋をピンと伸ばして前をみて歩く事が出来たのは、真っ直ぐに伸びていた白い花の立葵の模様のせいだったかもしれません。(光加)
