朝日カルチャーセンター「カフェきごさい」(12月)
新宿朝日カルチャーセンターの講座「季語を楽しむ俳句入門(カフェきごさい)」。12月の兼題は「カフェきごさい」の11月の季語【水鳥】、料理【林檎】、花(植物)【烏瓜】と「十二月一切」です。
【特選句】
子らの話代はる代はるに林檎むく 良子
林檎を剥きながら、子ども達の話に耳を傾けている冬の一コマ。くるくると剥いた林檎の皮も弾んでいるよう。林檎ならではの句。「代はる代はるに林檎むく」と読めるのが気になる。「子らは話」とするか、「林檎むく」を前へ持ってくるか。
ゆりかもめ一羽降りれば一羽舞ひ 良子
ゆりかもめは、近くで見るとけっこう大きくて存在感がある水鳥。その質感をよく捉えている句。
大銀杏ことごとく散つて立つ師走 直子
「ことごとく散つて立つ」に、極月の雰囲気がある。この作者の句には感じたことを体当たりで表現する力強さがある。「ことごとく散つて師走や大銀杏」などもある。
【入選句】
ふりしきる雪にこもりて豆を炊く 稲
「雪にこもりて」がいい。
烏瓜御伽峠は雲のなか 隆子
烏瓜と御伽峠の位置関係をもっと明確に描いたほうがよい。
小町より色よい返事か烏瓜 光加
烏瓜の別名「結び文」との関係を思うとかえってつまらない。秋の日に紅く耀く烏瓜は、秋の野山の女神からの恋文のよう。「小町より色よい返事烏瓜」。
林檎の香放ちて届くダンボール箱 澄江
開ける前から林檎のよい香りが。「タンボール」は無くてよいか。
ひんやりと信濃の風とりんご喰い 直子
「喰い」は「喰ひ」。「喰ふ」でも。
残菊に日ざしあかるき一日かな 稲
まだ夏の気配が残る重陽のころより、秋の深まったころの菊は色が冴えて美しい。そんな頃の秋晴れの一日。
烏瓜原つぱ今はビル建ちぬ 澄江
烏瓜は住宅街でもけっこう見かける。さすがにビルが建ってしまってはそうはいかないが。
十二月立ち飲みカフェの混み合へり 良子
師走の街の情景。
叔母よりの昆布〆またる年の暮 稲
心持ちがよい句。「またる」は「またるる」。
からすうり枯木も花の髪飾り 直子
からすうりが絡まっている様子。「枯木も花」などという言い古されたフレーズはつまらない。「枯木に紅き」などきちんと描くこと。なぜ「髪飾り」かも不明。
十二月レジ待つ列の最後尾 澄江
並びはじめは最後尾なのはあたりまえだが、気ぜわしい時はいつまでも最後尾にいるような気になる。
日だまりに寝息をたてて野良の猫 稲
季語はないが、「日向ぼこ」の句。具大的な描写が猫の心地さそうな姿を浮かび上がらせる。「野良の猫」は「野良猫」にする工夫を。
都鳥拾つた恋を捨てに来る 澄江
少々演歌調だが、「都鳥」の水鳥にしては人間臭いところがこのフレーズには合う。
境内の句碑にりんごの供へもの 稲
寒空に供えてある林檎。句碑の句の作者の人柄が偲ばれる。
カフェの客みな窓を向き冬木立 澄江
情景は言えているが、この句の形だと印象が薄い。「冬木立」を先頭に持ってくるなど、一句としてよりしっかりする工夫を。
「カフェきごさい」と連動した句会も、今年はこれで終了です。来年もますますのご健吟を。
釘抜きで開けてうれしき林檎かな 光枝