今月の花(1月)_千両(千蓼)
師走に入り、花市場で松の市が賑やかに開かれると、次は千両の市です。今年は14日ごろが多かったようです。
千両は葉や実のつき方、色、全体の長さなどにより等級に分けられ、値段も変わっていきます。花屋さんはこのときに買ってきて,千両の茎の元をたたいて砕き、水につけてあくを出してまた水を変え、紙に包んで保管しておきます。それを、クリスマスが終わると一せいに店頭に並べるのだと聞きました。
11月も終りのころ、横浜の公園で茂った葉にたくさんの実をつけている千両を見かけました。せんりょう科の千両は、ぎざぎざの入った光沢のある緑の葉と朱赤の実の色の対比が鮮やかで、正月花をいけるときにそえると、晴れ晴れとした気分にさせてくれます。黄色い実をつける(キミノセンリョウ)もあります。
千両は水が上がらないと実がしおれたり葉がぐったりとしてしまうので、必要のない葉や傷がついたり美しくない葉は切ったり、茎の元をもう一度たたいたりしますが、水が充分上がると今度はやがて実が熟して落ちるので気をつけます。
千両が葉のうえに実がつくのに対し、万両はすっと立ち上がった茎の葉の下に赤い実をつけます。実は黄色や白もあり万両はお金とすれば千両より重いから実が垂れるのだといいますが,あとから理由をつけたのでしょう。
万両、千両とくれば その下には百両にあたる、からたちばな(唐橘)があり、十両がやぶこうじで、この3つの万両、唐橘、やぶこうじ、は全部やぶこうじ科に属します。むろん一両にあたるものもあり、ありどおし(蟻通し)といわれるあかね科の植物。たくさんあるとげが特徴で(蟻しか通れない、または蟻までつきとおす)という意味だとか。
いずれもこの季節に、量や大きさのちがいこそあれ赤い実を結ぶ植物ですが、この蟻通しは関西の一部では他のものといっしょにいけ、お金が(一生有りどおし)になるように願うそうです。誰だか知りませんがここまで語呂合わせを徹底させてげんを担ぐか、といいたくなります。
生徒のひとりの庭に鳥が落としたのでしょうか、実生の千両が実をつけたそうです。こちらのほうが新しい年に何かいい事がありそうで、ありがたみが増すような気がします。
青々とした葉にたっぷり赤い実をつけた千両をいけることで、もう充分に結構だと思うのは、大金持ちにはもともと縁のない庶民だからということなのでしょうか。(光加)