ラナンキュラス
日に日に暖かさを感じる頃、それにタイミングをあわせるように春の光と空気を薄い花びらの間にためこみながら、ラナンキュラスはだんだんと大きくなっていきます。婚礼準備中のホテルの作業場で、大きな薔薇と見紛うような白いラナンキュラスが晴れの日のテーブルを飾るべくたっぷりといけられているのを見かけました。
コロンとしたこの花の小さな蕾だけをみていても、あとでかさかさと音がしそうな紙のような花びらが、種類によっては200枚以上もあるものに成長していくことは想像できないでしょう。
この花は一重の小さいものから開くと直径15センチくらいになるものまであり、色もピンク、白 黄色 赤、オレンジ、紫、また縁取りのあるもの、色の混じったものなど様々です。はっきりした明るい色が、(ラナンキュラス アシアテイクス)とよばれる種類から様々に改良されたこの品種の特徴です。形も八重はもちろん、半円球から円球に近づくのではと思える開き方をするもの、中には縁取りがあったり、くしゃくしゃとした花びらのものもありこの花に魅了された人たちによってあらゆる色と形が今でも作り出されています。
球根から発芽するラナンキュラスは、もともときんぽうげ科のきんぽうげ属です。そのきんぽうげ(金鳳華)の別名は(馬のあしがた)。きんぽうげ属のなかで他に日本の野原でみかけられるものといえば、(きつねのぼたん)という植物があります。
もともとラナンキュラスの名前の(ラナ)は(カエル〕それもラテン語で小さなカエルを意味するそうです。その名前は、この植物が水に近い場所を選ぶ性質から来ているらしいのです。また、葉の形がカエルの足に似ているからともいわれれば、水かきのようにも見える葉をながめているうち、カエルの化身かと思えてきます。いずれにしても動物の名に不思議と縁のある植物です。
改良種の中には丈の短かめのものもありますが、花の大きさにくらべて細く長い茎が気にかかります。こんな茎の繊細な線で、薄くはあるがたくさんつけている花びらを支えられるのかと思ってしまうのです。そんな心配をよそに、ラナンキュラスの花は、ニュウッと伸びた茎の頭にバレエの衣装のチュチュのような軽やかさと華やかさをもった花をかかげ、春の進み具合をきょろきょろと偵察しているようにもみえます。
そして自然界では動物たちの動きも一段と活発になっていくのです。(光加)
ヴィーナスの息ラナンキュラスをふくらませ 光加